東京都写真美術館「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23」
AIやCG、コマ撮りアニメーションなど、多様な技術や素材を用いて作品を制作する、いま注目の5名の作家の作品を紹介する展覧会。
公式サイト:https://topmuseum.jp/exhibition/5423/

東京都写真美術館では、写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘するとともに、新しい創造活動の展開の場として、2002年より継続的に「日本の新進作家」展を開催しています。
写真や映像は、物事を写し、残すメディアです。しかし、写し取られたイメージは、編集や置かれた文脈によって異なる意味を帯びることもあります。そのため、ときに存在しない/しなかった記憶や記録さえも想起させます。イメージのなかの見えるものと見えないもの、実存と虚構、存在と不在の境界線は、ますます曖昧になりつつあり、揺らぎを内包しています。
第23回目となる本展では、作家たちが実際に存在した記憶や素材、技術、それぞれが持つコンテクストを汲み取り、新たなイメージへと組み立てていくプロセスに着目します。真偽に惑わされることの多い日常において、私たちは情報とどのように向き合い、何を信じ、どのように世界を捉えているのか。本展では、その問いを改めて考える契機となる作品を紹介します。
本展のみどころ
多彩な技術が生み出す新たな表現
AIやCG、コマ撮りアニメーション、独自の撮影・編集手法など、本展に参加する5名の各作家は、多様な技術や素材を用いて作品を制作しています。こうした技術は、写真や映像を記録や再現としてだけではなく、それぞれの経験や思考を通して組み立て直し、新たなイメージとして豊かに立ち上げ提示するための表現手段として用いています。異なるアプローチから生まれた作品を見比べることで、現代における写真・映像表現の広がりを感じることができるはずです。
いま注目の5名の作家、新たなイメージの可能性を探る
自身の記憶や経験、時間をテーマに彫刻的なオブジェクトを制作する市田小百合(いちださゆり)、生成AIの手法を巧みに取り入れ人間の知覚とイメージを視覚化する苅部太郎(かりべたろう)、写真や彫刻、機械装置など多様なメディアを用いて制作を行う野村在(のむらざい)、自身の装置や道具を用いたコマ撮りアニメーションによる視覚表現を探求する橋本麦(はしもとばく)、実写映像や3DCG、AIなどを用いて架空の都市を映像化する藤倉麻子(ふじくらあさこ)。いま注目の5名の作家の作品が集結。記録されたもの、想像されたもの、その境界で生まれる新たなイメージの可能性を探ります。
空間全体で体験するインスタレーション
本展では、写真作品に加え、映像や立体を組み合わせたインスタレーション作品を多数紹介します。作品の前に立つだけでなく、空間を歩きながら鑑賞することで、イメージや記憶、時間との関係性を身体的に体験できることも本展の大きな魅力です。それぞれの作品世界に身を置くことで、写真や映像の新たな鑑賞体験を楽しむことができます。また、橋本麦は会期中にコマ撮りアニメーションの公開制作を実施します。完成作品だけでは見ることのできない制作のプロセスを展示の一部として公開し、作品が制作される時間そのものを体験できる貴重な機会となります。
出品作家と主な出品作品
市田 小百合 (いちだ さゆり)
1985年生まれ。2006年東京ビジュアルアーツ写真学科卒業後、イイノ・メディアプロにてスタジオマンとして勤務したのち渡英。2022年 University of Westminster にて Photography Artsを専攻し、修士号を取得。自身の記憶や経験を起点に、複雑で多層的な感情のあり方を、身体や彫刻的なオブジェクトを通して探求している。主な展覧会・受賞歴として、「Jerwood/Photoworks Awards 5」受賞(イギリス、2024年)、「Absentee」ライカギャラリー(イギリス、2026年)、「Playing the Piano Upstairs」The Photographers’ Gallery Print Sales(イギリス、2026年)、「transiənt」大和日英基金ジャパンハウスギャラリー(イギリス、2025年)など。
本展では、学校という場所に積み重ねられた時間をテーマに、黒板を支持体として校舎の断片を再構成し、シルクスクリーンでプリントしたインスタレーション作品を日本初展示する。

苅部 太郎(かりべ たろう)
1988年生まれ。心理学、公衆衛生、金融、ITの領域を横断したのち、報道写真家として活動を開始。画像生成AIを「形而上のカメラ」と見立てて意図的に誤用しながら、「見る」ことや「信じる」ことを支配する不可視のシステムを問い直す。光学技術、アルゴリズム、人の認知、社会制度といったブラックボックスが相互に絡み合う循環を、写真というメディウムの内側から捉え直す。主な展示に「Anatomy of Caves」HECTARE(東京、2024年)、「Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」MYNAVI ART SQUARE(東京、2024年)など。
本展では、テレビの受信部を接触不良にし、グリッチノイズを発生させてできたイメージを撮影・加工し、生成AIの風景認識システムに読み込ませた作品シリーズを紹介する。認識システムを撹乱することで、人間とAIに共通する「見立て」の働きを引き出し、意味を見いだそうとする認識の過程や、誤認から新たなイメージが生成される可能性を探る。



野村 在(のむら ざい)
1979 年生まれ。2009 年ロンドン大学ゴールドスミス校・MFA 修了、2013 年に武蔵野美術大学博士課程を修了。「存在」と「記憶」の関係を主題に、写真や彫刻、機械装置など多様なメディアを用いて制作を行う。物質の消失や変容、時間の経過によって揺らぐ記憶のあり方に着目し、日常の中に残された痕跡や見過ごされがちな現象を可視化することを試みる。主な展示に、「第13回ソウル・メディアシティ・ビエンナーレ」ソウル市立美術館(ソウル、2025年)、「第17 回shiseido art egg 野村在展」資生堂ギャラリー(東京、2024年)、「OPEN SITE 8」TOKAS本郷(東京、2024年)、「あいちトリエンナーレ」(愛知、2016年)など。
本展では、作家が収集した、ポートレイト写真を燃焼させ、その炎の光を長時間露光で記録することで、写真というメディアの物質性に着目し、イメージが新たなかたちへと再構成される過程を探る。



橋本 麦(はしもと ばく)
映像作家。モーショングラフィックスやハッカー文化、実験映像の影響を背景に、3DCGやコマ撮りアニメーション、ミュージック・ビデオ、インタラクティブ作品など多岐に渡り個人で制作を行う。作品ごとにワークフローやツールの設計から取り組み、技術的な試行やエラーをも含めたプロセスから独自の視覚表現を探求している。主な仕事にgroup_inou、MONO NO AWAREなどのミュージック・ビデオ、アニメ『すべてがFになる』ED映像など。近年はヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)分野の研究にも取り組み、ACM UISTでの論文採択などの実績を持つ。東京TDC賞グランプリ(2025年)、新千歳空港国際アニメーション映画祭観客賞(2018年)、第19回文化庁メディア芸術祭新人賞(2015年)受賞。
本展では、自作の装置や道具を用いたコマ撮りアニメーションにより、イメージが立ち上がる過程を探る新作インスタレーション作品を展示する。本会期中には公開制作も実施し、完成した映像だけでなく、作品が生まれるプロセスもあわせて紹介していく。



藤倉 麻子(ふじくら あさこ)
1992年埼玉県生まれ。東京都在住。都市・郊外を横断的に整備するインフラストラクチャーや、それらに付属する風景の奥行きに注目し、主に3DCGアニメーションの手法を用いた作品を制作している。近年では、埋立地で日々繰り広げられている物流のダイナミズムと都市における庭の出現に注目した空間表現を展開している。近年の参加展覧会に、「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」森美術館(東京、2025年)、第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館「中立点—生成AIとの未来」(イタリア、2025年)などがある。
本展では、実写映像やCG、AIなどを用いて架空の都市とそこにある社会を構築するインスタレーション作品を展示する。



関連事業
出品作家とゲストによるトークイベント
10月4日(日) 14:00–15:30 市田小百合(出品作家)×本橋仁(金沢21世紀美術館 キュレーター)
10月18日(日)14:00–15:30 野村在(出品作家)×岡部あおみ(美術評論家、インディペンデント・キュレーター)
11月1日(日) 14:00–15:30 苅部太郎(出品作家)×下西風澄(哲学者)
12月13日(日)14:00–15:30 橋本麦(出品作家)×辻川幸一郎(映像作家)
1月10日(日)14:00–15:30 藤倉麻子(出品作家)×南後由和(社会学者、法政大学教授)
会場:東京都写真美術館1階ホール
定員:190名 入場無料・要入場整理券
※当日10:00より1階総合受付にて整理券を配布します。※手話通訳・文字表示支援付き。
担当学芸員によるギャラリートーク
10月9日(金)14:00– 文字表示支援付き
11月13日(金)14:00– 手話通訳付き
12月11日(金)14:00– 手話通訳付き
※当日有効の本展チケット、展覧会無料対象者の方は各種証明書等をお持ちのうえ3階展示室入口にお集まりください。
展覧会図録
『ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23』
サイズ:B5判変形 発行日:2026年9月30日 価格:未定 発行:東京都写真美術館
山﨑香穂(東京都写真美術館 学芸員)による論考、出品作家5名によるステートメント等を収録
開催概要
展覧会名|[日]ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23
[英] Assembling Anew: Memories, Materials, Context, Technology
Contemporary Japanese Photography vol. 23
会 期|2026年9月30日(水)~2027年1月17日(日)
主 催|公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館、東京新聞
協 賛|東京都写真美術館支援会員
会 場|東京都写真美術館 3階展示室
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL 03-3280-0099 WEB www.topmuseum.jp
開館時間|10:00-18:00(木・金曜日は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
休館日|毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館、翌平日は休館)、年末年始(12/28-1/1)
観覧料|一般700円(560円)、学生560円(440円)、高校生・65歳以上350円(280円)
※( )は有料入場者20名以上の団体料金。
※中学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)無料。第3水曜日は65歳以上無料。1/2・3は無料。
※11/5-27の木・金曜日17:00-20:00は夜間特別開館による割引料金。(学生・高校生は無料、一般・65歳以上は団体料金。学生証・年齢が確認できるものをご提示ください。)
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