ショウジョウバエの異種混在集団における「インフルエンサー」― 種を超えた行動の同調が、集団全体の特性を決定づける ―
千葉大学大学院融合理工学府博士後期課程の浜道凱也氏(研究当時)と同大大学院理学研究院の高橋佑磨教授は、性質の異なる複数のショウジョウバエが混ざり合う集団において、種を超えて行動を似せる「異種間同調(注1)」が起こることを明らかにしました。とくに、特定の種(タカハシショウジョウバエ)は他種の影響をほとんど受けない一方で、周囲の種の活動レベルを劇的に引き上げる「インフルエンサー」の役割を果たしていることが判明しました。本研究は、これまで種ごとに語られてきた生物の行動が、実は「どのような隣人と過ごすか」というコミュニティの構成によって柔軟に作り変えられていることを示唆しています。
本研究成果は、2026年3月17日、国際科学誌 Ecology and Evolution に掲載されました。
(論文はこちら:10.1002/ece3.73149)

■研究の背景
自然界では、異なる種が同じ場所に集まり、緩やかな「混群」を形成することがあります。こうした集団では、個体同士の相互作用によって行動が揃う「同調行動」が起こり、情報共有や捕食回避といった生態的に重要な役割を担うと考えられています。しかし、これまでの研究は、単一種の群れにばかり焦点が当てられてきました。そのため、餌場に集まる昆虫のような“寄せ集め”の集団において、異なる種同士がお互いの行動に影響を与え合うのか、また集団全体の振る舞いがどのように形成されるのかはほとんどわかっていませんでした。
■研究成果のポイント
1)一時的な集団における「異種間同調」の初確認:鳥の群れなどの集団とは異なり、エサとなる資源に偶然集まるような「一時的な集団」においても、種を超えた行動の同調が起こり、集団としての特性が形成されることを初めて証明しました。
2)非対称な行動の収束:混群における行動の似通い(収束)は、互いに歩み寄ることで生じるのではなく、特定の「影響力の強い種」によって一方的に引き起こされるという非対称なメカニズムを特定しました。
3)「インフルエンサー」の特定:今回対象とした種の中で、タカハシショウジョウバエは自身の活動レベルをほぼ変えませんが、他種(キハダショウジョウバエなど)に対しては、その活動性を大幅に引き上げる強力な社会的影響力をもつことが示されました。
■今後の展望(研究者コメント)
本研究は、ある地域の生物の行動特性が、遺伝的要因や物理的環境だけでなく、「そこにどの種が共存しているか」という社会的な要因によって決定されることを示しています。これは、外来種の侵入や特定の種の絶滅が、残された他種の行動や生態系機能に予想以上の連鎖的影響(インフルエンサーの喪失など)を及ぼす可能性を警鐘するものです。さらに、種間の相互作用を「食う・食われる」や「競争」だけでなく、「行動の同調」という視点で捉え直すことで、野生動物の採餌効率や生存戦略の理解を深めると期待されます。
■用語解説
(注1)異種間同調:異なる種の間で、周囲の個体の行動に自身の行動(活動レベルなど)を合わせる現象。
■論文情報
タイトル:Interspecific conformity and asymmetric behavioral convergence in Drosophila
著者:Kaiya Hamamichi and Yuma Takahashi
雑誌名:Ecology and Evolution
DOI:10.1002/ece3.73149
■研究プロジェクトについて
本研究は、千葉大学令和7年度「全方位・挑戦的融合イノベーター博士人材養成プロジェクト」、ならびにと科研費(22H05646、23H03840;高橋)、2023年度笹川研究助成金(課題番号:2023-5051)の助成を受けて実施されました。千葉大学と日本学術振興会、および公益財団法人日本科学協会に感謝申し上げます。
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