アフガニスタン:子どもの半数、370万人学校に通えず【プレスリリース】

女子の割合60%、一部地域で85%

「学校に通えない子どもたちに関する世界イニシアティブ:アフガニスタン国調査(原題:Global Initiative on Out-of-School Children Afghanistan Country Study)」「学校に通えない子どもたちに関する世界イニシアティブ:アフガニスタン国調査(原題:Global Initiative on Out-of-School Children Afghanistan Country Study)」

【2018年6月3日 カブール(アフガニスタン)発】

 ユニセフ(国連児童基金)が本日発表した報告書「学校に通えない子どもたちに関する世界イニシアティブ:アフガニスタン国調査(原題:Global Initiative on Out-of-School Children: Afghanistan Country Study)」によると、アフガニスタンの7歳から17歳の子どもの約半数にあたる370万人が学校に通っていません。

 アフガニスタンでは、継続する紛争と国内全土の治安状況の悪化に加え、根深い貧困問題と女の子に対する差別により、学校に通っていない子どもの数は、2002年以来初めて増加しました。

 学校に通っていない子どもの60%を占めるのは女の子で、彼女たちは不利な立場に置かれるだけでなくジェンダーによる差別も受けています。最も影響を受けている県Kandahar、Helmand、Wardak、Paktika、Zabul および Uruzganの中には、学校に通っていない女の子の割合が85%にのぼる県もあります。

 報告書は、避難生活や児童婚もまた、子どもが学校に通う機会に著しく影響を与える要因だと述べるとともに、また女性教員の不足、不十分な学校設備、そして紛争の影響を受ける地域では治安上の問題も、教育の提供に影響を及ぼし、子どもたち、特に女子を教室から遠ざける要因になっていると指摘します。

 「すべての子どもたちの教育を受ける権利を実現するため、アフガニスタンには、今までと同じことをし続けるという選択肢はありません」とユニセフ・アフガニスタン事務所代表アデル・ホドルは述べました。「学校に通っていない子どもたちは、虐待、搾取、徴兵や徴用といったさらなる危険に晒されるのです」
 

学習センターで一緒にノートを見る女の子たち。(2018年5月10日撮影) © UNICEF_UN0211158_Rezayee学習センターで一緒にノートを見る女の子たち。(2018年5月10日撮影) © UNICEF_UN0211158_Rezayee

 数字は憂慮すべきものですが、一方で前進と希望もあります。報告書によれば、中途退学率は低く、初等教育課程を開始した子どもたちの85%は最終学年まで修了し、中等教育前期課程を開始した男の子の94%が、女の子の90%が最終学年まで修了します。課題は、子どもたちをまず学校に行かせることなのです。

 「私たちはアフガニスタン政府に対して、2018年を教育の年として宣言し、教育を優先させることを提案します」とホドルは言います。「子どもたちがより良い人生を送るために、そして社会で積極的な役割を果たせるようになるために、必要とされる適切な学習機会を提供するための新たな決意が、今こそ求められています」とホドルは付け加えました。

 この課題を解決するためには、早期学習機会の提供とともに、学習プログラム促進や家族の教育への関与を強めること、コミュニティの共有する建物や自宅での授業など、コミュニティを基盤とした教育の提供が求められています。こうすることで通学途中にハラスメントを受けたり、紛争に関連した事故に遭うといった安全面の問題を軽減できることは、特に女の子にとって重要です。

 今年5月に政府が発表した調査報告「アフガニスタン生活実態調査2016-2017年(Afghanistan Living Conditions Survey, 2016-17)」は、過去20年間における、おとなと若者の識字率の著しい向上を強調しています。15歳から24歳の若者の識字率は、2005年の31%から2017年の54%に上昇しました。

 「子どもたちにとって学校に通うということは、ただ教室に座っているだけでなく、それ以上のことを意味します」とホドルは言います。「それは日々の生活に、日課や日常、安定を与えるもので、国内全土が情勢不安である状態において賢明な投資と言えるのです」
 

仮設テントの学校で勉強する女子生徒たち。(2018年5月1日撮影) © UNICEF_UN0211461_Fricker仮設テントの学校で勉強する女子生徒たち。(2018年5月1日撮影) © UNICEF_UN0211461_Fricker

 報告書は、国家データ機関の強化と能力開発には時間と投資が必要ということを認めた上で、政府と市民社会に対して学校に通っていない子どもたち、特に女の子の問題に取り組むための決意と行動を、引き続き要求しています。通学途中の子どもたちを危害から守るということに加え、報告書は下記の4点を重要な行動として示しています。
  • 学校に通っていない女の子の割合が比較的高い県を対象に、宗教的指導者や他のグループとの協力のもと、子どもたち、特に女子教育の普及を啓蒙すること
  • 女の子が学ぶ施設に、トイレや手洗い場、安全な飲料水など、基本的な安全と保健基準を満たす施設の設置を徹底すること
  • 女性の教員を採用し、能力の向上を図ること
  • 児童婚の問題に取り組むこと

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■データに関して
 「学校に通えない子どもへのグローバル・イニシアティブ:アフガニスタン国調査(原題:Global Initiative on Out-of-School Children: Afghanistan Country Study)」で使用したデータの主な出典:  National Risk and Vulnerability Assessment (2007-2008, 2011-2012) and Afghanistan Living Conditions Survey (2013-2014); Demographic and Health Survey (2010, 2015); and Afghanistan Multiple Indicator Cluster Survey (2011-2012).   

 「アフガニスタン生活実態調査2016-2017年(Afghanistan Living Conditions Survey, 2016-17)」は本報告書が校了した後の2018年5月に発表されました。

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■ユニセフについて
 ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■日本ユニセフ協会について
 公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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