進行肝細胞がんに対する重粒子線と免疫療法の併用を医師主導治験で評価-安全性と有効性の兆候を世界で初めて確認-
千葉大学医学部附属病院(病院長 大鳥精司) 、量子科学技術研究開発機構(理事長 小安重夫)QST病院は、脈管浸潤(血管にがんが入り込む)を伴う進行肝細胞がんを対象とした共同研究で、重粒子線治療*1と免疫療法の併用治療について、世界で初めて第Ⅰb相臨床試験*2(医師主導治験)を行い、安全性、有効性を評価したことをご報告いたします。本試験は千葉大学病院臨床試験部(Academic research organization: ARO)の支援下で実施されました。本研究成果は、肝臓病学分野の国際学術誌『JHEP Reports』に、2026年3月28日に掲載されました。

■ 研究の背景
脈管浸潤を伴う進行肝細胞がんは、極めて予後が悪く、既存の薬物療法だけでは十分な延命効果が得られにくい難治性の病態です。この予後を改善するためには、肝機能を温存しつつ、脈管浸潤を呈している腫瘍と転移巣の両方を治療する方法の開発が必要です。そこで、肝機能悪化のリスクを低減しつつ原発巣を治療できる重粒子線治療と、これまでの抗がん剤に比べて予後改善が期待できる免疫チェックポイント阻害薬*2を用いた免疫療法を併用し、安全性を評価する医師主導治験を実施しました。
■ 研究成果のポイント
・世界初の臨床試験:進行肝細胞がんに対し、重粒子線治療と免疫チェックポイント阻害薬を用いた免疫療法を併用した際の、安全性を評価する第Ⅰb相臨床試験(医師主導治験)を実施しました。
・ 安全性の確認:被験者15名に免疫チェックポイント阻害薬を投与後、7日目以降に重粒子線治療を行い、その後定期的に免疫チェックポイント阻害薬を投与するスケジュールでの治療を行った結果、安全に実施可能であることが確認されました。
・新たな治療法開発へ:これまで安全性の懸念から慎重であった「重粒子線治療と強力な免疫療法の併用」が安全に行えることが示され、進行肝細胞がんに対する新たな治療法開発につながることが期待されます。
■ 今後の展望
本研究は、この新しい併用治療が、進行肝細胞がんに対する有望な治療選択肢となりうることを示唆しています。現在、両病院では本結果を踏まえ、大型肝細胞がんの患者さんを対象とした臨床試験(医師主導治験)を行っています。本治療法が確立されれば、根治が難しく、再発しやすい病気である肝細胞がんの予後を改善する可能性があります。
■ 論文情報
〈タイトル〉
MVI-targeted Carbon-ion Radiotherapy Combined with Immunotherapy for Advanced Hepatocellular Carcinoma: Phase Ib DEPARTURE Trial
〈著者〉
Sadahisa Ogasawara※, Keisuke Koroki※, Hirokazu Makishima※, Masaru Wakatsuki※, Asahi Takahashi, Makoto Fujiya, Sae Yumita, Miyuki Nakagawa, Hiroaki Kanzaki, Kazufumi Kobayashi, Masanori Inoue, Masato Nakamura, Naoya Kanogawa, Takayuki Kondo, Shingo Nakamoto, Tomoya Kurokawa, Yoshihito Ozawa, Yosuke Inaba, Soumith Paritala, Jingxuan Chen, Jeon Lee, Yujin Hoshida, Hideki Hanaoka, Shigeru Yamada, Hitoshi Ishikawa
※ 共同第一著者
〈掲載紙〉 JHEP Reports
〈DOI〉 https://doi.org/10.1016/j.jhepr.2026.101765
■ 用語解説
*1 重粒子線治療
炭素イオンを光の速さの約70%まで加速してがんに照射する放射線治療の一種です。一般的なX線治療に比べ、がん病巣への集中性が高く、正常組織へのダメージを抑えながら強力な殺細胞効果を持つことが特徴です。
*2 第Ⅰb相臨床試験
新しい薬や治療法を、すでに使われている治療と一緒に使ったときに安全かどうか、またどのくらいの量や組み合わせが適切かを確かめる。特に副作用が強く出ないか、一緒に使うことで予想外の問題が起きないかを慎重に調べます。
*3 免疫チェックポイント阻害薬
がん細胞が免疫細胞にかけているブレーキを解除し、免疫細胞が再びがん細胞を攻撃できるようにする薬です。
■ 主な研究資金源
AstraZeneca K.K.、日本学術振興会 科学研究費助成事業、
日本対がん協会 リレー・フォー・ライフ・ジャパン「プロジェクト未来」研究助成
■ 臨床研究データベース(jRCT)研究番号: jRCT2031210046
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