離乳食前の乳児が寝ている場所のアレルゲン調査 ― 寝具にはダニだけでなく、ナッツ・卵・牛乳・小麦などのアレルゲンが存在 ―

国立大学法人千葉大学

 千葉大学予防医学センターの鈴木規道 准教授、嶋谷圭一 特任講師らの研究グループは、離乳食開始前(生後3〜4か月)の乳児が生活する家庭環境に、どの程度の食物やダニアレルゲンが存在しているかを調べました。特に乳児が長時間触れる寝具に着目し、アレルゲンの存在と濃度について調査しました。その結果、離乳食開始前の乳児でも、すでに寝具を通じて複数のアレルゲンに触れている可能性があることが分かりました。
 本研究結果は2026年3月19日に、学術誌Scientific Reportsにオンライン公開されました。

(論文はこちら:10.1038/s41598-026-45145-5

図1. 本研究の調査概要

■研究の背景 

 小児の食物アレルギーは健康上の大きな問題となっています。近年は「二重抗原曝露理論(注1)」と呼ばれる考え方が注目されています。これは食物を口から摂取すると免疫が慣れる一方、皮膚を通じた接触はアレルギーを引き起こしやすくするという考えです。実際、鶏卵を早い時期から少量ずつ食べることで、アレルギーの発症リスクが下がるという報告もあります(参考文献1)。しかし離乳食が始まる前の乳児が、家庭内でどの程度のアレルゲンに触れているかについては調査されていませんでした。自分で移動する事の出来ない生後3〜4か月の乳児にとって寝具や床は、長時間、肌で触れる場所であり、アレルギー感作のきっかけになりやすい環境と考えられます。また、先行して行われたJECSパイロット研究において3歳児の寝具からダニよりも高い濃度の卵抗原が検出されたため(参考文献2)、本研究では、2ndC-MACH出生コホート研究(参考文献3)に参加している26世帯を対象として、生後3〜4か月の乳児の寝具に含まれるダニのアレルゲン(Derf1/Derp1(注2))・鶏卵・牛乳・小麦・ピーナッツ・クルミ濃度をELISA法(注3)で測定しました。

■研究の成果

 調査の結果、鶏卵・牛乳・小麦・ダニ(Der f1)は全ての家庭で検出されました。ピーナッツは88%、ダニDer p1は81%、クルミは35%の家庭で検出されました。さらに一部の食物アレルゲン濃度はダニアレルゲンよりも明らかに高く、特に牛乳の中央値は330 μg/g dustと最も高い値を示しました。鶏卵は73 μg/g dust、小麦は110 μg/g dustであったのに対し、ダニはDer f1が3.5 μg/g dust、Der p1は0.62 μg/g dustと低い値でした(図2)。これらの結果は、乳児は食物を口にする前から、家庭内の環境を通じて食物アレルゲンに触れている可能性を示しています。

図2. ELISA法による測定の結果

■今後の展望

 本研究は、離乳食開始前の乳児がすでに家庭環境中の食物アレルゲンにさらされていることを定量的に示しています。初期的な研究ではありますが、乳児は食べる前から皮膚を通じてアレルゲンに接触している可能性があります。今後は、乳児湿疹の有無や環境中のアレルゲン接触量とアレルギーの成立(IgE感作)(注4)や発症との因果関係を明らかにするため、長期にわたる追跡研究が求められます。

■用語解説

注1)二重抗原曝露理論:食物アレルギーが「皮膚からの感作(アレルギー獲得)」と「口からの免疫寛容(アレルギー抑制)」の2つの経路で起きるという仮説。仮説上では、乳児湿疹やアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が落ちた状態での侵入はアレルギーを誘発し、早期のアレルゲンの経口摂取は耐性を導くとされている。

注2)Der f1/Der p1:いずれもダニ由来の主要アレルゲンの一種。Der f 1はコナヒョウヒダニ、Der p1はヤケヒョウヒダニが産生するタンパク質。アレルギー疾患において重要な要因物質の一つとされる。

注3)ELISA法:抗原と抗体の特異的な反応を利用して、目的物質(アレルゲン)の量を色の変化として測定する方法。目的物質が少量であったとしても、高い精度で数値として測定できる。

注4)IgE感作:特定のアレルゲンに対するIgE抗体が作られ、それが肥満細胞や好塩基球に結合した状態のこと。同一アレルゲンに再暴露した際に、アレルギー反応が引き起こされる可能性がある。


■参考文献1

タイトル:Two-step Egg Introduction for preventing egg allergy in High-risk Infants with eczema (PETIT study): a double-blind, placebo-controlled, parallel-group randomised clinical trial.

雑誌名:The Lancet

DOI:10.1016/S0140-6736(16)31418-0


■参考文献2

タイトル:Egg antigen was more abundant than mite antigen in children’s bedding: Findings of the pilot study of the Japan Environment and Children’s Study (JECS)

雑誌名:Allergology International

DOI:10.1016/j.alit.2019.02.005


■参考文献3

タイトル:Cohort Profile: Sub-cohort Study on the Second Phase of Chiba Study of Mother and Child Health (C-MACH), Japan

雑誌名:BMJ Open

DOI:10.1136/bmjopen-2025-110424


■論文情報

タイトル:Environmental food allergen levels in the homes of 3–4-month-old infants: findings from the second phase Chiba study of mother and child health (2nd C-MACH).

著者:Norimichi Suzuki, Keiichi Shimatani, Kohki Takaguchi, Kayo Yoda-Tsumura, Yoshitake Nakayama, Akifumi Eguchi, Fumitoshi Ogino, Masayuki Mikuriya & Hiroko Nakaoka.

雑誌名:Scientific Reports

DOI:10.1038/s41598-026-45145-5


■研究プロジェクトについて

 本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(B)(助成金番号 21H01487、25K01386)およびJST OPERA(JPMJOP1831)のサポートを受けています。また、株式会社ダスキンからの一部支援を受けていますが、データの解釈に関して資金提供者の関与はありません。

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ビジネスカテゴリ
学校・大学医療・病院
ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

国立大学法人千葉大学

79フォロワー

RSS
URL
https://www.chiba-u.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33  
電話番号
043-251-1111
代表者名
横手 幸太郎
上場
未上場
資本金
-
設立
2004年04月