凸版印刷、水素エネルギー市場へ電極部材の生産で参入
世界初、独自の製造方式による生産設備を高知工場に導入高性能・高品質な電極部材(CCM/MEA)を8月より販売開始
CCM/MEAとは、水素を製造する水電解装置、水素の貯蔵や運搬に関わる電解槽、そして水素を利用する燃料電池において、中核となる重要な部材であり、来たる水素社会の実現には不可欠なエネルギー変換デバイスです。
本設備は、凸版印刷がこれまで大型カラーフィルタの製造で培ってきた大サイズ均一塗工技術や、枚葉基板搬送技術などの製造技術を活用し、CCM/MEAを枚葉式で量産することができます。
凸版印刷は今後、水素を「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」の全領域にCCM/MEAを展開することで水素社会を実現し、カーボンニュートラルへ貢献します。
■開発の背景
2050年のカーボンニュートラル達成に向け、世界の国と地域では数値目標を掲げて政策を推進しています。日本においても、再生可能エネルギーの活用、水素社会実現に向けた取り組み、カーボンリサイクル技術の開発など、各種施策を進めています。特に水素は、地球上に豊富に存在する「水」から生成可能で、CO2を排出しないエネルギー源であり、その活用への期待が高まっています。
水素の社会実装において、CCM/MEAは重要な部材であり、高いエネルギー変換効率と耐久性、市場への安定供給が求められています。
このような課題を解決するため、凸版印刷は2004年からCCM/MEAの研究開発に取り組んでいます。今般、大型カラーフィルタの製造で培った塗工技術や搬送技術などの活用により、高性能・高品質なCCM/MEAを枚葉式で量産する体制を構築し、8月より販売を開始します。
■本設備および、本設備で製造したCCM/MEA の特長
・世界初、独自の製造方式により、高出力CCM/MEA の量産が可能
本設備には、世界で初めてとなる製造方式として、枚葉式両面ダイレクトコーティングを採用しました。電解質膜の両面に触媒インクを直接塗工し、CCM/MEAを枚葉式で形成することにより量産が可能です。枚葉サイズは600mm×800mmで、最大6万枚/年を製造することができます。これは車やドローンなどの移動体用燃料電池向けCCM/MEAに換算すると約60万枚/年に相当します。また、枚葉のCCM/MEAを繋げることで、ロール形態での提供も可能です。
・ダイレクトコーティングで作製したCCM/MEAはエネルギー変換効率を向上させることが可能
ダイレクトコーティングで作製したCCM/MEAは、電解質膜と触媒層間の密着性が高いため、水素を「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」の反応時の電気抵抗が低減し、エネルギー変換効率を向上させることができます。
・独自の添加材により、CCM/MEAの耐久性を向上
独自の添加材を加えることで触媒層の空隙率を制御し、水素を「つかう」際に生成される水の排出性を調整します。水の滞留は触媒層中のカーボンや触媒金属の劣化要因であり、排出を促進することでCCM/MEAの耐久性が向上します。燃料電池自動車の場合、走行によって生じる電極劣化を抑制し、総走行距離が延長します。
・CCM/MEAのカスタマイズが可能
独自の添加材をはじめ、触媒層の材料設計を最適化することで、各ユーザーにカスタマイズしたCCM/MEAを提供することができます。燃料電池用の基本ラインナップとして、4種類のCCM/MEAを設定しており、さらにユーザー毎の要求に応じたカスタマイズが可能です。
・独自のトレーサビリティシステムにより、高品質CCM/MEAの量産が可能
カラーフィルタ事業などで培ってきた精密電子部品の製造・品質管理に関わる知見・ノウハウを活用し、品質管理システムを構築しました。CCM/MEA製造に関する、すべての材料情報や製造履歴、検査結果などのデータを保存、個別に追跡し、厳密に品質を管理することが可能です。また、これらの集積データの解析、および解析結果に基づくプロセス改善(フィードフォワード)の「完全自動化」に向けた開発も進めています。
なお、本設備を導入した高知工場では、自動車向けTFT液晶ディスプレイにてIATF16949(※1)認証を取得しており、製造工程の品質管理を徹底しています。
■ 今後の目標
凸版印刷は今後、事業成長とともに設備のサイズアップと増強を図り、水素を「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」の全領域にCCM/MEAを展開します。市場へCCM/MEAを安定供給する役割を担い、水素社会の実現に貢献するとともに、事業の拡大を図り2028年に100億円の売り上げを目指します。
※1 IATF 16949
IATF 16949は自動車産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格。
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以 上
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