2025年11月の国内景気、6カ月連続で改善 観光産業や半導体需要がけん引、今後は日中関係の動向に注目

TDB景気動向調査(全国)― 2025年11月調査 ―

株式会社帝国データバンク

株式会社帝国データバンクは、2万4,531社(有効回答企業1万207社、回答率41.6%)を対象とした2025年11月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表いたしました。

■調査結果のポイント

  1. 2025年11月の景気DIは前月比0.2ポイント増の44.1となり、2020年11月以来5年ぶりに6カ月連続で改善した。国内景気は、仕入単価の上昇が重しとなったものの、観光産業や半導体需要が好調で、改善傾向が続いた。今後の国内景気は、小幅な変動をともないながら、緩やかな改善基調が続く見通しである。

  2. 『運輸・倉庫』『卸売』など4業界で改善、特に『農・林・水産』は2カ月連続で過去最高を更新した。他方、5業界が悪化し、横ばいは1業界だった。規模別では、「大企業」「中小企業」が改善したものの、「小規模企業」は悪化した。地域別では、5地域が改善、5地域が悪化した。建設やイベント関連需要などが地域経済の明暗を分けた。

  3.  [今月のトピックス] 企業からは、就任2カ月目の高市政権の政策に対して期待する声が幅広く寄せられ、ポジティブな意見が5割を超えた。

次回発表日は2026年1月8日(木)13時30分を予定しております。

< 2025年11月の動向 : 改善傾向 >

2025年11月の景気DIは44.1となり、前月比で0.2ポイント増加した。2020年11月以来5年ぶりに6カ月連続で改善。国内景気は、仕入単価の上昇が重しとなったものの、観光産業や半導体需要が好調で、改善傾向が続いた。

11月は、秋の旅行シーズンを迎え、観光産業が堅調に上向いた。さらに、『農・林・水産』の景況感は2カ月連続で過去最高を更新。AI需要の拡大を背景に、半導体や電気機械関連の生産も好調だった。設備稼働率は改善傾向にあり、サービス業を中心に労働者の時間外労働が増加している。ただし、原材料など仕入単価の上昇や、熊の出没による外出控えはマイナス要因となった。

< 今後の見通し : 緩やかに持ち直し >

今後は、日中・米中関係の動向が注目される。賃上げや冬季賞与、物価高対策を含む総合経済対策の実施による家計の実質購買力の回復がカギとなろう。底堅い旅行需要や、半導体などAI関連の設備投資は景気を下支えする要因である。一方で、財政拡大にともなう長期金利の上昇や日銀の政策金利引き上げ、為替レートの変動、日中関係の不安定化、人手不足は懸念材料となる。

今後の景気は、小幅な変動をともないながら、緩やかな持ち直しが続くと見込まれる。

業界別:10業界中4業界で改善、観光関連など一部業種で底堅さを維持

『運輸・倉庫』『卸売』など4業界で改善、特に『農・林・水産』は2カ月連続で過去最高を更新した。他方、5業界が悪化し、横ばいは1業界だった。秋の行楽シーズンを迎え、観光関連が景気を押し上げ、一定の業種で底堅さを維持した。他方、消費者の節約志向の継続など厳しい面も表れたほか、一部地域で熊の出没による外出控えが小売業にマイナス材料となった。

『運輸・倉庫』(45.5)…前月比1.3ポイント増。2カ月連続で改善。「秋の旅行シーズンで、バス需要が多い」(一般貸切旅客自動車運送)というように観光バスは堅調に推移した。冷蔵、冷凍製品の需要拡大から倉庫関連が上向いた。加えて、自動車関連の回復やEC需要の増加などから一般貨物輸送も好調で景況感を押し上げた。他方、依然としてドライバー不足などは重荷となっている。

『卸売』(40.8)…同0.5ポイント増。2カ月連続で改善。本格的な寒さの到来で重衣料が動き「繊維製品・服飾品卸売」(同1.6ポイント増)は低水準ながら7カ月ぶりに改善した。治療薬や検査薬など医療関係で引き合いの多い「化学品卸売」(同0.5ポイント増)は4カ月連続で好調を維持。電子材料や自動車関連が好調といった声が聞かれる「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(同0.8ポイント増)は6カ月連続で上向いた。なお、4年2カ月ぶりに全9業種で改善した。

『サービス』(48.9)…同0.3ポイント増。3カ月連続で改善。秋の行楽シーズンを迎え、インバウンドに加え国内観光客も多いといった声が寄せられた「旅館・ホテル」(同3.5ポイント増)は4カ月連続で50台を維持した。「人材派遣・紹介」(同0.8ポイント増)は、建設をはじめ技術者需要の強さを背景に改善が続いた。冬に向けた整備需要が好調な「メンテナンス・警備・検査」(同0.4ポイント増)は2カ月連続で上向いた。他方、「飲食店」(同0.7ポイント減)はコメなどの仕入単価の高止まりや人件費高騰が響き3カ月連続で悪化した。

『小売』(38.8)…同0.3ポイント減。2カ月ぶりに悪化。「家具類小売」(同2.5ポイント減)や「家電・情報機器小売」(同2.3ポイント減)、「自動車・同部品小売」(同1.6ポイント減)などの耐久財は、節約志向の継続や季節需要の一巡からそれぞれ落ち込んだ。総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(同0.3ポイント減)は、人件費などのコストアップや仕入単価の高止まりが響き、2カ月ぶりに悪化した。他方、「医薬品・日用雑貨品小売」(同3.4ポイント増)は、インフルエンザの流行などで医薬品の需要増が影響し3カ月ぶりに改善した。

規模別:「大企業」「中小企業」が改善も、「小規模企業」は悪化

「大企業」「中小企業」が改善したものの、「小規模企業」は2カ月ぶりに悪化した。特に「大企業」は高い設備投資意欲を維持している。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は再び拡大し、5.2となった。

「大企業」(48.5)…前月比0.5ポイント増。2カ月ぶりに改善。『小売』は「自動車・同部品小売」など、9業種中6業種が上向いた。大型物件が多く、堅調な『建設』も全体を押し上げた。設備投資意欲DIは3カ月連続で50台を維持した。

「中小企業」(43.3)…同0.2ポイント増。2カ月連続で改善。「Windows 11移行でPC入替需要が堅調」という声があがった「機械・器具卸売」を含む『卸売』がけん引。好調な旅行需要で観光バスなど『運輸・倉庫』の改善も目立った。

「小規模企業」(42.1)…同0.1ポイント減。2カ月ぶりに悪化。需要の減少や建築資材費の高騰で『建設』とそれに連動して『不動産』も悪化し、全体を下押しした。一方で、「機械製造」など『製造』は改善した。

地域別:5地域が改善、5地域が悪化、建設やイベント需要で明暗分かれる

10地域中『南関東』『四国』など5地域が改善、『北海道』など5地域が悪化した。都道府県別では、改善が25、横ばいが8、悪化が14だった。建設やイベント関連需要などが地域経済の明暗を分けた。

『南関東』(46.9)…前月比0.5ポイント増。2カ月連続で改善、全国トップを維持している。「化学品卸売」を含む『卸売』のほか、「工事量が潤沢にある」といった声が寄せられた『建設』がけん引役となった。

『四国』(43.1)…同1.1ポイント増。5カ月連続で改善。域内4県中「徳島」を除く3県が上向いた。「瀬戸内国際芸術祭2025の終了後も活況が継続」のほか、インバウンド需要の高まりを背景に、『サービス』が上向き、全体を押し上げた。

『北海道』(42.6)…同0.8ポイント減。2カ月連続で悪化。10地域別順位では、前月の3位から7位に大幅ダウンした。「水揚げ量が激減した」(飲食料品・飼料製造)ことでコスト負担の高まりがみられた『製造』の悪化が下押しした。

【今月のトピックス】
高市政権に企業が寄せる今後の期待

  • 企業からは、就任2カ月目の高市政権の政策に対して期待する声が幅広く寄せられ、ポジティブな意見が5割を超えた

  • 今後を不安視する声はあるものの、ネガティブな意見は1割を下回った

【調査先企業の属性】.

1.調査対象(2万4,531社、有効回答企業1万207社、回答率41.6%)

2.調査事項

景況感(現在)および先行きに対する見通し

経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について

3.調査時期・方法

2025年11月14日~11月30日(インターネット調査)

【景気動向指数(景気DI)について】

■TDB景気動向調査の目的および調査項目

全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万6千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。

■調査先企業の選定

全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。

■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。

景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。

■企業規模区分

企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。

■景気予測DI

景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している

地域別はこちら】

北海道(道東・日胆)

東海(岐阜・静岡・愛知・三重)

東北 (青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)

近畿(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

北関東(茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)

南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)

四国(徳島・香川・愛媛・高知)

北陸 (新潟・富山・石川・福井)

九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

【TDB景気動向調査ご協力企業さま募集】

当調査は全国で2万5千社を超える企業にご協力いただいている、月次の景況調査では国内最大の統計調査です。


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会社概要

株式会社帝国データバンク

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URL
https://www.tdb.co.jp/index.html
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月