日常に潜む年齢による偏見を可視化する「EAS-J」―米国発の評価尺度を日本文化に最適化・孤独感やストレスへの影響を解明―

国立大学法人千葉大学

                                      

 千葉大学予防医学センター 河口謙二郎 特任助教(研究当時。現東京女子医科大学 助教)、竹内寛貴 特任研究員、京都大学、北海道大学の研究チームは、高齢者が日常生活で経験する年齢による偏見や差別を評価する質問票「日常的エイジズム尺度(注1)日本語版(EAS-J)」を開発しました。全国調査により、EAS-Jの質問項目が想定した3つの側面を適切に捉えているか、回答が一貫しているかなど、質問票としての心理測定特性(注2)を確認しました。さらに、EAS-Jによる評価では、日常的に年齢による偏見や差別を多く経験している人ほど、孤独感やストレスが高い傾向がみられることを明らかにしました。これらにより、教育プログラムや世代間交流など、エイジズムを減らす取組評価へ活用が期待されます。

 本研究成果は、2026年7月9日に学術誌Geriatrics & Gerontology Internationalで公開されました。 (論文はこちら:10.1111/ggi.70641)

        本研究の概要図

■研究の背景 

 世界保健機関は、2021年の報告書でエイジズムを世界的な公衆衛生上の課題と位置づけました。エイジズムには、年齢や高齢者を笑いの種にする冗談、「耳が遠い」などと能力を一律に決めつける言動、過剰な手助けに加え、本人が「年を取れば仕方ない」と考え、後ろ向きな年齢観を自分自身に当てはめることも含まれます。これまで日本には、日常的エイジズムを測る尺度がありませんでした。

   そこで本研究では、米国で開発された日常的エイジズム尺度であるEveryday Ageism Scale(EAS)(参考文献)を日本語と日本の文化に合わせて調整し、EAS-Jとして使用できるかを検証しました。


■研究成果のポイント

·  米国版EASをもとに、全10項目のEAS-Jを作成しました。62~75歳の参加者6名への認知的インタビュー(注3)を行い、理解しやすい表現へ整えました。

·  60~79歳の男女1,500人を対象とした全国オンライン調査データを分析し、EAS-Jの心理測定特性を検証しました。その結果、質問項目が想定した3つの側面を捉える良好なモデル適合度が得られ、回答の一貫性・安定性を示す信頼性と、妥当性を支持する結果を確認しました。

·  開発したEAS-Jを用いて評価したところ、日常的に年齢による偏見や差別を受けている人ほど、孤独感やストレスが高い傾向がみられました。特に「内面化されたエイジズム」は、孤独感との関連が3つのエイジズムの中で最も強く、心の健康度(ウェルビーイング)や自尊心の低さとも関連していました。

■今後の展望(研究者コメント)

 今後は、年代や地域、生活環境による違いや、健康との長期的な関係を明らかにするとともに、教育プログラムや世代間交流など、エイジズムを減らす取り組みの評価に活用したいと考えています。


■用語解説

注1)日常的エイジズム(Everyday Ageism):エイジズムは、年齢を理由とするステレオタイプ(固定観念)、偏見、差別の総称であり、そのうち、日々の生活で経験する気づかれにくいエイジズムを「日常的エイジズム」と呼ぶ。本研究では、「エイジズムを含むメッセージへの接触(2項目)」、「対人関係におけるエイジズム(5項目)」、後ろ向きな年齢観を自分自身に当てはめる「内面化されたエイジズム(3項目)」の3つに分けて測定した。

注2)心理測定特性:質問票が測定手段としてどの程度適切に機能するかを示す性質で、モデル適合度、信頼性、妥当性などから評価する。モデル適合度は、質問項目の構成が想定した測定モデルにどの程度合っているかを示す。信頼性は、質問項目への回答が一貫しているか、同じ条件でおおむね安定した結果が得られるかを示す。妥当性は、測定しようとする概念を適切に捉えているかを示す。

注3)認知的インタビュー:質問に回答してもらいながら、質問文をどのように理解したかを聞き取る面接。回答者の理解と作成者の意図にズレがないかを確認し、質問の言い回しを改善する。

■論文情報

タイトル:Development and Psychometric Validation of the Japanese Version of the Everyday Ageism Scale (EAS-J) Among Older Adults

著者:Kenjiro Kawaguchi, Chie Koga, Ayae Yamada, Isaku Kurotori, Hiroki Takeuchi, Lingling, Atsushi Nakagomi

雑誌名:Geriatrics & Gerontology International

DOI:10.1111/ggi.70641

■参考文献

タイトル:The Everyday Ageism Scale: Development and Evaluation

雑誌名:Journal of Aging and Health

DOI:10.1177/08982643211036131

■研究プロジェクトについて

 本研究は、公益財団法人総合健康推進財団の研究助成および日本学術振興会科学研究費助成事業(課題番号24K16531)の支援を受けました。

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会社概要

国立大学法人千葉大学

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URL
https://www.chiba-u.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33  
電話番号
043-251-1111
代表者名
横手 幸太郎
上場
未上場
資本金
-
設立
2004年04月