徒歩圏内の水辺を訪れる高齢者は、うつ傾向の割合が低い―アジア初、全国69市町村で水辺の訪問とメンタルヘルスの関連を検証―

国立大学法人千葉大学

                                      

 千葉大学予防医学センターの松本一希特任研究員と花里真道准教授らの研究チームは、日本老年学的評価研究(JAGES)に参加した、全国69市町村の65歳以上の高齢者21,339人を対象に調査したデータを利用し、高齢者の水辺(ブルースペース)注1)への訪問とメンタルヘルスとの関連を分析しました(2022年調査実施)。その結果、自宅から歩いて行ける水辺を月1回以上訪れる高齢者では、訪れない高齢者と比べて、うつ傾向にある割合が21%低く、幸福度(0〜10点)も0.28点高いことが分かりました。また水辺での散歩、景色を眺めること、人との交流、通勤等の移動が、より良好なメンタルヘルスと関連していることがわかりました。本研究はアジアでは先駆けの疫学研究であり、高齢者のメンタルヘルスの向上につながることが期待されます。
 本研究成果は2026年8月27日に、学術誌BMC Public Healthに掲載されました。
 論文はこちら:10.1186/s12889-026-29233-9


■研究の背景 

 公園や森林などの緑地と健康との関係については多くの研究が行われていますが、海、川、湖、池などの「水辺」とメンタルヘルスとの関係については、緑地と比べると限られています。これまでの水辺に関する研究は欧米を中心に行われ、実際に水辺をどの程度訪れているのか、また水辺でどのような活動をしているのかとメンタルヘルスとの関係は、特にアジアの高齢者では十分に分かっていませんでした。

■研究成果のポイント

 「過去1年間に、自宅から歩いて行ける範囲(約1 km)の水辺をどのくらいの頻度で訪れましたか」と尋ね、海・川・湖・池などの水辺を月1回以上「訪れる人」と、「ほとんど訪れない人」にわけた結果、回答者のうち6,949人(32.6%)が、水辺を月1回以上「訪れる人」でした。また、年齢、性別、所得、教育歴、就労状況、婚姻状況、治療中の病気、同居状況、都市度、自動車利用の有無などの違いを考慮して分析した結果、「訪れる人」では、「ほとんど訪れない人」と比べて、うつ傾向にある割合が21%低くなっていました。また、0~10点で尋ねた幸福度は平均0.28点高くなっていました。

 さらに、海から1 km以上離れた市町村の8,836人に限定した分析でも、水辺を訪れる人では、うつ傾向にある割合が24%低く、幸福度が0.33点高いという同様の関連がみられました。これは、海だけでなく、川や湖、池などの内陸の水辺でも、より良好なメンタルヘルスと関連する可能性を示しています。

 また、水辺を月1回以上訪れる6,949人について、水辺で行っている活動を調べたところ、「健康維持のための散歩」「景色を眺める」「人と交流する」「通勤などで利用する」ことが、いずれも、うつ傾向が低いことと幸福度が高いことの両方に関連していました。特に「人と交流する」と回答した人では、交流しない水辺利用者と比べて、うつ傾向にある割合が29%低くなっていました。

■今後の展望(研究者コメント)

 本研究から、自宅から歩いて行ける水辺を実際に訪れることが、高齢者のうつ傾向の少なさや幸福度の高さと関連することが示されました。また、水辺で歩くこと、景色を楽しむこと、人と交流することなど、さまざまな水辺での過ごし方がメンタルヘルスと関連する可能性も示されました。

 一方、本研究はある1時点で得られたデータを分析した研究であるため、「水辺を訪れることでメンタルヘルスが良くなる」という因果関係を証明したものではありません。今後は、長期間の追跡研究や、水辺環境の整備前後を比較する研究などを通じて、水辺を活かしたまちづくりが高齢者のメンタルヘルスの向上につながるかを明らかにしていきたいと考えています。

■用語解説

注1)水辺(ブルースペース):海、川、湖、池など、水が主要な要素となっている屋外環境を指す。本研究では、自宅から歩いて行ける範囲(約1 km)にある海辺や川沿い、湖、池などを対象とした。

■論文情報

タイトル:Association Between Visits to Blue Spaces within Walking Distance and Mental Health Among Older Adults in Japan: A Cross-Sectional Study from the Japan Gerontological Evaluation Study

著者:Kazuki Matsumoto, Yu-Ru Chen, Yoko Matsuoka, Hiroaki Yoshida, Atsushi Nakagomi, Katsunori Kondo, Masamichi Hanazato

雑誌名:BMC Public Health

DOI:10.1186/s12889-026-29233-9

■研究プロジェクトについて

本研究は、以下の支援によって実施されました。

●科学研究費助成事業科研費(19K02200, 20H00557, 20H03954, 20K02176,

20K10540, 20K13721, 20K19534, 21H00792, 21H03196, 21K02001, 21K10323, 21K11108,

21K17302, 21K17308, 21K17322, 22H00934, 22H03299, 22J00662, 22J01409, 22K01434,

22K04450, 22K10564, 22K11101, 22K13558, 22K17265, 22K17364, 22K17409, 23K16320,

23H00449, 23H03117, 23K19793 , 23K21500, 23K16349)
●厚生労働科学研究費補助金(19FA1012, 19FA2001,21FA1012, 22FA2001, 22FA1010, 22FG2001)
●国立研究開発法人国立長寿医療研究センター長寿医療研究開発費(21-20)
●国立研究開発法人科学技術振興機構(JPMJOP1831)
●公益財団法人健康・体力づくり事業財団令和 4 年度健康運動指導研究助成

●新潟大学十日町いきいきエイジング講座寄附金,TMDU 重点研究領域

●国立研究開発法人防災科学技術研究所

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会社概要

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URL
https://www.chiba-u.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33  
電話番号
043-251-1111
代表者名
横手 幸太郎
上場
未上場
資本金
-
設立
2004年04月