ベネッセ、リスキリングに対するインサイト調査を実施 日本人の「低い自己肯定感」と社会からの「押し付けられ感」が浮き彫りに 性別や20~30代と40~50代に「意識の格差」の傾向

-リスキリングは、多様化した個人に合わせたコミュニケーションが必須-

 株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:小林 仁、以下「ベネッセ」)は、日本においてリスキリングが抱える本質的な課題解決を目的とし、「リスキリングに関する生活者理解のためのインサイト調査」(以下、「本調査」)を実施しました。さらに、調査結果を基に、大人が持つ学びに対するモチベーションを8タイプに分け、それぞれがリスキリングに期待することを設定しました。

■本調査実施の背景・目的

 ベネッセが2023年に社会人約4万人に実施した「社会人の学びに関する意識調査」*1では、「リスキリング」の認知率は全体で56%と、2022年の23%から2倍以上上がり、社会人の2人に1人は「リスキリング」という言葉を知っていることがわかりました。一方で、社会人の約40%が、直近1年間の学習経験も今後の学習意欲もない「なんで学ぶの」層であり、学習をやめた「学ぶの疲れた」層と、現在学んでいないものの、今後は学ぶ意欲がある「学ぶつもり」層と合わせると、社会人の約3分の2(65.5%)が現在学んでいない結果となりました。

 また、同調査では、「リスキリング」を必要だと感じている人は社会人全体の56%でしたが、その中で実際に取り組んでいる方は約10%でした。「リスキリング」は一定認知され、必要性も感じられているものの、実際に取り組んでいる方が限られている現状の本質的な課題を探るため、このたびの調査を実施しました。


■本調査の結果サマリー

日本の大人が求めているリスキリングは「社会から肯定され、『自分の可能性』を見つけられるもの」

現状のリスキリングは「低い自己肯定感」と「押し付けられ感」に課題・性別や年代別で「意識の格差」の傾向

1.リスキリングに対する2つの課題

 本調査は最初に「学び」に関するポジティブな体験価値から相対的に見た隠れた不満や未充足を抽出する定性調査を実施し、次に不満や未充足に対する共感度と、それらを満たすために提供するべき新しい価値提案への魅力度および現状感じている未充足度を定量調査で検証しています。

 この定性調査では、リスキリングのイメージとしてネガティブな意見が半数以上見られました。特に、強制・押し付けられるものといったようなコメントのほか、これまでの人生についての不安や自信のなさ、自己否定や受け身な人生についてのコメントも半数以上あり、個人が大人の学びに対して持つ課題として、以下の2つが抽出されました。

(1) 自己肯定感が低く、自分の人生への主体性がないこと

 本調査結果では、自己肯定感が低い傾向にある方が多く、自分の人生に対して主体性が持てず、流れに身を任せる生き方をしてきた方が多く見受けられました。スキルを獲得して新たな道を切り開く以前に、自分の現在地が見えていない状況の方が、一定数いることがわかりました。

(2) リスキリング=押し付けられるだけの終わらないタスク

 リスキリングを「クラス全員参加のリレーのような強迫観念」「永遠に走らされているシャトルラン」と表現する回答もみられ、過去の肯定もなければ、未来への期待や可能性も感じられないものと感じている方が多いことがわかりました。これは、「現在学んでいる」と回答した方でも、同様のイメージを持っていました。

 上記の個人の学びに関するインサイトをもとに、企業や組織としても、個々人に合ったリスキリング推進のコミュニケーションの検討が必要ということが考えられます。


2.性別によるリスキリングへの認識差

 リスキリングへの期待や現状リスキリングに感じている未充足から、本調査では男性の回答者は周囲や自分の意識転換に関心があり、女性は自分の人生そのものへの関心が強い傾向があることがわかりました。また、特に女性の回答者の方が、現状のリスキリングに対する不満が大きいという結果となりました。

男性と女性で「リスキリングに期待すること」への魅力度の差が5ポイント以上だったもの

②「自分らしい人生(男性62.5%、女性67.3%)」⑤「職場環境を変革する力(男性54%、女性49.5%)」⑥「人生を挽回することを優しく支援(男性57%、女性66.8%)」⑦「人生をやり直す再チャレンジ(男性58.8%、女性66.5%)」⑧「失敗からの前向きな学び(男性61.5%、女性54.3%)



*バリュープロポジション(VP)︓

リスキリングに期待すること(提供価値)


 未充足度︓

各バリューがどの程度、今の「リスキリング」や、「リスキリング」に関するサービス全般で充たされていないと感じるか。







3.年代別の意識格差

 年代ごとの「リスキリングに期待すること」については、20代~30代は40代~50代と比べて平均9.3ポイント高く、リスキリングへの前向きな意識が浮かびあがりました。20代~30代は自分を高めることへの関心が強い一方、40代~50代はリスキリングへの不満が大きく、期待感も少ないという傾向が見られました。傾向の違いの理由としては、ライフステージや働き方に対する意識の違いが考えられます。

 一般的に40代~50代は、日々の生活が忙しいだけでなく、管理職を担うなど、仕事の責任も重い方が多い年代です。この層は就職氷河期を経験し、社会に適応しようとした結果、疲れを感じていたり、過去の自分を否定されたくないという気持ちを持つ傾向があり、リスキリングをして自分を変えることに対して抵抗感が見られました。一方で、企業は40代~50代のリスキリングを重要視しており、このギャップが大きな課題となっています。



*バリュープロポジション(VP)︓

リスキリングに期待すること(提供価値)


未充足度︓

各バリューがどの程度、今の「リスキリング」や、「リスキリング」に関するサービス全般で充たされていないと感じるか。







4.学びのモチベーションごとに8タイプを設定

 ベネッセは、大人の学びの推進には、学び対する外発的動機付けだけでなく、個人の内発的動機付けも重要だと考えています。また、人材育成投資と生産性の関係性には、特定のスキル・能力の育成だけでなく、従業員の価値観、感情・態度への働きかけが重要であることが示唆されている*2ことから、本調査から見えた多様な価値観や感情を基に、個人が持つ「学びのモチベーション」を8タイプに定義し、タイプに合わせたリスキリングへの期待を設定しました。

 8タイプを設定するにあたり、特徴的なインサイトをマッピングして傾向を分類した結果、縦軸は「自分を肯定するための方法」、横軸は「大切にする視点」と設定しました。

縦軸:「ポジティブなモチベーション」と「ネガティブからポジティブへ変換するモチベーション」

横軸:「自己肯定や納得感」と「他者貢献や独自性」

学びのモチベーション8タイプ

タイプ別 リスキリングに対する不満と期待


学びタイプ(愛称)・特徴

リスキリングに対する不満

リスキリングへの期待

1

自分探求タイプ(メラメラ探検家)

 まだ出会ったことのない、人生をかけて情熱を注ぎたくなることを探し求める。

今のリスキリングでは、自分がいま持っている興味関心がどう活かせるのかピンとこない。

自分が思いもしなかった、人生をかけて情熱を注ぎたくなる仕事に気付かせてくれるもの。

2

自分強化タイプ(孤高の仙人)

 今までの自分を振り返りながら、これから身につけるべきことを考える。

世間に合わせてリスキリングで学んでも、自分を見失ったままでは人生は好転しない。

社会の流行り廃りに揺らがない自分の人生を見つけられるもの。

3

多刀流タイプ(スゴウデ料理人)

 いま備えているスキルと、新たなスキルを混ぜ合わせて自分の栄養・力にする。

今のリスキリングは、今のスキルを捨てるか、スキルアップにしか繋がらない気がする。

今のスキルに新たなスキルを掛け合わせることで他にはない希少性の高い人物になれるもの。

4

人間力タイプ(たたきあげ将軍)

 学びを通して自分を完成させていき、人間力を高める。

今のリスキリングは、小手先だけの知識しか身に付かず、仕事の現場では信頼が得られない。

新たな知識を使いこなすための、人としての素養まで高められるもの。

5

組織変革タイプ(カリスマ村長)

 学ぶことで自分が変わるだけではなく、まわりの環境まで変えていく。

リスキリングしても、今の職場では新たなスキルを発揮できる環境がない。

新たなスキルだけではなく、職場の環境を変えていける力まで身に付くもの。

   

6

逆転劇タイプ(なにくそ勇者)

 資格をとったりスキルを備えたりすることで、逆境を乗り越えていく。

今のリスキリングは、勝ち組が更に勝つための学び、勝ち組じゃない自分はついていく自信がない。

どんな人に対しても、人生の逆転劇を優しく支援してくれるもの。

7

持久力タイプ(おきあがり戦士)

 あきらめそうになっても立ち上がり、学び、挽回する。

今のリスキリングは、人生の回り道をしてきた自分には手遅れな気がする。

やり直しに遅すぎることは無い、いつまでも再チャレンジを始められるもの。

8

経験学習タイプ(ホップステップ賢者)

 失敗や経験から学んだことを次に生かそうとする。

今のリスキリングは、失敗から得られる本当の学びにはつながらない。

挑戦する意欲が湧いてきて、失敗から学べるもの。


■調査結果を受けて

飯田 智紀(いいだ とものり)

株式会社ベネッセコーポレーション 社会人教育事業本部 本部長 (Udemy日本事業責任者)

リスキリングは、これまでの自分を否定する「学び直し」ではなく、過去の経験も大切にしながら、「学び足す」ものです。本調査を通じ、日本の大人が感じるリスキリングへの意識が見えてきた一方、学び通してポジティブな体験をされている方もいらっしゃることがわかりました。企業と個人が「選び・選ばれる」社会となった今、従業員の多様性を意識したコミュニケーションや文化醸成がより重要となります。ベネッセでは、オンライン学習サービスの「Udemy」を中心に、個人や組織内でのリスキリング・人材育成のサービスを拡充し、学びを通じてより多くの方が「よく生きる」を体現できる社会を目指していきます。


ダイヤモンド社『最高の学び方』(飯田智紀 著)
4月末より全国の主要書店・Amazon・楽天ブックスなどにて発売開始
Amazon予約サイトhttps://www.amazon.co.jp/dp/4478119570/


<「Udemy」および「Udemy Business」概要>
Udemyは、米国法人Udemy, Inc.が運営する世界6,900万人以上が学ぶオンライン学習プラットフォームで、世界中の「教えたい人(講師)」と「学びたい人(受講生)」をオンラインでつなげています。また、法人向けの「Udemy Business」は、Udemyで公開されている世界21万以上の講座の中から、日本の利用者向けに厳選した日本語及び英語約13,000講座を、サブスクリプション(定額制)で利用することができるオンライン学習サービスです。(株)ベネッセコーポレーションは、一生涯の学びを通して社会と人々の人生が豊かになるよう、社会人の学びを支援しており、Udemy社とは日本における独占的業務提携を2015年より行っています。

・Udemy公式サイト: https://www.udemy.com/ja/ 
・Udemy Business公式サイト: https://ufb.benesse.co.jp/


<調査概要>

「リスキリングに関する生活者理解のためのインサイト調査」

本調査におけるインサイトとは、本人も気づいていない無自覚な欲求や心の奥深くに隠された心理を指します。インサイトは価値・不満・未充足欲求の3種類あり、生活者に直接聞いても答えられないことが多いため、本調査は最初に「学び」に関するポジティブな体験価値から相対的に見た隠れた不満や未充足を抽出する定性調査を実施し、次に不満や未充足に対する共感度と、それらを満たすために提供するべき新しい価値提案への魅力度および現状感じている未充足度を定量調査で検証しています。

・対象:18~59歳の男女400名(定性)/20~59歳の男女800名(定量)

・期間:2023年9月22日~28日(定性)/2023年11月2日~6日(定量)

・方法:インターネット調査(定性・定量)

本調査の詳細資料:https://ufb.benesse.co.jp/ebooks/insightresearch2024.html


*1「社会人の学びに関する意識調査2023」

・対象:全国18~64歳の男女(学生を除く)、39,998名

・期間:2023年2月7日~2月9日

・方法:インターネット調査


*2公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター 

日本企業の人材育成投資の実態と今後の方向性

~人材育成に関する日米企業ヒアリング調査およびアンケート調査報告~ 2020年12月

https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/Productivity_report_vol.17.pdf

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会社概要

URL
http://www.benesse.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
岡山県岡山市北区南方3-7-17
電話番号
086-225-1165
代表者名
小林 仁
上場
東証1部
資本金
136億円
設立
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