首都圏の本社移転、コロナ禍後初の転入超過 転入363社は過去最多 進む「成長企業」の首都圏シフト、首都圏「一極集中」トレンド再加熱の兆し

首都圏「本社移転」動向調査(2025年)

株式会社帝国データバンク

帝国データバンクは、2025年に首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉:1都3県)⇔地方間をまたいだ「本社所在地の移転」が判明した企業(個人事業主、非営利法人等含む)について、保有する企業概要データベースのうち業種や規模が判明している企業を対象に分析を行った

SUMMARY

2025年に地方から首都圏へ本社を移転した企業は過去最多の363社で、首都圏から地方への移転は325社となり、首都圏では38社の転入超過となった。大阪府や福岡県などから多くの企業が首都圏へ移転、業種別ではサービス業が顕著だった。コロナ禍が収束し、対面での営業活動が再開するなか、取引先や若年層人口の多い首都圏へ、規模拡大を目指す中小企業による移転の動きが再び高まりつつある。

[注1] 本社とは、実質的な本社機能(事務所など)が所在する事業所を指し、商業登記上の本店所在地と異なるケースがある

[注2] 首都圏の企業転出・転入は、首都圏内外をまたぐ道府県との本社移転を指しており、首都圏内での県境をまたぐ本社移転は含まれない


首都圏企業の本社移転、5年ぶりの転入超過

2025年に地方から首都圏へ本社を移転(転入)した企業は、年間で363社に上った。2024年(296社)に比べて67社・22.6%増加し、2年ぶりに300社を超えた。また、転入社数は統計のある1990年以降の35年間で最多だった。

首都圏から地方へ本社を移転(転出)した企業は、年間で325社に上った。5年連続で300社を超える水準だったものの、2024年(363社)に比べて38社・10.5%の減少となったほか、3年ぶりに前年を下回った。

この結果、転出企業数から転入企業数を差し引いた「転出入超過」は、38社の転入超過となった。転入超過の規模は、最も多かった2015年(104社の転入超過)の約3分の1であったものの、コロナ禍の2020年(8社)以来、5年ぶりの転入超過となった。

2023年5月に新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行して以降、対面営業や従業員のオフィス回帰を促す企業が相次ぎ、首都圏へ転入する動きが強まった。加えて、首都圏でのビジネスチャンスを求めて移転する中小企業が増加するなど首都圏の企業吸引力が急回復しており、企業の「脱首都圏」の動きは減速の兆しがみられる。

なお、地方から首都圏への移転で最も多い市区郡は「東京都港区」(56社)となり、「千代田区」(37社)、「中央区」(34社)、「渋谷区」(26社)が続いた。首都圏からの移転では「東京都港区」(34社)のほか、「中央区」(31社)、「千代田区」(27社)、「渋谷区」「新宿区」(各17社)の順。

地方から首都圏へ移転した企業の転入元をみると、最も多いのは「大阪府」(69社)で、前年(58社)から11社・19.0%増加した。コロナ禍に突入した2020年以降では最多となり、過去10年では2016年(75社)に次いで2番目に多い水準だった。また、首都圏への転入元で過去最多(最多タイを含む、年間5社以上)となったのは、「福岡県」(37社)のほか、「愛知県」(35社)、「茨城県」(30社)など8県だった。

首都圏から地方へ移転した企業の転出先でも、最も多いのは「大阪府」(38社)で、前年(51件)から13社・25.5%の大幅減となった。首都圏からの転出先で過去最多(最多タイを含む、年間5社以上)となったのは、「群馬県」(28社)のほか、「沖縄県」(14社)、「石川県」「熊本県」(各5社)の4県だった。総じて、東京都心から郊外・隣接県へ機能を移す動きが続いているほか、観光産業が好調な沖縄県や半導体産業で好況が続く熊本県など、首都圏から離れた地域に移転する動きが目立っている。

首都圏へ転入、「サービス業」過去最多 西日本からIT企業移転

地方から首都圏へ転入した企業の業種では、「サービス業」(160社)が最も多かった。3年連続で前年を上回り、1990年以降で最多となった。サービス業では、ソフトウェア開発やベンダー、先端技術産業を含む「ソフトウェア受託開発」や、「パッケージソフトウェア」などIT企業の転入が最も多く、大阪府や福岡県など関東以西からの転入が多く目立った。次いで多いのは「卸売業」(52社)で4年ぶりに50社を超えた。首都圏内の再開発案件など需要が見込める「建設業」(30社)は、2年ぶりに前年から増加に転じた。他方、「製造業」は29社にとどまり、コロナ禍前の2018年(28社)に次ぐ、過去2番目に低い水準となった。

首都圏から地方へ転出した企業の業種では、「サービス業」が116社で最も多かった。過去2番目に多かった前年(151社)から一転して、35社・23.2%の大幅減少となった。前年に最も多かった「経営コンサルタント」(22社→15社)が大きく減ったほか、IT企業のうち「ソフトウェア受託開発」(18社→13社)などで減少した。地方の旅館・ホテルやリゾート施設経営を目的に移転するケースがみられた「旅館・ホテル」(6社→4社)でも減少した。次いで多い「卸売業」(67社)は前年(59社)から2年ぶりに増加し、産業用の電気機器や化粧品、コーヒーなど幅広い業種で移転が目立った。「不動産業」(24社)は、前年を上回り、2年連続で最多を更新した。

首都圏からの転出を巡っては、ソフトウェア開発など比較的移転の容易な業種が多くを占める状況に変化はなかった。一方で、コロナ禍に沈静化していた、物流センターや工場など大規模な施設の新築・移設を前提とする製造・流通業種で、再び転出の動きが強まっている。

中小企業の転入、中堅企業の転出が増加

地方から首都圏へ転入した企業の売上規模では「1-10億円未満」(158社)が最も多かった。「1-10億円未満」が全規模で最多となるのは2年連続で、2015年(154社)を上回り、2006年(173社)に次いで過去2番目に多かった。2番目に多い「1億円未満」(139社)も過去最多を更新した。この結果、売上高10億円未満の企業が転入全体に占める割合は81.8%を占め、過去最高となった。首都圏への移転が停滞したコロナ禍以降、規模拡大を目指す中小企業が首都圏を目指す動きが再び高まっている。

首都圏から地方へ転出した企業では、「1億円未満」(140社)が最も多く、小規模企業が中心となった。ただ、過去2番目に多かった2024年(176社)からは36社・20.5%の大幅減に転じた。「1-10億円未満」(130社)は3年ぶりに前年から減少した。他方で、企業規模としては中堅~大手に位置づけられる「10-100億円未満」(49社)は3年連続で増加した。首都圏外への企業移転は、コロナ禍前に多かったIT関連産業など小規模な企業の動きが中心だったものの、中堅規模以上の企業でも首都圏から本社を移転するケースが増加している。

首都圏へ転入した企業、前年度「増収」が拡大

首都圏へ転入した企業の業績動向をみると、2025年は前年から「増収」となった企業の割合は39.4%を占め、前年(36.6%)を上回った。首都圏全体で高機能オフィスの供給が拡大するなど移転企業の受け入れ態勢が整っているほか、新たな取引先との関係構築や情報収集、人材採用の強化など、企業経営の幅広い場面で首都圏に本社を置くメリットが大きい点も、拡大・成長する地方の中堅企業が首都圏への本社移転を後押ししている要因の一つと考えられる。

首都圏から転出した企業では、増収企業が34.2%となり、前年(33.3%)を上回ったものの、転入企業の水準を下回った。リモートワークの普及などで都心に巨大なオフィスを維持する必要がなくなった企業を中心に、オフィス賃料などランニングコストの高い首都圏から地方へと移転する動きが増加していたが、近時は成長を続ける企業の地方移転もみられる。

企業の移転、全移転から「機能分散」へトレンド変化も

総務省が2月3日に公表した、住民基本台帳に基づく2025年の人口移動報告によると、東京都では転入者が転出者を上回る「転入超過数」が6万5219人となり、4年ぶりに前年を下回った。都心のマンション価格など住居コストの上昇が東京への人口集中を鈍化させた可能性がある一方で、埼玉県など近隣県に転入先がシフトする傾向もみられ、全体では首都圏集中への回帰が鮮明となった。

首都圏企業の「地方移転」は、リモート化による在宅ワークを前提とした移転では、賃料コストの削減や従業員の通勤ストレス解消によるウェルビーイングの向上、地方創生に貢献する企業ブランドイメージの向上、首都圏の災害時でも稼働可能なBCP(事業継続計画)対策としても有効など、地方移転に対するメリットが経営層に浸透してきた。また、製造業などでは高額な賃料を支払う必要がある都心よりも、R&D(研究開発)や製造現場に近い場所へ移転し、効率化や連携強化を図る目的の移転も進んだ。

他方で、特にコロナ禍が収束し、対面での営業活動が復活した中では、主要な顧客との距離が近いことが大きなアドバンテージになるうえ、「交通費と移動時間の負担が予想以上に大きい」など、却って営業コストが増大するケースも散見され、「地方ならでは」の課題も顕在化してきた。また、高度な専門スキルを持つ人材の流動性は首都圏の方が高いほか、新卒採用面で地方勤務を敬遠する志望者が多く、「首都圏に拠点があるほうが都合がよい」という人材戦略上のメリット、即日配送といった物流インフラ面の利便性の高さなど、各経営面で積極的に地方へ移転するインセンティブが薄れつつある。企業移転の理由が、工業団地の整備や助成金といった「モノ・カネ」でなくなりつつあり、結果的に地方からビジネスチャンスを求めて首都圏に移転する成長企業の増加が転入社数を押し上げる形で、首都圏の企業転入超過トレンドへと転じた。

2026年の首都圏における本社移転は、2000年代後半からスタートした地方創生政策や、コロナ禍を機に加熱したブーム的現象から、移転後の効果や経営面のメリットをより精査する局面に突入するとみられる。災害に備えた首都圏以外への本社機能分散やバックアップ拠点の確保といった課題は多いものの、部分的な機能の移転や、サテライトオフィスも活用した機能分散といった、首都圏の利便性と地方の住みやすさを両立させるハイブリッド型の拠点再構築へとトレンドが変化する可能性がある。

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URL
https://www.tdb.co.jp/index.html
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 健夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月