血中アルブミン酸化還元バランスが中高年齢者における身体機能の変化を反映する有用な指標となる可能性を確認
~アメリカ栄養学会学術集会NUTRITION 2025にて発表/学術雑誌『Frontiers in Physiology』掲載~
森永乳業と順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の町田修一教授らは共同研究により、血中アルブミン酸化還元バランス※1が中高年齢者の身体機能の変化を反映する有用な指標となる可能性を見出しました。
本研究成果は、2025年5月30日~6月3日にアメリカで開催された国際学会NUTRITION 2025※2のフラッシュトークに選出されました。また、学術雑誌『Frontiers in Physiology』に2025年9月17日に掲載されました。
1.研究の背景・目的
加齢に伴う身体機能の衰えを予防するためには、適切な運動とたんぱく質などの栄養摂取が重要です。アルブミンは血中で最も豊富なたんぱく質であり、その濃度はたんぱく質栄養状態の指標として活用されてきました。近年、血中アルブミン酸化還元バランスがアルブミンの濃度よりも鋭敏なたんぱく質栄養状態の指標であることが明らかとなってきました。一方で、血中アルブミン酸化還元バランスが運動によって得られる効果とどのように関連するかは不明でした。そこで、本研究は中高年齢者を対象に、血中アルブミン酸化還元バランスと運動の効果とその関連性を明らかにすることを目的としました。
2.研究方法
順天堂大学ではこれまで、COI(センター・オブ・イノベーション)プロジェクトの一環として、運動器障害によって移動機能が低下した状態である「ロコモティブシンドローム」の予防・改善に効果的な運動プログラムの開発と社会実装に取り組んできました。本研究では、12週間の運動トレーニング教室へ参加した40代から80代の中高年齢者43名のデータを用い、トレーニング前後における身体機能(歩行速度)や血中の各種たんぱく質栄養状態の指標(血中アルブミン酸化還元バランス、アルブミン濃度、総たんぱく質濃度、遊離アミノ酸濃度)との関連性を解析しました。
3.主な結果
・血中アルブミン酸化還元バランスにおいて、還元型アルブミンの割合が高い人ほど歩行速度が速い。
・トレーニング前後の血中アルブミン酸化還元バランスにおいて、還元型アルブミンの割合が増加した人ほど、最大歩行速度の改善率が大きい。
これらの結果から、血中アルブミン酸化還元バランスはたんぱく質の栄養状態の指標としてだけでなく、中高年齢者の身体機能の変化を反映する指標である可能性が示されました。
4.今後の展望
栄養不足や運動不足は、加齢に伴う身体機能や筋肉量が低下する状態である「フレイル」や「サルコペニア」に繋がり、転倒や介護が必要になるリスクを高めることが懸念されています。血中アルブミン酸化還元バランスは、これらのリスクを早期に捉える新しい指標として、栄養と運動の両面からの健康管理に役立つ可能性があります。今後は、この指標を活用した中高年齢者の健康状態の評価や栄養・運動指導への活用に向けた検討も進めていきます。

※1 血中アルブミン酸化還元バランス
血中のアルブミンは「酸化型」と「還元型」に大別され、総アルブミンにおける還元型アルブミンの割合を「アルブミン酸化還元バランス」と称します。たんぱく質栄養状態が悪化すると、還元型の割合が減少(相対的に酸化型の割合が増加)することが報告されています。
森永乳業は、たんぱく質の栄養状態を反映する新たな指標として「血中アルブミン酸化還元バランス(総アルブミン量に対する還元型アルブミンの割合)」に関する研究を進めています
※2 NUTRITION 2025
アメリカ栄養学会が主催する、栄養学の最新研究が集まる国際学会です。応募された研究から一部の研究が“フラッシュトーク”に選出され、ポスター発表に加えて口頭発表の機会が与えられます。
論文名:The Effect of Resistance Training on Physical Function Is Associated with Changes in Serum Albumin Redox States in Middle-aged and Older Japanese Adults: A Quasi-experimental Study
著者名: Takuya Shibasaki1, Hirohiko Nakamura1, Yuka Kurosaka2, Shuji Sawada2, Kazuhiro Miyaji1, Shuichi Machida3
(1森永乳業研究本部、2順天堂大学スポーツ健康科学部、3順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科)
雑誌名: Frontiers in physiology (2025)
(DOI: https://doi.org/10.3389/fphys.2025.1649300)
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