スーツ業界、量から質重視へ転換 「オーダー」が市場けん引 主要7社の売上高は5%減にとどまる 若年層の「勝負スーツ」需要下支え
「主要スーツ・紳士服7社」動向調査(2025年度決算)

帝国データバンクは、春の卒業・入学・入社で高まる「スーツ」需要について、2025年度(2026年3月期)業績における主な紳士服7社のスーツ事業について調査・分析を行った。
SUMMARY
2025年度の主要紳士服7社のスーツ事業売上高は3386億円と、2年連続で前年度から減少した。店舗数は2025年度末時点で2284店舗、営業利益は130億円となった。他方で、重要な商談やプロポーズ、結婚式など「勝負スーツ」需要の高まりや、手ごろな価格の「パターンオーダー」等の普及も背景に、オーダースーツが新たな成長エンジンとなっている。
[注1]主要な紳士服7社(青山商事(株)、(株)AOKIホールディングス、(株)コナカ、(株)はるやまホールディングス、
(株)銀座山形屋、(株)タカキュー、グローバルスタイル(株))の「スーツ・フォーマルウェア」セグメント売上高合計
[注2] 2025年度(2025年4月~26年3月期)の数値は帝国データバンクによる一部推計値を含む
主要紳士服7社、「スーツ売上高」2年連続で減少
スーツなどの販売を行う主な紳士服7社の決算が概ね出揃った。2025年度(2025年4月~26年3月期)における主要7社の「スーツ事業」セグメント売上高合計は3386億円(前年度比5.2%減)と、2年連続で前年度から減少した。リモートワークの定着など働き方が多様化したことで、従来の既成ビジネススーツやドレスシャツの売れ行きが鈍く、市場全体は伸び悩みが続く。他方で、重要なプレゼンや結婚式などのフォーマルな場面で着用する「勝負スーツ」向けのオーダースーツが堅調で、「量から質」への転換がさらに進んだ1年となった。
なお、連結売上高では紳士服以外の事業が好調なAOKIホールディングスが、初めて青山商事を抜き業界首位となった。一方で、スーツ(紳士服)事業単体では、青山商事が依然トップとなる。

紳士服7社の店舗数は2025年度末時点で2284店舗となった。コロナ禍前で最も多かった2017年度末(2997店)から約700店・2割減少し、過去10年で初めて2300店を下回るなど、コロナ禍以降に各社で進んだ大規模な店舗整理の影響が残った。ただ、足元ではオーダースーツに特化し、少在庫化によって売り場面積を縮小した小型店舗の強化や、ロードサイドから郊外ショッピングセンターなど集客力の高い施設への移転も目立った。
利益面では、2025年度決算の営業利益合計は130億円となり、前年度(176億円)から26%減少した。円安の進行で輸入生地などの仕入価格が上昇したほか、人件費や光熱費など各種運営コストも高騰したことで、減益を余儀なくされるケースが目立った。
「オーダースーツ」が重要な成長セグメントに
スーツ・紳士服業界では、リモートワークの普及やオフィスカジュアルの浸透に伴い、従来型の既成スーツ市場は縮小傾向にある。こうしたなか、オーダー専業のグローバルスタイル(大阪・中央)が2025年に展開した「ガチスーツ」をテーマとしたショートドラマは、SNSを中心に爆発的なヒットとなり、「特別な場面ではきちんとした質の高いスーツを着たい」という潜在的なニーズの掘り起こしに寄与した。重要な商談やプロポーズ、結婚式など「勝負時着用するスーツ」の需要が高まっていたなかで、フルーオーダーよりも手ごろな価格で購入できる「パターンオーダー」等の選択肢は、高価なイメージのあったオーダースーツのハードルを引き下げており、幅広い世代で認知度が高まる要因となった。他方で、業界首位の青山商事(広島・福山)では、従来ブランド「Quality Order SHITATE」に加え、カスタムオーダー専門店「ユニバーサル ランゲージ メジャーズ」を展開するなど、大手各社による高付加価値生地やオプションの充実面を打ち出したハイエンド(高級)モデルのオーダースーツの展開も本格化している。普及価格帯・高級ラインの双方で、客単価や付加価値を高めるための重要な成長セグメントとして「オーダー」への注力が進んでいる。
また、業界2位のAOKIホールディングス(横浜・都筑)はカジュアル衣料が伸長、はるやまホールディングス(岡山・北)ではオリジナル疲労回復ウェア「YOKUNERU」の発売やウェルネスウェア専門店「DRUG WEAR」を展開するなど、従来のスーツから領域を広げ、機能性オフィスカジュアルや女性向け商品の拡充に注力したことで、「ファッション」事業として業績を拡大するケースもみられた。

「量より質」目指す傾向鮮明
2026年度のスーツ・紳士服業界でも、既製品よりも単価が高いオーダースーツを軸に、各社で需要の取り込みを図る。他方で、2000年代以降進んだオフィスカジュアル化などの影響で、スーツ需要の総量は今後も縮小が避けられないほか、既製品を中心とした格安スーツの登場、円安の進行による海外産生地の価格上昇など、業界全体で価格改定やコスト削減が課題となっている。こうした条件の下、各社は引き続きオーダースーツへ注力するほか、「カジュアル・レディース領域」の拡大、店舗の小型化・高効率化による「ローコスト運営」などを進めており、販売量から経営の質を重視する傾向がより強まりそうだ。
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