国内最大級のスマートクラウドラボ「iLIS」を岡崎に整備

〜 全国の研究者が時間や場所を超えて最先端実験にアクセスできる研究環境へ 〜

日本電気株式会社

大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構長:川合眞紀)は、AIとロボットを活用して実験の設計、実行、解析、データ蓄積を一体化する大規模スマートクラウドラボ「iLIS」を、自然科学研究機構岡崎地区(愛知県岡崎市)を中心に整備します。本事業は、日本独自の研究基盤システムである『大学共同利用機関※1』をデジタル時代に合わせて抜本的に強化するものです。文部科学省の令和8年度「共同利用・共同研究システム形成事業〜大規模集積研究システム形成先導プログラム〜※2」に採択され、令和8〜11年度の4年間、総事業費約95億円で実施予定です。総面積約1万1,600平方メートルにおよぶ国内最大級※3の共同利用型スマートクラウドラボ※4として、令和8〜9年度に施設・装置・データ基盤を整備し、令和10年度から全国の研究者への本格供用を開始する予定です。利用方法や公募時期、データ・知財の取扱いは、整備状況に応じて順次公表します。

※1 大学共同利用機関

個別の大学では整備・維持が困難な大型の研究施設や設備、膨大な学術データなどを、全国の国公私立大学の研究者が共同で利用するために設置された、日本独自の研究基盤システム。本事業では、このシステムをさらに強化し、時間や場所の制約を超えて最先端の実験環境にアクセスできる「スマートクラウドラボ」を構築することで、日本の「科学の再興」を貢献する次世代型の研究環境を提供。

※2 共同利用・共同研究システム形成事業 ~大規模集積研究システム形成先導プログラム~

全国の意欲ある研究者が時間・場所を問わず高度な研究環境にアクセスできるよう、AI for Scienceを活用した研究システムの抜本的改革を目指すプログラム。令和8年度から4年間の事業として開始。研究設備の自動化・自律化・遠隔化により、高品質な研究データを大量生成し、日本の「科学の再興」を実現することを目標とする。具体的には、①オートメーション/クラウドラボの構築、②研究データの創出・活用基盤の構築、③人材育成、を実施する。

※3 国内最大級

本事業は、総面積約1万1,600平方メートルの敷地の中に、自動合成、液体ハンドリング、MRI、放射光、クライオ電子顕微鏡、次世代シーケンサー、質量分析装置などを分野横断的にネットワーク化する共同利用型スマートクラウドラボとして研究基盤が整備されるという、「国内最大級」の規模のプラットフォームとなります。

※4 スマートクラウドラボ

 自動化・遠隔化された実験装置、ロボット、データ基盤、AI解析環境をネットワークで統合し、研究者が場所や時間に制約されずに実験や解析を行える研究施設。

【発表のポイント】

●  文部科学省の令和8年度「大規模集積研究システム形成先導プログラム」に採択。令和8〜11年度の4年間、総事業費約95億円で、国内最大級のスマートクラウドラボ「iLIS」を岡崎に整備する。

●  自然科学研究機構岡崎地区(愛知県岡崎市、山手キャンパス・明大寺キャンパス)を中心に令和8〜9年度に整備を進め、令和10年度から全国の研究者への本格的な供用を開始する。

●  自動有機・無機合成システム、液体ハンドリングロボット、MRI、放射光施設、クライオ電子顕微鏡、次世代シーケンサー、質量分析装置などをネットワーク化し、化学・材料科学・生命科学のデータ標準化を推進する。

【事業規模とスケジュール】

事業期間:令和8〜11年度(4年間) / 総事業費:約95億円(うち令和8年度予算 43.6億円)

【事業名・計画名称・ラボ名称】

事業名:共同利用・共同研究システム形成事業~大規模集積研究システム形成先導プログラム~

計画名称:⼤規模スマートクラウドラボを基盤とするケミ・マテリアル・ライフサイエンスの変革

ラボ名称:「革新的科学のためのインテグレーテッドスマートクラウドラボ/Integrated smart cloud Laboratory for Innovative Science(iLIS)」

           図1.  革新的科学のためのインテグレーテッドスマートクラウドラボ「iLIS」

【概要】

近年、世界ではAIを科学研究に活用する「AI for Science(AIfS)※6」が急速に進展しています。実験の自動化、データの大規模取得、AIによる解析・予測・設計を組み合わせることで、従来の研究者個人の経験や試行錯誤に大きく依存していた研究プロセスは、大きな転換点を迎えています。一方で、日本の科学研究は、研究時間の減少、研究開発費の伸び悩み、若手研究者数の停滞など、構造的課題に直面しています。こうした状況を打開し、日本が基礎研究における国際的優位性を再び確立するためには、AI・ロボティクス・データ基盤を一体化した次世代型の研究環境を整備し、高品質なデータを継続的に創出・活用する体制が不可欠です。

本事業では、こうした課題に対応するため、自然科学研究機構、情報・システム研究機構、高エネルギー加速器研究機構、東京科学大学、総合研究大学院大学、日本電気株式会社などが連携し、自動化・遠隔化に対応した分野横断型の大規模スマートクラウドラボを整備します。ケミカルサイエンス、マテリアルサイエンス、ライフサイエンスを中核領域とし、電子状態から分子、細胞、組織、個体レベルに至る多階層のデータを統合的に扱うことで、これまで個別分野では到達が難しかった新たな科学的発見を目指します。

【背景】

日本は、化学、材料科学、生命科学の各分野において、長年にわたり世界的に高い研究水準を維持してきました。しかし、近年は研究現場における人的・時間的制約が増大し、研究者が創造的な思考や挑戦的研究に充てられる時間が減少しています。同時に、世界では英国のMaterials Innovation Factoryや米国のEmerald Cloud Labに代表される、自動化・自律化・遠隔化された研究プラットフォームの整備が進んでいます。AIが実験条件を提案し、ロボットが実験を実行し、得られたデータを再びAIが学習する「自律的研究サイクル」といったAIfSは、科学研究の進め方を根本から変えつつあります。こうした世界的潮流の中で、大学共同利用機関という日本独自の研究基盤システムを強化し、日本発のAIfS研究環境基盤の形成が喫緊の課題となっています。

【大規模スマートクラウドラボの特徴】

iLISは、自動実験装置を集中的に整備する中核施設「スマートコア」と、各機関が保有する高機能研究装置群を高速ネットワークで接続した研究基盤で構成されます。

1.   自動化・自律化・遠隔化に対応した大規模スマートクラウドラボ
自動有機合成ユニット、自動無機合成ユニット、液体ハンドリングロボットなどをスマートコアに集中整備し、「つくる」「はかる」「わかる」「つなぐ」という研究プロセスをワンフロアで一気通貫に実行できる実験環境を構築。あわせて、各機関が保有する強磁場MRI装置、磁気共鳴装置群、放射光施設、クライオ電子顕微鏡、各種顕微鏡、次世代シーケンサー、質量分析装置などの高機能中核研究装置を高速ネットワークで接続し、遠隔利用やデータ連携に対応した統合研究環境として運用する。利用申込から実験の実行・データ取得までを束ねるポータルおよびオーケストレーションシステムを通じて、全国の研究者が遠隔から一連の研究プロセスを実行できる環境を提供する。

2.   AI-readyなマルチモーダルデータ※7基盤の構築
AIによる科学的発見を支えるため、実験データそのものだけでなく、サンプルの由来、測定条件、解析条件、実験プロセスなどを含むメタデータを体系的に収集・管理。分野横断的に統一されたIDをサンプルに付与し、実験、測定、解析の全過程を追跡可能とすることにより、化学構造、物性、イメージング、生体機能、遺伝情報などの異種データを、同一サンプルを軸に統合し、AIが学習可能な高品質マルチモーダルデータとして蓄積。

3.   AIとロボティクスによる自律的研究サイクル
実験プロセスの自動化・ハイスループット化により、従来の手作業に比べて実験効率を大幅に向上させることを目指す。AIが実験条件を最適化し、ロボットが実験を実行し、得られたデータをAIが解析し、次の実験設計へ反映する「自律的研究サイクル」の構築を推進する。このシステムにより、研究者は膨大な探索空間の中から有望な条件を効率的に見いだすことが可能となり、例えば、有機・無機触媒によるグリーンケミストリー、データ駆動型材料開発、バイオセンサーチップ開発、生体プローブ分子の設計、疾病治療薬のリポジショニング※8など、社会的要請の高い研究テーマの推進が期待される。

4.   全国の研究者に開かれたインクルーシブサイエンス※9
特定の機関に閉じた実験施設ではなく、全国の研究者がクラウドを通じて高度な研究環境にアクセスできる共用基盤として運用。これにより、大型装置を自機関で保有していない大学・高専の研究者、地方の研究者、中小企業やスタートアップの研究者も、最先端の実験設備とデータ基盤を活用できるようになり、また、子育てや介護などにより長時間研究室に滞在することが難しい研究者に対しても、遠隔から研究に参加できる環境を提供。さらに、理論科学者や情報科学者が、実験分野の専門的設備を遠隔で利用できる環境を整えることで、異分野融合研究への参入障壁を低減。

5.   日本発のオープンでベンダーフリーな研究機器エコシステム
日本分析機器工業会(JAIMA)との協力を通じて、分析機器のデータ、制御、運用の標準化と相互運用性の向上を推進。具体的には、分析・実験データの機械可読化に対応するMaiML※10や、分析機器・ロボット制御のためのLADS OPC-UA※11などの標準技術を活用し、メーカー横断・ベンダーフリーな実験環境の実現を目指す。これにより、特定ベンダーに過度に依存しないオープンな研究機器エコシステムを構築し、国内外の装置・ソフトウェアを柔軟に連携できる環境を目指す。なお、本事業に協力機関として参画するアマゾン・ウェブ・サービスジャパン合同会社は、クラウド活用に関する技術的な助言を行う。

【期待される効果と主な目標】

1.   研究生産性の飛躍的向上

実験・解析自動化パイプラインの整備5件以上、本事業の設備・データ基盤を活用した関連論文数150報

2.   AI駆動型研究(AI for Science)の加速

本事業における共同利用課題数累計300件、蓄積・共有データ量4.0 PB

3.   インクルーシブサイエンスの推進

外部利用者数年間300名

4.   次世代ハイブリッド人材の育成

分野横断型専門人材(AI×専門分野)の輩出数累計50名、教育プログラム参加人数累計1,000名

5.   産業界への波及と国際競争力強化

 標準化規格の実装機器数20台以上、新しい標準化規格に向けた参画企業数4社以上

【参画機関】

【用語解説】

※5 AI-readyデータ

AIが学習・解析に利用しやすいよう、形式、メタデータ、測定条件、サンプルIDなどが整理されたデータ。

※6 AI for Science(AIfS)

AIを科学研究の設計、実験、解析、予測、仮説生成などに活用する取り組み。膨大なデータとAIを組み合わせることで、従来よりも高速かつ高精度な科学的発見を目指す。

※7 マルチモーダルデータ

化学構造、物性、画像、遺伝情報、生体機能など、異なる種類・形式のデータ。

※8  リポジショニング

すでに承認されている薬や、開発途中で別の用途では成功しなかった薬について、新たな疾患への有効性を見出して開発・実用化する手法。

※9 インクルーシブサイエンス

所属機関、地域、ライフステージ、研究分野にかかわらず、意欲ある研究者が先端的な研究環境を利用できる科学のあり方。

※10 MaiML

分析機器が出力するデータを、メーカーに依存しない共通形式で記述・交換するための標準規格。データの機械可読化と再利用を可能にする。

※11 LADS OPC-UA

ラボの分析機器やロボットを、メーカーを問わず共通の通信規格で制御・連携するための標準仕様。

【報道関係の皆様へ】

・本事業に関する取材は、研究内容を説明できる担当者へ広報担当よりお取り次ぎいたします。

・報道用の写真・図版(施設イメージ、装置写真、概念図等)をご用意しています。ご希望の際は下記広報担当までご連絡ください。

 

【お問い合わせ先】

<本事業に関するお問い合わせ先>

大学共同利用機関法人自然科学研究機構(NINS) 事務局 研究協力課 課長 石橋和哉

電話:03-5425-2037 E-mail:nins-kenkyu@nins.ac.jp

<広報に関するお問い合わせ先>

大学共同利用機関法人自然科学研究機構(NINS) 共創戦略統括本部(広報) 日下部展彦

電話:03-5425-1302 FAX:03-5425-2049 E-mail:nins-pr@nins.ac.jp

【関係者コメント】

自然科学研究機構

機構長 川合眞紀:

大規模集積研究システム形成先導プログラムに採択されたことは,大学共同利用機関法人がその本来のミッションに応える上で大きな力となります.先鋭的な自動化システムや人工知能のシステムを導入することで,共同利用共同研究の質と量をさらに強化し,国内外の学際研究の発展に貢献してまいります.

【中核機関】

自然科学研究機構 分子科学研究所 

所長 渡辺芳人:

本プロジェクトの中核機関として、分子科学研究所はAIを活用する有機分子の自動合成から単離・構造決定、無機薄膜の作製や自動計測による構造や物性評価、UVSORにおける自動計測技術の開発など物質開発に関連する研究の自動化、自律化を目指して参ります。

【連携機関】

自然科学研究機構 生理学研究所 

所長 伊佐正:

生理学研究所としては、今回のプログラムによる基盤整備を通じて、電子顕微鏡やMRIなどの共同利用研究の自動化と 取得されたデータの利活用のハイスループット化を促進し、日本のどこにいても我々のリソースにアクセスできる体制を構築してAI時代のライフサイエンスを先導します。

自然科学研究機構 生命創成探究センター 

センター長 加藤晃一:

本先導プログラムにおいて生命創成探究センターは、ロボティクスを基軸としたラボオートメーションを高度化し、高品質な生命科学データの創出を通じてAI時代の生命科学研究基盤の構築に貢献します。

自然科学研究機構 基礎生物学研究所 

所長 三浦正幸:

本先導プログラムにおいて基礎生物学研究所は、自動化による高品質データの蓄積・共有と、AIを用いた高効率解析によって、生物の多様で魅力的な現象の解明をインクルーシブに進める環境を構築していきます。

情報・システム研究機構 国立情報学研究所
所長 黒橋禎夫:

国立情報学研究所(NII)では、国内の大学や研究機関に、広く共通の情報基盤を提供するとともに、最先端のAI研究開発・利活用を強力に推進しています。自然科学研究機構が構築するiLISをNIIの基盤と連携させるための、先端的な研究基盤を開発し、国内のAIfSをけん引する環境の構築を目指します。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所
所長 近藤滋:

国立遺伝学研究所は本先導プログラムにおいて、塩基配列データの標準化から登録、メタデータ整備、公開までを一貫して支える研究データ基盤を構築し、マルチモーダルデータ統合やAPI整備を通じて、AIを活用した仮説生成型研究を先導します。

総合研究大学院大学 
学長 永田敬:

総合研究大学院大学SOKENDAIは、本プログラムの連携機関として、大学共同利用機関を基盤とする大学院教育を通じて分野専門性とAIスキルを併せもつ次世代の高度専門人材の育成に貢献します。

情報・システム研究機構 統計数理研究所 
所長 山下智志:

統計数理研究所マテリアルズインフォマティクス研究推進センターは、独自の材料データベース、材料・化学分野向けAI基盤モデル、機械学習ソフトウェア、人材育成プログラムの提供を通じて、スマートラボの構築・運営に貢献します。

東京科学大学 ロボット未来創造センター
センター長 中山敬一:

AI・ロボットによる科学研究の自動化は、日本の強みを最大限に生かし、我が国が再び世界トップレベルの科学力を取り戻すために不可欠です。本学は、その実現に向けて責任を持って技術開発に邁進します。

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所
所長 船守展正:

物質構造科学研究所は、分子科学研究所等と進めてきた放射光マルチビーム研究を更に発展させ、AI時代に相応しい量子ビーム設備の開発運用と人材育成を進めて参ります。この取り組みが、量子マルチビーム共創拠点の実現に向けた大きな一歩になることを期待しています。

日本電気株式会社 コンピュート統括部

統括部長 廣瀬剛司:
日本電気株式会社は、本先導プログラムにおけるクラウドラボのポータル・オーケストレーションシステムの開発を通じ、AIと実験・データを統合した次世代研究環境の実現に貢献してまいります。あわせて研究プロセスの高度化を支え、新たな科学的成果の創出に寄与してまいります。

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会社概要

日本電気株式会社

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URL
https://jpn.nec.com/
業種
情報通信
本社所在地
東京都港区芝5丁目7-1
電話番号
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代表者名
森田 隆之
上場
東証1部
資本金
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設立
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