安徳帝は壇ノ浦に沈まず、三種の神器の剣とともに落ち延びた――。「平家落人伝説」を大胆に甦らせた、玉岡かおるの長編歴史ロマン『さまよえる神剣』が本日発売されます！

歴史人物評伝の名手が、新たに挑んだ「日本史最大の謎」。息をもつかせぬ展開と、誰にも想像のつかない結末。極上の読書体験をお約束します。

株式会社新潮社

2024年4月17日 11時00分

鎌倉時代初期。承久の乱に敗れ、隠岐に流される後鳥羽上皇のため、若武者は二人の仲間とともに神剣探索の旅に出る。伝承をもとに分け入った四国山中には、幼い帝を擁した一行の足跡が残されていた。剣は、そして帝は生き延びていたのか――。歴史の巨大な謎に挑んだ若者の冒険と恋を、スリリングに、そして情感豊かに描く。

古代の天皇から近現代の実業家まで、溌剌と生きた女性を主人公に、数多の傑作をものしてきた玉岡かおるさん。前作『帆神　北前船を馳せた男・工楽松右衛門』では、初めて男性主人公の、しかも本格的な海洋小説を世に問うて、話題を呼びました。しかし今回の最新作では、さらなるチャレンジを試みています。

舞台は源平合戦終結後の鎌倉時代。後鳥羽上皇は承久の乱で鎌倉幕府に敗れ、隠岐に流されます。失意に沈む上皇は、この運命は自分が「三種の神器」の剣なくして即位したせいだと苦悩します。そう、神剣は安徳帝とともに、壇ノ浦で失われていたからです。これを聞いた上皇寵愛の局は、警護の若武者に、謎めいた使命を与えます。それを「神剣を探せ」と受け取った若武者は、二人の仲間とともに、あてのない旅に出る――というのが物語の発端です。

四国山中での苛酷な道行き、襲い来る謎の刺客、そして最後にたどりついた土佐山中の隠れ里で、彼らはいったい、何を見たのでしょうか。歴史的事実を踏まえた巧みな構成、超自然的要素も取り入れた大胆な展開。そして何より、巨大な使命と、旅の途中で育まれる恋の狭間で苦悩する主人公の若々しい人間像は、多くの読者を魅了することでしょう。従来の玉岡作品ファンはもちろんのこと、歴史小説愛好者、それに何より、歴史上の「謎」や「伝承」を愛する方々にも、強くアピールできる作品です。

【内容紹介】

時は鎌倉時代初期。承久の乱に敗れて隠岐に流される後鳥羽上皇は、自らの運命は「三種の神器」の剣なくして即位したためと嘆く。上皇の護衛に付いた若武者・小楯有綱は、上皇寵愛の伊賀の局から使命を与えられる。それを「失われた神剣を探すこと」と理解した有綱は、備前の刀工・伊織、大山祇神社の若き巫女・奈岐とともに、探索の旅へと出発する。頼りない伝承に従って四国山地に分け入ると、そこには数十年前に、幼い子供を奉じて山中に消えた、謎の集団の痕跡が残されていた。苦難の旅の果てに、有綱一行が見いだしたものは――。

【著者紹介】

玉岡かおる

1956（昭和31）年、兵庫県生れ。神戸女学院大学文学部卒。1987（昭和62）年、『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で神戸文学賞を受賞し、作家デビュー。2009（平成21）年、『お家さん』で織田作之助賞受賞。22（令和4）年、『帆神　北前船を馳せた男・工楽松右衛門』で新田次郎文学賞、舟橋聖一文学賞受賞。主な著書に『銀のみち一条』『負けんとき　ヴォーリズ満喜子の種まく日々』『天平の女帝　孝謙称徳』『花になるらん　明治おんな繁盛記』『春いちばん　賀川豊彦の妻ハルのはるかな旅路』など。