森永乳業が世界保健機関(WHO)が推奨する70℃以上の調乳条件下においてもビフィズス菌M-63が生きて乳児の腸まで届くことを確認
実使用を想定した調乳条件下におけるビフィズス菌M-63の新たな科学的知見~国際学術誌『The Journal of Nutrition』掲載~
森永乳業は50年以上にわたり、ヒトの腸内に生息するビフィズス菌(Human-Residential Bifidobacteria; 以下、HRB)※1の様々な健康効果に関する研究を基礎から応用まで幅広く行っています。
このたび、健常な正期産新生児を対象に、HRBの一種であるビフィズス菌M-63(以下、M-63)を配合した乳児用調製粉乳(以下、粉ミルク)を用いた臨床研究を実施し、実使用を想定した調乳条件下におけるM-63の新たな科学的知見が得られました。本研究成果は、栄養学分野の国際学術誌「The Journal of Nutrition」に掲載されました※2。
<本研究成果のポイント>
①世界保健機関(WHO)が推奨する70℃以上の湯で調乳したところ、粉ミルクに配合されたM-63の生菌数は減少したものの、そのミルクを生後1か月まで摂取したほぼすべての乳児の便から生きたM-63が検出された。
②さらに、生後2週および生後1か月において、乳児期の健康に重要とされる、ビフィズス菌優勢な腸内環境が確認された。
<本研究の概要図>

1.研究背景
乳児期は腸内細菌叢が形成される重要な時期であり、ビフィズス菌優勢な腸内環境は乳児期の健康のみならず、その後の健康状態とも関連することが報告されています。こうした背景から、近年、海外ではビフィズス菌などのプロバイオティクスを配合した粉ミルクの開発・販売が進んでいます。一方、粉ミルクに混入する可能性のある有害菌への対策として、WHOでは70℃以上の湯での調乳を推奨しています。しかし、この条件では熱の影響によりプロバイオティクスの生菌数が減少する可能性があり、調乳後のプロバイオティクスが実際に乳児の腸内へ到達し、本来期待される働きを発揮するのかについては、これまで十分に検証されていませんでした。
そこで本研究では、健常な新生児を対象に、粉ミルクに配合されたビフィズス菌M-63が70℃以上での調乳条件下でも乳児の腸内へ生きたまま到達できるかを探索的に評価しました。
ビフィズス菌M-63とは
Bifidobacterium longum subsp. infantis(以下、B. infantis)に属する、乳児の腸内から発見された当社が独自に研究を行うビフィズス菌株です。B. infantisは、ヒトの腸内に生息するビフィズス菌であるHuman-Residential Bifidobacteria(HRB)のうち、乳児期に特徴的な「乳児型HRB」の一つです。B. infantisは、乳児型HRBのなかでも特に母乳との相性が高く、腸内で有益な代謝産物を産生することで、免疫機能の成熟や過剰な炎症の抑制などに寄与すると考えられています。
ビフィズス菌M-63は、母乳中に含まれるヒトミルクオリゴ糖の利用能が高いことや、生後早期の摂取により腸内環境を良好にし、免疫機能や排便習慣に有益な作用をもたらすことが報告されています※3, 4。また、米国でのFDA GRAS (Generally Recognized as Safe) ※5取得や、中国で新食品原料※6として登録されるなど、海外においても安全性が評価されています。

2.研究方法
・対象者: 健常な正期産新生児34名
・試験デザイン:ビフィズス菌M-63配合粉ミルクでの2群比較試験(プラセボ群なし)
(低用量群:5億CFU/100g粉乳、高用量群:50億CFU/100g粉乳)
※WHO推奨の70℃以上の湯で調乳
・摂取期間:生後1か月健診まで
※母乳育児の妨げにならないよう、摂取量や摂取タイミングは規定せず。
・評価項目:便中のビフィズス菌M-63生菌数、腸内細菌叢、便中代謝産物など
3. 研究結果
・70℃以上の調乳によって、粉ミルク中のビフィズス菌M-63の生菌数は減少しましたが、そのミルクを摂取した乳児のほぼすべてで、生後1か月時点の便から生きたM-63が検出されました(低用量群94.4%、高用量群100%)(図1)。
・いずれの用量群においても、ビフィズス菌優勢な腸内環境が認められました(図2)。さらに、ビフィズス菌占有率は、日本の健常な新生児の外部参照データと比較しても高いことが確認されました。
・また、M-63の便中生菌数は、乳児型ビフィズス菌が産生する有用物質であるインドール-3-乳酸(Indole-3-lactic acid)※7などのトリプトファン代謝物の便中濃度と正の相関を示しました(図3)。



4.今後の展望
これらの研究結果は、WHOが推奨する調乳条件でビフィズス菌M-63を乳児に利用する上で、実使用を見据えた重要な科学的知見となります。
森永乳業はこれからも、乳児期の腸内環境とビフィズス菌の関係について研究を深めるとともに、ヒトのビフィズス菌に関する研究開発と科学的エビデンスの発信を通じて、世界中の乳幼児の健やかな成長に貢献してまいります。
<参考情報>
※1 ヒトの腸内に生息するビフィズス菌 (Human-Residential Bifidobacteria, HRB)
ビフィズス菌は、現在までに100種類以上発見されています。しかし、ヒトの腸内にすむビフィズス菌とヒト以外にすむビフィズス菌では、基本的に種類が異なります。森永乳業は特にヒトの腸内にすむビフィズス菌にこだわって研究開発を行っています。
また当社は、ビフィズス菌の中でもヒトの腸管に特徴的に生息する種を「ヒト常在性ビフィズス菌(Human-Residential Bifidobacteria、HRB)」と命名しました。ヒトの腸内にすむビフィズス菌は、1500万年以上にわたり、ヒトの祖先と共に進化を遂げてきたことが示唆されています。こうした長い共進化の過程は、HRBがヒトの健康にとって重要な役割を担ってきた可能性を示す一つの根拠だと考えています。
※2 論文タイトル・著者
Hiraku A, Mishima R, Hori A, et al. Bifidobacterium longum subsp. infantis M-63 can reach the neonatal gut following World Health Organization-recommended infant formula preparation at ≥70 °C. The Journal of Nutrition.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022316626004748
DOI: 10.1016/j.tjnut.2026.101825
本論文は2026年9月8日に先行オンライン公開され、2026年10月1日に最終版が公開されました。
※3 引用文献
Hiraku A, Nakata S, Murata M, et al. Early Probiotic Supplementation of Healthy Term Infants with Bifidobacterium longum subsp. infantis M-63 Is Safe and Leads to the Development of Bifidobacterium-Predominant Gut Microbiota: A Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Nutrients. 2023;15(6):1402. Published 2023 Mar 14. DOI:10.3390/nu15061402
※4 引用文献
Xu C, Odamaki T, Hiraku A, et al. Anti-inflammatory effects of Bifidobacterium infantis M-63 during the early postnatal period in term infants. Pediatr Res. Published online July 18, 2025. DOI:10.1038/s41390-025-04263-y
※5 GRAS(Generally Recognized as Safe)
米国において、食品に使用される原料について、意図した使用条件下での安全性が専門家の間で一般に認められていることを示す制度です。ビフィズス菌M-63は、2022年に一般食品向け用途と乳児向けの用途でGRASを取得しました。
※6 新食品原料登録
中国において、伝統的な食習慣を持たない食品原料を食品に使用する際に必要となる制度です。特に3歳未満の乳幼児向け食品に使用できる原料については、安全性などに関する厳格な審査を受ける必要があります。ビフィズス菌M-63は、2024年に新食品原料として登録され、乳幼児向け食品への使用が認められています。
※7 インドール-3-乳酸(Indole-3-lactic acid, ILA)
必須アミノ酸であるトリプトファンから産生される腸内細菌由来の代謝物の一種です。乳児の未熟な腸において、免疫機能や抗炎症作用との関わりが報告されています。また、ビフィズス菌M-63を含む乳児型ビフィズス菌は、ILAを産生する能力が高いことが知られています。
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