免疫細胞pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)の活性が低い集団で風邪罹患リスクが高い可能性を確認

キリンホールディングス株式会社

 キリンホールディングス株式会社(社長 COO 南方健志、以下キリン)のヘルスサイエンス研究所(所長 村島弘一郎)は、ベトナム国立栄養研究所(Director Tran Thanh Duong)との共同研究により、健康なベトナム人医学生41人を対象とした研究において、観察開始時にプラズマサイトイド樹状細胞(以下pDC)の活性が低い集団では、高い集団と比べて、その後4週間における風邪罹患リスクが高い可能性を確認しました。観察期間中に風邪に罹患した7人は全員、pDC活性が低い群で、発熱、鼻づまり、のどの痛みの症状が出るリスクも高い結果となりました。なお、本研究成果は、2026年10月22日に日本臨床免疫学会で発表しました。また、国際学術誌「Tropical Medicine and Infectious Disease」※1に受理されています。

 風邪などの上気道感染症は、多くの人が日常的に経験する一方、生活の質の低下や仕事・学業への支障などによる社会的負担につながります。しかし、感染症への罹患のしやすさには個人差があるものの、感染前の免疫状態からそのリスクを把握する方法は十分に確立されていません。そこで本研究では、ウイルス感染時の初期防御に重要なpDCの働きに着目し、その機能を反映する指標であるIFN-α※2産生能と、その後の風邪罹患との関連を調べました。今回の成果から、感染症への罹患のしやすさと免疫機能の個人差に着目することで、一人ひとりのリスクに応じた感染症予防の研究につながることが期待されます。

※1 Association Between TLR9-Mediated Interferon-Alpha Production and Short-Term Risk of Common Cold: A Pilot Observational Study

※2 インターフェロンαという抗ウイルス性物質

■背景・目的

 風邪は通常、自然に軽快することが多い一方、症状による生活の質の低下や欠勤などを通じ、個人と社会の双方に負担をもたらします。また、同じような環境で生活していても、感染症へのかかりやすさには個人差がありますが、感染前にその違いを把握するための方法は十分に検証されていません。

 pDCは、ウイルス感染の初期に働く免疫細胞で、ウイルスの増殖を抑えるIFN-αを産生する主要な細胞として知られています。しかし、個人ごとのpDCの働きの違いが、その後の風邪罹患リスクと関連するかについて十分なエビデンスがありませんでした。そこで本研究では、pDCの活性化指標として、観察開始時のウイルス模倣刺激に対するIFN-α産生能と、その後の4週間の風邪罹患との関連を調べました。

■研究概要

 本研究は、ベトナムの健康な医学生を対象とした過去の試験から取得したプラズマ乳酸菌を摂取していない対象者のデータを用いた前向きの観察研究です※3。解析対象は、観察開始時のIFN-α産生データ及び観察期間中の風邪罹患データが得られた41人でした。

 はじめに、観察開始時に採取した血液から様々な免疫細胞が含まれる末梢血単核球(PBMC)※4を分離し、ウイルス刺激を模倣するCpG※5で刺激した後、24時間後に産生されたIFN-α量を測定しpDC活性を比較しました。

 その後、IFN-α産生量をもとに、pDC活性が高い群(HIGH群)20人と低い群(LOW群)21人に分けました※6。

 対象者が毎日の体温と、鼻水・鼻づまり・くしゃみ・のどの痛み・せき・鼻づまりによる頭重感・疲労感の7症状を4週間記録しました。この7症状の合計スコアが基準点以上かつ発熱(37.5℃以上)を有する場合を「風邪」と定義※7し、観察開始前のpDC活性と、風邪および各風邪症状の発現との関連を解析しました。

 なお、本研究の刺激条件において、PBMC中のIFN-α産生細胞のほとんどがpDCであることを確認しています。(平均97.2%。データ掲載なし)

※3 先行研究で取得したデータを用いて、pDC活性とその後の風邪罹患との関連を新たに解析したもの。「Effects of Lactococcus lactis Strain Plasma (LC-Plasma) Intake on Infection-Related Symptoms Among Healthcare Workers: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study」

※4 血液中に含まれる免疫細胞(pDCやリンパ球等を含む)の総称。

※5 ウイルスや細菌のDNAに多く含まれる特徴的な配列を人工的に合成したもの。

※6 IFN-α産生量の中央値で、産生量の低い群と高い群で分類を実施。

※7 先行研究を参照「Randomised controlled trial of rhinothermy for treatment of the common cold: a feasibility study | BMJ Open」

■研究成果

1.pDC活性が低い群(LOW群)では風邪罹患リスクが高かった

4週間の観察期間中、風邪に罹患した人数は、LOW群では21人中7人、HIGH群では20人中0人でした。LOW群の風邪罹患割合はHIGH群より33.3%高い結果となりました。

図1. 4週間の観察期間における風邪罹患割合

2.発熱、鼻づまり、のどの痛みの発現割合も高かった

LOW群ではHIGH群と比べて、発熱(37.5℃以上)、鼻づまり、のどの痛みの発現割合が高い結果となりました。

図2. 各群における風邪症状の発現割合

■得られた示唆

本研究は、観察開始前に測定したIFN-α産生能と、その後の風邪罹患との関連を前向き研究で示した点に特徴があります。本結果から、pDC活性(IFN-α産生能)が低い集団では、短期間において風邪にかかりやすい可能性が示唆されました。

■今後の展望

今後、pDCやIFN-αをはじめとする自然免疫機能と感染症への罹患のしやすさとの関係について、対象者や観察期間を広げて研究を進めます。感染症へのかかりやすさと免疫機能の個人差に着目することで、一人ひとりのリスクに応じた感染症予防と人々の免疫のケアにつながる知見の創出を目指します。

 キリンは、発酵・バイオテクノロジーを基盤に、免疫研究など健康寿命の延伸に向けた取り組みを進めています。人の一生に寄り添い、健やかに暮らせる社会を目指しています。

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会社概要

URL
https://www.kirinholdings.co.jp/
業種
製造業
本社所在地
東京都中野区中野4-10-2 中野セントラルパークサウス
電話番号
03-6837-7000
代表者名
南方 健志
上場
東証1部
資本金
1020億4579万円
設立
1907年02月