教育危機:2億人が遠隔学習の体制整わず~将来の学校閉鎖に備え、高まる必要性【プレスリリース】

公益財団法人日本ユニセフ協会

自宅で祖父に教えてもらいながら勉強する男の子。(カメルーン、7月撮影) © UNICEF_UN0542735_Andrianandrasana自宅で祖父に教えてもらいながら勉強する男の子。(カメルーン、7月撮影) © UNICEF_UN0542735_Andrianandrasana

【2021年10月28日 ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)が本日発表した報告書によると、2億人の学齢期の子どもが暮らす低・中所得国31カ国では、将来の緊急事態における学校閉鎖に備えて、遠隔学習を導入する体制がいまだに整っていません。そのうち1億200万人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの少なくとも半分以上の期間、学校が完全または一部閉鎖された14カ国に住んでおり、多くの子どもたちがいかなる形態の教育も受けられない状況にあります。

発表された遠隔学習準備指数(Remote Learning Readiness Index)は、低・中所得国の生徒の約90%を対象に、対面授業の中断に対応して遠隔教育を提供するための各国の準備状況を示したものです。「家庭の資産の利用可能性と親の教育レベル」、「政策の展開と教師のトレーニング」、「教育分野における緊急事態への備え」という3つの領域に焦点を当てて分析しています。

ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは「緊急事態の真っただ中にいたとしても、また別の緊急事態が発生することもあります。次に生徒たちが学校に来られなくなったときに、より良い選択ができるような取り組みは十分に進んでいません。混乱した状況ではありましたが、この19カ月間で、パンデミックの最中やその後に何ができるかが、少しずつ分かってきました。ユニセフはパートナーと協力して、テクノロジーの力を活用し、世界中の子どもや若者に学習の機会を提供するために懸命に取り組んできました」と述べました。
 

休校に対応するソーラー式ラジオを使い、授業を受ける12歳のモハメドくん。ユニセフが支援する遠隔教育プログラムのおかげで、中学校に入学することができた。(モーリタニア、2021年6月撮影) © UNICEF_UN0495429_Pouget休校に対応するソーラー式ラジオを使い、授業を受ける12歳のモハメドくん。ユニセフが支援する遠隔教育プログラムのおかげで、中学校に入学することができた。(モーリタニア、2021年6月撮影) © UNICEF_UN0495429_Pouget

ベナン、ブルンジ、コートジボワール、コンゴ、エチオピア、マダガスカル、マラウイ、ニジェール、トーゴは、教育分野において、最も改善の必要性が高い国といわれています。COVID-19のパンデミックの際には、特にコンゴやマダガスカルなど、過去19カ月間のうち少なくとも半分以上の期間、学校が完全または一部閉鎖されていた国々に住む生徒たちが、遠隔学習の準備ができていないことによって特に悪影響を受けました。

本報告書では、遠隔学習の限界とアクセスの不平等さについて概説し、実際の状況は入手可能なデータが示しているよりも、はるかに悪い可能性があると警鐘を鳴らしています。また、高中所得国や高所得国を含む調査対象外の国においても、生徒たちが遠隔学習の課題に直面していることが、逸話や定性データによって明らかになっています。

本報告書における、その他の主な調査結果は下記のとおりです。
  • 調査対象となった67カ国のうち31カ国は、すべての教育レベルにおいて、遠隔学習を提供する準備が整っていません。その中で最も影響を受けているのが、西部・中部アフリカ地域の子どもたちです。残りの17カ国は平均的な準備ができており、19カ国は平均以上の準備ができています。
  • 就学前教育は最も軽視されている教育レベルであり、COVID-19のロックダウンの際にも、対応するための政策を展開していない国が多く、最も重要な発達段階にいる幼い子どもたちが取り残されています。
  • 気候変動などによるその他の危機も、教育へのアクセスに大きな影響を与えます。31カ国のうち23カ国は、気候・環境ショックを受ける危険性が高いあるいは極めて高いとされており、1億9,600万人の学齢期の子どもたちが、緊急時の学校閉鎖のリスクに晒されています。
  • アルゼンチン、バルバドス、ジャマイカ、フィリピンは、最も準備が進んでいます。しかし、こうした指標のスコアが高い国々においても、国内で格差があるため、貧しい家庭や農村部に住む子どもたちは、学校閉鎖中に取り残される可能性が非常に高くなっています。
  • 心強いことに、国民総所得(GNI)が比較的低い国の多くが、平均以上のスコアを獲得しています。これは国際協力や良い事例を共有し合える可能性を表しています。

本報告書では、対面授業に代わるものはないと述べています。しかし、強固な遠隔学習システム、特にデジタル学習を備えたレジリエンス(回復力)の高い学校であれば、緊急時の学校閉鎖中も、ある程度の教育を行うことができます。さらに、学校が再開された後も、こうしたシステムによって生徒は失われた学習時間を取り戻すことができます。

ユニセフは、官民パートナーと協力し、 Reimagine Education(教育の再構築)イニシアチブを通じて、子どもや若者が質の高いデジタル学習に平等にアクセスできるようにし、2030年までに約35億人の子どもたちに世界水準を満たすデジタル学習ソリューションを提供することを目指しています。ユニセフは、この目標に向けて、マイクロソフト社と共同で開発した世界的な学習プラットフォーム「ラーニングパスポート(Learning Passport)」を活用し、学校閉鎖中の160万人の子どもたちを支援しています。また、このイニシアチブは、すべての学校とその周辺のコミュニティをインターネットに接続するために、ユニセフと国際電気通信連合(ITU)が共同で実施している「ギガ(Giga)」によっても支えられています。今週の時点で、ギガは41カ国にある100万の学校をマッピングし、4大陸の3,000以上の学校をつなぎ、70万人の子どもたちに教育の機会を提供しています。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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