アメリカ中間選挙直前、国内に広がる分極化は『キャンセルカルチャー』のせいなのか?
アメリカ社会の〝溝〟を読み解くキーワード
トランプ&バイデン時代の硬直化した米国社会では、きょうも人種や性別のアイデンティティをかけた争いが続く。
トランプが2年後の大統領選挙出馬を示唆し、その前哨戦として注目が集まるアメリカ中間選挙。アメリカ社会は挑発的な手法の大統領を引き金にして、BLMをはじめ、銃規制、同性婚、ダイバーシティ、妊娠中絶、移民など、無数の大きな溝を残した。11月8日の投開票を前に、アメリカ政治のスペシャリスト前嶋和弘教授が、分断が広がるアメリカ社会を「キャンセルカルチャー」を軸に紐解いていく。
«差別反対や平等性・公平性の確保のために、これまでの歴史や文化、習慣などを見直す行為――この行為こそ、本書で論じる「キャンセルカルチャー」である。
文化を「キャンセルする」ことに対しては、保守派からは一気に反発が広がっている。ドナルド・トランプはまるで取りつかれたように「リベラル派の度が過ぎたキャンセルカルチャー」を何度も批判し続け、保守派からの喝采を集めてきた。
ただ、これまで問題があった悪弊を見直していくことこそ、進歩であり、差別反対の観点から、歴史上の人物の行為に対してメスが入るのも歴史的な必然にもみえる。
社会改革の動きが顕著になれば、保守派のキャンセルカルチャー批判もより鮮明になる。作用と反作用の動きがどんどん増幅しているのが、いまのアメリカだ。「キャンセルカルチャー」という、このことばを取り巻く動きの根幹にあるのは、多様性という価値観をめぐるアメリカ国内の分断にほかならない。
この「キャンセルカルチャー」ということばを縦軸にして、アメリカの現在を読み解いていくのが、本書の目的である。»
【本書の主な内容】
- キャンセルの語源
- ポリティカル・コレクトネスに対する逆襲
- 大きく変わったアメリカ社会
- 南北戦争への二つ見方
- 「批判的人種理論」の提唱者ベル
- 1619プロジェクトの生みの親
- 奴隷制という「原罪」
- 2000年大統領選挙で露呈した「アメリカの分断」
- 分断を極めたトランプ時代
- バイデンとトランプの共通項
- 世界観の違いが生む「文化戦争」
- 「ワクチンを打たない自由」「マスクをしない自由」
- 選挙産業が広げる分断
- メディアの分極化
- ラッシュ・リンボウとトランプ
- 国家ぐるみのフェイクニュース
- キャンセルカルチャーに続く対立を煽ることば
- 女性大統領の可能性
- 人口動態の変化が時代を変える
歴史を清算して、アメリカはどこへ向かうのか?
小学館の『日本大百科全書(ニッポニカ)』で、2021年1月に就任したバイデン大統領の人物項目をはじめ、現代アメリカ政治の分野で項目執筆を担当したのが、前嶋氏。百科事典項目のエッセンスを核に、アメリカの真実をさらに掘り下げたいという意図から本書が誕生した。
〈目次〉
はじめに
第1章 キャンセルカルチャーとは何か
第2章 「アメリカの多様性」に対するアレルギー
第3章 大統領選挙に見る政治的分極化
第4章 妊娠中絶、ワクチン、マスクは、なぜ「文化戦争」になったのか
第5章 キャンセルカルチャーとメディア
第6章 ヘイトクライムの歴史とBLM運動
第7章 銃とアメリカとキャンセルカルチャー
第8章 キャンセルカルチャーということば
おわりに
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『キャンセルカルチャー
アメリカ、貶めあう社会』
著/前嶋和弘
定価:1760円(税込)
判型/頁:4-6/258頁
ISBN978-4-09-388844-8
小学館より発売中(10/18発売)
本書の紹介ページはこちらです↓↓↓
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388844
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【著者プロフィール】
前嶋和弘 (まえしま・かずひろ)
1965年静岡県生まれ。上智大学教授。専門は現代アメリカ政治外交。上智大学外国語学部英語学科卒、ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了(MA)、メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了(Ph.D.)。編著に『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社)、『オバマ後のアメリカ政治―2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(東信堂)ほか。テレビやラジオ、インターネット媒体でも積極的に発言を続けている。2022年よりアメリカ学会会長。
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