【第22回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作】AIベンチャー起業家が描く古代エジプトミステリー 『ファラオの密室』1/9発売
ピラミッドの密室の謎と、自分が死んだ理由を3日以内に明かせ!!
本書は、主人公の神官・セティがミイラになって蘇り、自分が死んだ理由を解き明かしていく、古代エジプトの信仰を背景に描かれる本格ミステリーです。選考委員から、「これだけ野心的な設定を用意して、壮大な物語をきちんと着地させた点を高く評価」「奇想天外な謎作りといい友情溢れる人間関係劇といい大賞の価値あり」「読ませるポイントが随所に用意されている。古代エジプトに興味をもてない方々もぜひ読んでほしい」と高い評価を得て大賞に選ばれました。
受賞者のインタビューも可能ですので、ぜひ取材をご検討いただけますと幸いです。
『このミステリーがすごい!』大賞は、これからも新しい作家・作品を発掘・育成し、業界の活性化に寄与してまいります。
著者は東大卒、34歳マネックスグループ取締役!
<著者コメント>
光り輝く黄金の仮面、巨大なピラミッド、死者の書を携えて埋葬されたミイラたち……古代エジプトには、死後の世界への憧れとロマンが満ち溢れています。こうしたイメージが先行する一方で、盗掘や聖刻文字の難解さにより 、未だ多くのことが謎に包まれています。当時の人々が何を考え、どのように暮らしていたか。限られた史料から 、今も究明の試みが続いています。
調べるうち、私もこの未知と謎にすっかり魅了され、空想の翼が羽ばたく舞台にふさわしいと確信しました。どうかご一読いただき、その魅力を共有できれば嬉しいです。
白川尚史(しらかわ・なおふみ)
1989年、神奈川県横浜市生まれ。東京都渋谷区在住。弁理士。東京大学工学部卒業。在学中は松尾研究室に所属し、機械学習を学ぶ。2012年に株式会社AppReSearch(現・株式会社PKSHA Technology)を設立し、代表取締役に就任。2020年に退任し、現在はマネックスグループ取締役兼執行役。プライベートでは子育てに奮闘する、一児の父。
『ファラオの密室』 発売日:2024年1月9日(火) https://tkj.jp/book/?cd=TD049315
古代エジプトの信仰を背景に描かれる、空前絶後の本格ミステリー
【あらすじ】
紀元前1300年代後半、古代エジプト。死んでミイラにされた神官のセティは、心臓に欠けがあるため冥界の審判を受けることができない。欠けた心臓を取り戻すために地上に舞い戻ったが、期限は3日。ミイラのセティは、自分が死んだ事件の捜査を進めるなかで、やがてもうひとつの大きな謎に直面する。棺に収められた先王のミイラが、密室状態であるピラミッドの玄室から消失し、外の大神殿で発見されたというのだ。この出来事は、唯一神アテン以外の信仰を禁じた先王が葬儀を否定したことを物語るのか? タイムリミットが刻々と迫るなか、セティはエジプトを救うため、ミイラ消失事件の真相に挑む!
『このミステリーがすごい! 』大賞とは?
『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的に、2002年に創設した新人賞です。これまで、第153回直木賞受賞者の東山彰良氏や、累計1080万部突破の「チーム・バチスタの栄光」シリーズの海堂尊氏、音楽ミステリー『さよならドビュッシー』や社会派サイコスリラー『連続殺人鬼カエル男』で知られる中山七里氏などの作家を輩出してきました。さらに、受賞には及ばなかったものの、 将来性を感じる作品を「隠し玉」として書籍化。累計250万部を突破した岡崎琢磨氏の「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズをはじめ、映画化もされた志駕晃氏の「スマホを落としただけなのに」シリーズなど、「隠し玉」からもベストセラー作品が多く生まれています。
東大松尾研究室出身、AIベンチャーを創業、30代で上場企業取締役に就任
AIビジネスで成功した著者が作家を目指した理由とは?
★起業した会社を退任後、3 年前から執筆活動を開始
両親と4歳上の姉との4人家族で育ち、本が家にあるという家庭環境でした。姉はミステリーを読んでいたので島田荘司さん、有栖川有栖さんの本がひょいと置かれていたり。父も時代小説をすごく読んでいましたね。あと、中学から電車通学で電車に乗っている時間が長かったんです。当時はスマホもなかったので本を読んでいることが多かった。僕が通っていた開成学園の図書館にはなぜか普通の小説はあまりなくて、海外のSFとかが大量に揃っていました。なので、棚に面白そうなタイトルの本を見つけては片っ端から読んでいった。マイクル・クライトンとかのビッグネームの人の本もあれば、作家名も知らない人のもありました。
ただ、中学生の頃は、作家ってカッコいいなとは思いましたけど、小説を書いてみようとは思わなくて、将来書けたらいいなと思う程度でしたね。実際に書き出したのは3年前です。前の仕事が先輩と起業した会社だったんですけど、いったん役員を退任したタイミングで時間ができたので、これを機にちょっと筆を執ってみるかという気になったんです。それと、その頃ミステリー作家を目指している大学の先輩から『東西ミステリーベスト100』というのを教えてもらって、それを片っ端から読んで、ああ、ミステリーって面白いなあと再確認したんです。
最初は、締め切りの2か月前から書き始めて何とか長編にしたものを江戸川乱歩賞に応募しました。もちろんダメで、それが2020年の1月です。そしたら、さっきの先輩から僕には『このミス』大賞が合ってると言われて、前回応募させていただいたんです。その時に「次回作に期待」と選評されたので、よし次こそはと思って書いたのが今作の『ファラオの密室』です。
★応募締切り1か月前、75%完成していた原稿から方向転換
主人公の上級神官書記・セティ、ミイラ職人・タレク、奴隷の少女・カリを中心に物語は展開しますが、最初はカリを主人公に、彼女が様々な困難を乗り越えながら成長していく話というのを考えていました。その過程でタレクに弟子入りして、彼亡きあとは遺志を継いでいろんな謎を解き明かしていくという構成だった。なので、その2人を起点に物語は展開していくつもりだったんです。
『このミス』大賞に応募したのは今年の5月ですが、4月末にはこの構成で75%書き上げていました。5月のゴールデンウィークに家族で沖縄に行ったんですが、原稿は全て置いて夕木春央さんの『方舟』と、斜線堂有紀さんの 『楽園とは探偵の不在なり』の2冊を持って行きました。『方舟』もすごく面白かったんですけど、『楽園とは探偵の不在なり』を読んだときにすごく衝撃を受けて、僕の小説にはキャッチーさが足りない、1行で人を引きつけるようなものがない、と。それで、もう一度考えようと思って、考えた末に出てきたのが、一度死んだ人が自分が死んだ理由を解き明かすというもの。それと、エジプトに昔から伝わっている死者の審判で、秤(はかり)に心臓と羽根を載せるというシーンはそれなりに知っている人もいるのではないかと思って、その2つを組み合わせると物語に深みと説得力が出てきて面白くなるんじゃないかと思ったんです。なので、主人公をセティにして、主人公が一度死んだあと生き返って、もう一度自分がきちんと死ぬために自らの死の謎を解き明かすという構成で一気に書き直しました。
★ロマンのある舞台を求め、たどり着いた古代エジプト
最初は古代オリエントの辺り、メソポタミアとかも考えていたんですが、その辺りのことを調べているうちに比較的近かったエジプトがすごくユニークな文化を持っている場所だということに気づいたんです。ただ、僕は古代エジプトのことはまったく知らなかった。同じ時代の古代ギリシャは文字を残す文化があったうえに解読も進んでいるのでかなり知られていますが、エジプトの聖刻文字はギリシャ語の対訳でようやく理解できる状態なんです。古代エジプトというとツタンカーメンや黄金のマスクが有名だと思うけれど、その他のことは全然わかっていない 。例えば、ツタンカーメンにしても歴史から抹消された王様なんですね。つまりエジプトの系譜からいうと追いやられた側ですが、たぶん日本では一番有名じゃないですか。そんな本来の姿とのアンバランスさみたいなものも明らかにしていく。知っているようで知らないことって結構面白いんじゃないかな、と。そこに魅力を感じたので古代エジプトを舞台に設定しました。
★次回作について
僕はいわゆる理系の人間ですが、小説に関して言えば個人的には技術的なことを面白い小説にするのは難しいと思っています。実をいうと、前回の『このミス』大賞に「VR少年院『ユートピア』殺人事件」という作品で応募したんです。今でもトリックにはすごく自信があるんですが(笑)、一次選考も通らなかった。技量の問題もあると思いますが、僕としては知識があるがゆえに、こんなことは起こり得ない、AIはこんなことは言わないし、できないし、こんな目的に使わない、コストも見合わないみたいなことを無意識のうちに考えてしまう。結果としてエンターテイメントとして昇華しきれなかったのだと思います。その反省から今作では舞台設定を変えて勝負して、『 このミス』大賞を受賞することができました。
次回作は、古代ギリシャを舞台にと思って今は下調べをしている段階です。日本は好きなのですが、時代小説とか時代ミステリーを書く方は結構いらっしゃると思うんです。でも、世界を舞台にした古代のミステリー、小説自体がほぼない。戦略的にブルーオーシャンなところを狙っていこうと思っています。
(聞き手・ライター:大西展子)
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