アフガニスタン:女子中等教育の禁止で、アフガン経済に5億米ドルの損失~児童婚や人身売買のリスクも【プレスリリース】

学習センターで授業を受ける女子生徒たち。(アフガニスタン、2022年6月撮影) © UNICEF_UN0652303_Nesbitt学習センターで授業を受ける女子生徒たち。(アフガニスタン、2022年6月撮影) © UNICEF_UN0652303_Nesbitt

【2022年8月15日 カブール(アフガニスタン) 発】

ユニセフ(国連児童基金)は、アフガニスタンにおいてこの一年間、女の子が中等教育から遠ざけられていることで、同国の年間国内総生産(GDP)の2.5%(5億米ドル)に上る損失が生じているとの新しい分析を発表しました。

また、現在300万人いる女の子たちが中等教育を修了し、労働市場に参加することができれば、彼女たちが生涯でアフガニスタン経済に貢献できる額は少なくとも54億米ドルに上るとしています。

ユニセフの試算では、女の子が教育を受けられなくなることによる非金銭的な影響、例えば今後見込まれる女性教師、医師、看護師の不足、それに伴う女の子の初等教育への出席率の低下、10代の妊娠に関連する医療コストの増加などは考慮されていません。また、この試算は、全体的な教育達成度、児童婚の減少、乳児死亡率の減少など、教育がもたらす広範な利益についても計算に含んでいません。
 

ヘラートのユニセフが支援する女子学校で、先生から月経について学ぶ生徒たち。(アフガニスタン、2022年6月撮影) © UNICEF_UN0679822_Naftalinヘラートのユニセフが支援する女子学校で、先生から月経について学ぶ生徒たち。(アフガニスタン、2022年6月撮影) © UNICEF_UN0679822_Naftalin

ユニセフ・アフガニスタン事務所代表のモハメド・アヨヤは、「3月23日の、女の子の中等教育への復帰を認めないという決定は、衝撃的であり、深く失望させられるものでした。この決定は、教育を受けるという女の子の基本的権利を侵害するだけでなく、女の子を大きな不安に陥れ、人身売買や児童婚・強制結婚などの搾取や虐待のリスクにさらします。この新しい分析は、この決定がアフガニスタンのGDPに与える深刻な経済的影響を明確に示しています」と述べました。

昨年8月15日にタリバンが権力を握る以前から、アフガニスタンは420万人以上の子どもが学校に通えず、そのうちの60%が女の子であるという問題を抱えていました。教育を受けないことによる潜在的な損失は、得られたはずの収入を失うという点で男の子も女の子も同様に高いですが、女の子の場合、教育達成度がその後の人生、つまり女の子が結婚や出産を遅らせ、労働に参加し、自らの将来を選択し、自身の子どもの健康や教育により多く投資するということに影響するため、女の子が教育を受けないことで生じる損失は特に大きくなります。この分析によると、アフガニスタンは、中等教育を受け修了するという女の子の権利を実現しなければ、移行期に失われたGDPを取り戻し、その真の潜在的生産性に到達することはできないだろうとしています。

「ユニセフは、アフガニスタン全土のすべての女の子と男の子が学校に通い、学ぶ姿を見たいと願っています。その目標が達成されるまで、私たちは働きかけを止めません。教育はすべての子どもたちの権利であるだけでなく、アフガニスタンの将来の成長の基盤なのです」(アヨヤ)
 

パクティア州の女子学校で、絵画の授業を受ける小学6年生の女の子たち。(アフガニスタン、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0683671_Hubbardパクティア州の女子学校で、絵画の授業を受ける小学6年生の女の子たち。(アフガニスタン、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0683671_Hubbard

ユニセフは、女の子たちが中等教育に戻れないことに加え、貧血予防支援や月経の健康と衛生など、以前は学校でおこなっていた10代の女の子たちに必要なサービスを届けることにも苦慮しています。

子どもの栄養不良も増加しています。2021年6月、アフガニスタンでは3万人の子どもが重度の急性栄養不良の治療を受けました。しかし2022年6月には90%増加し、5万7,000人の子どもが入院しました。子どもたちは、最も安全な場所であるはずの学校に行く代わりに、家族を養うために働かなければならなくなっています。

過去12カ月間で、学校を拠点とする保健・栄養支援によって、272,386人の10代の女の子たちに鉄と葉酸のサプリメントを届けました。つまり、女の子が教育を受け続けられないことは、彼女たちの健康を損なうことになるのです。

「アフガニスタンは依然として、子どもにとって世界で最も複雑でいくつもの危機が重なっている場所のひとつです」と、アヨヤは述べました。「今、アフガニスタンの子どもたちにとって、極めて重要な岐路を迎えています。女の子たちの権利は攻撃を受けており、子ども時代は奪われ、傷つけられています。だからこそユニセフは、厳しい活動環境にありながら、これまでにないほど規模を拡大し、支援を届け、成果を上げています。私たちは、アフガニスタンの人々に対して、『みなさんの信頼と支えなしには、このような活動を行うことはできません』と伝えたいと思います。また、ドナーやパートナーのみなさまのこれまでの寛大なご支援に感謝するとともに、子どもたちの命を守るための支援を、特に冬を目前に控えた今、継続して行っていただくようお願いいたします」

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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公益財団法人日本ユニセフ協会

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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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