中央サヘル地域:武力衝突激化~人道支援必要な子ども1,000万人と急増【プレスリリース】

危機は隣国にも拡大、気候変動の影響も

武装勢力に誘拐された聴覚障がいのある16歳のマダさん。家族や友人、村の人たちみんなで身代金を払い、解放された。(ニジェール、2022年8月撮影) © UNICEF_UN0684343_Dejongh武装勢力に誘拐された聴覚障がいのある16歳のマダさん。家族や友人、村の人たちみんなで身代金を払い、解放された。(ニジェール、2022年8月撮影) © UNICEF_UN0684343_Dejongh

【2023年3月17日 ジュネーブ/ダカール(セネガル)/ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)が本日発表した新報告書「チャイルド・アラート:中央サヘル地域における極度の危機(Child Alert: Extreme Jeopardy in the Central Sahel)」によれば、ブルキナファソ、マリ、ニジェールで、人道支援を緊急に必要としている子どもの数が、主に紛争の激化により2020年の2倍に増えて1,000万人に上りました。また近隣諸国では武装グループと政府治安部隊の間の敵対行為が国境を越えて波及し、400万人近くの子どもが危険にさらされています。

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ユニセフ・西部・中部アフリカ地域事務所のマリー=ピエール・ポワリエ代表は「子どもたちは、激化する軍事衝突の犠牲者として、あるいは非政府武装集団の標的として、武力紛争に巻き込まれることがますます増えています。2022年は、中央サヘル地域の子どもたちにとって特に暴力にさらされた年でした。紛争のすべての当事者は、子どもたち、そして子どもたちの学校や保健センター、家庭に対する攻撃を早急に停止する必要があります」と述べています。

国連のデータによると、ブルキナファソで2022年の最初の9カ月間に死亡が確認された子どもの数は、2021年の同じ時期に比べて3倍も増えました。子どもたちの多くは、住む場所が襲撃された際の銃創で亡くなったか、即席爆発装置(IED)や爆発性戦争残存物(ERW)が原因で命を落としています。
 

北部のカヤの学校に通う8歳のバモゴさん。3年前、住んでいた村で武装勢力に襲われ、銃弾を受けた左腕は、切断することになってしまった。(ブルキナファソ、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0640721_Dejongh北部のカヤの学校に通う8歳のバモゴさん。3年前、住んでいた村で武装勢力に襲われ、銃弾を受けた左腕は、切断することになってしまった。(ブルキナファソ、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0640721_Dejongh

武力紛争は残忍さを増しています。マリ、ブルキナファソ、そして最近ではニジェールにて広範囲に活動する武装集団の中には、町や村を封鎖し、水道施設を破壊するなどの戦術をとるものもいます。最近の予測では、ブルキナファソ、マリ、ニジェールの国境地帯では、2023年6月までに2万人以上が、最も深刻な「大惨事」レベルの食料不安に陥るとされています。

公教育に反対する武装集団は、組織的に学校を焼き払い、略奪を行い、教師を脅し、拉致し、殺害しています。3カ国で8,300以上の学校が、直接標的にされたり、教師が自身の安全を恐れて逃げたり、または親が故郷を追われたり、怖くて子どもを学校に通わせられなかったり、などの理由で、閉鎖されました。ブルキナファソでは5校に1校以上が閉鎖され、ニジェールのティラベリ州では紛争のために30%の学校が機能しなくなりました。

中央サヘルからベナン、コートジボワール、ガーナ、トーゴ各国の北部国境地帯に敵対行為が波及しており、インフラや資源が乏しい遠隔地では、子どもたちが必要不可欠なサービスや保護を受けることが極めて制限されています。

2022年には上記4カ国の北部国境地帯で、武装集団による攻撃など少なくとも172件の暴力行為が報告されました。最も大きな被害を受けたベナンでは、地域のモニタリング・ネットワークによると、人口の最大16%が危険にさらされていると考えられています。ベナンとトーゴの両国で、2022年末までに、北部地域の9つの学校が、治安の悪化により閉鎖されたり、機能しなくなったりしています。
 

公立小学校で授業を受ける8歳のアバッセさん。以前住んでいた南東部の村が武装勢力に襲われ、家族と逃れた。(ベナン、2022年10月撮影) © UNICEF_UN0794116_Hounkpatin公立小学校で授業を受ける8歳のアバッセさん。以前住んでいた南東部の村が武装勢力に襲われ、家族と逃れた。(ベナン、2022年10月撮影) © UNICEF_UN0794116_Hounkpatin

この危機は、地球上で最も気候の影響を受けている地域の一つで起こっています。サヘルの気温は、世界平均の1.5倍の速さで上昇しています。降雨はより不規則で激しくなり、農作物の収穫を減らし、希少な水源を汚染するような洪水を引き起こしています。2022年、ニジェールではここ何年かで最悪の洪水が発生し、3万8,000戸の家屋が損傷したり破壊されたりしました。同国は、ユニセフが発表した「子どもの気候危機指数(CCRI)」において、世界7位となるリスクの高さが指摘されています。

中央サヘル地域における危機は、慢性的かつ深刻な資金不足に陥っています。2022年、ユニセフが要請した3億9,100万米ドルの資金のわずか3分の1しか集まっていません。2023年、ユニセフは、中央サヘルおよび近隣の沿岸諸国における人道的対応を支援するために、4億7,380万米ドルを要請しています。

ポワリエ代表は「中央サヘルでの、また、徐々に高まっている近隣の沿岸諸国での危機の規模は、人道支援の強化ならびに、社会的結束、持続可能な開発、そして子どもたちのより良い未来のための、しなやかに回復する力 『レジリエンス』を持つ必要不可欠な社会サービスへの長期的で柔軟な資金投下を必要としています」と述べています。

中央サヘルの子どもたちに対する、ますます高まりつつある脅威に対応するため、ユニセフは以下のことを早急に求めます。
  • 中央サヘル地域の各国および影響を受けている沿岸諸国の政府は、技術的および財政的パートナーと共に、平和と安全への重要な道筋として、必要不可欠な社会サービスと社会的保護へのアクセスを拡大するための投資を大幅に拡大すること。この規模拡大は、危機の際のファーストレスポンダー(第一次対応の担い手)となり、特に支援が届きにくいコミュニティの子どもたちに一貫して手を差し伸べることができる地域のシステム、ネットワーク、労働力を強化し支援することに焦点を当てるべきである。
  • すべての紛争当事者は、国際人道法・人権法の下で、子どもに対する基本的な道徳的・法的義務を果たすこと。これには、子どもと彼らにとって重要なサービスへの攻撃を中止すること、人道的空間とアクセスを尊重すること、武力紛争の影響を受けた子どもの扱いに関する議定書の内容を明確に実施すること、子どもに対する重大な人権侵害をなくすための具体的行動計画について国連と体系的に関与することが含まれる。

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■ 注記
2022年、ユニセフがパートナーと共に行った、中央サヘル地域での支援活動実績の例は以下のとおり。
  • 約36万5,000人の子どもにメンタルヘルスケアと心理社会的サポートへのアクセスを提供し、120万人の子どもに就学前の早期学習を含む公式ないし非公式の教育を提供。110万人の子どもにはしかワクチンの接種を実施した。
  • 44万6,000人以上の子どもと女性に、ユニセフが支援する施設でプライマリ・ヘルスケアを提供し、67万4,000人の5歳未満の子どもに重度の消耗症の治療を行った。また、約82万人に、飲用および家庭用として十分な量の安全なへのアクセスを提供することができた。
  • 中央サヘルに接する沿岸の5カ国では、710万人の子どもに個別の学習教材を提供し、128万人に水と衛生に関する支援物資を提供。約190万人の子どもと女性に、ユニセフが支援する施設でプライマリ・ヘルスケアへのアクセスを提供した。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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