紛争下の子ども、世界で4億人「武力紛争下の子どもの保護に関する国際会議」【プレスリリース】

ユニセフ事務局長、国際社会へ行動を呼びかけ

激化する紛争から逃れ、ポートスーダンの避難所でユニセフの心理社会的支援を受ける男の子。(スーダン、2023年5月撮影) © UNICEF_UN0841480_Satti激化する紛争から逃れ、ポートスーダンの避難所でユニセフの心理社会的支援を受ける男の子。(スーダン、2023年5月撮影) © UNICEF_UN0841480_Satti

【2023年6月6日 オスロ(ノルウェー)発】


ユニセフ(国連児童基金)事務局長のキャサリン・ラッセルは、ユニセフがオスロで共催する「武力紛争下の子どもの保護に関する国際会議」にて、以下のとおり発言しました。


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今日、世界には、紛争地帯で暮らしている、または紛争地帯から逃れようとしている子どもが、4億人います。これは世界中の子どもの5人に1人にあたり、国々の人口を超える数となっています。

 

戦争で、最初にそして最も苦しむのは子どもたちです。家族や友人を亡くし、性的暴力を受けます。人口密集地における爆発性兵器などによって、怪我を負い、命を落とします。武装勢力や武装集団に徴兵・徴用されます。そして、多くの子どもが幾度となく避難を余儀なくされています。それは家族と離ればなれになるおそれや、何年にもわたって非常に重要な教育の機会を奪われ、属しているコミュニティとのつながりが途絶えてしまうことを意味します。


爆撃により破壊された自宅マンションの前に立つ10歳のベロニカさん。(ウクライナ、2023年1月撮影) © UNICEF_UN0780457_Filippov爆撃により破壊された自宅マンションの前に立つ10歳のベロニカさん。(ウクライナ、2023年1月撮影) © UNICEF_UN0780457_Filippov

国連は、2005年から2022年の間に紛争地域で31万5,000件以上の子どもへの重大な権利侵害があったと確認しています。これは、命を奪われ、重傷を負い、武装勢力に徴兵・徴用され、誘拐され、恐ろしい性的暴力を受けた子どもたちです。 さらに、多くの学校が攻撃され、破壊されています。そして、これらは確認されたケースにすぎず、実際の侵害件数はもっと多いことは間違いありません。

 

一つひとつの数字の裏には、権利が侵害され、否定された、想像を絶する子どもの苦しみがあります。私は訪問の先々で、紛争の影響を受けている、あまりにも多くの子どもたちに会ってきました。

 

ウクライナでは、重度の障がいがある10代の男の子に会いました。空爆の音がするたびに、家族は彼をシェルターに連れて行くのにひと苦労していました。恐ろしい戦争が続く中、空爆の音は頻繁に聞こえます。

 

シリアのアレッポでは、なんとか戦火を免れ、生活を立て直し始めたところで大地震に見舞われた子どもたちに会いました。

 

イエメンでは、迫撃砲が撃ち込まれて負傷し、両足を失った子どもに出会いました。


アファール州の仮設の治療施設で、重度の栄養不良と診断されたアリエムちゃん。アファール州は干ばつや紛争の影響で、食料不足が深刻化している。(エチオピア、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0639236_Sewunetアファール州の仮設の治療施設で、重度の栄養不良と診断されたアリエムちゃん。アファール州は干ばつや紛争の影響で、食料不足が深刻化している。(エチオピア、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0639236_Sewunet

コンゴ民主共和国では、暴力によって心に傷を負いほとんど話すことができない男の子に会いました。誘拐され何年も性的暴力を受けてきた女の子の話を聞きました。

 

彼らに起きた出来事、一つひとつが悲劇です。 全体として見れば、助けを必要としているあまりにも多くの子どもたちを見捨ててきた世界に対する告発と受け取れます。

 

このような子どもたちのために、私たちはとにかく、より良い方向に行動を改めるしかないのです。紛争下の地域にいようと、安全を求めて移動している最中であろうと、支援を必要としているすべての子どもたちを保護する、断固とした対応を行うところから始めなければなりません。このような保護活動は、既存の制度やコミュニティ構造を基盤として、子どもの権利、参画、そして最善の利益を支えるものでなければなりません。これはとても大きな目標です。しかし、私たちは、子どもの保護をめぐる方針、人材、計画に投資することで、これを達成することができます。

 

第一に、子どもとその保護を人道支援活動の中心に据える政策の策定に積極的に取り組まなければなりません。国家が法律や慣例において子どもの最善の利益を優先させることで、これを実現する方法をこの会議の各報告の中で聞くことができました。

 

国際機関や非政府組織(NGO)もまた、子どもの保護を方針や戦略の中心に据える必要があります。ユニセフによる、教育、水と衛生、ヘルスケアをはじめとするすべての分野における支援活動にわたって、子どもの保護を具体的に含める「保護と説明責任の方針(Protection and Accountability Policy)」の導入について、まさに本日この場で発表できることを、嬉しく思います。


地震の影響から逃れ、アレッポ近くにある避難所となった学校に滞在する子どもたち。(シリア、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0791333_Dib地震の影響から逃れ、アレッポ近くにある避難所となった学校に滞在する子どもたち。(シリア、2023年2月撮影) © UNICEF_UN0791333_Dib

第二に、私たちは、ソーシャルワーカー、現場の最前線で支援に従事する人々、地元コミュニティの参画を促進する人々など、子どもの保護に携わる労働力の基幹となる人々に投資しなければなりません。

 

子どもの保護活動に従事する人々は、戦争が子どもたちに与える影響のモニタリングを行う優れた能力と知識をより備えていなければなりません。子どもたちが経験した出来事や置かれている状況は異なるので、保護従事者は、武力紛争の影響を受ける子どもたちのさまざまな個別の脆弱性とニーズに対応する必要があります。また、彼らには、紛争当事者に人口密集地における爆発性兵器の使用を控えるよう要請するといった、子どもを保護するための粘り強い働きかけを実現させる手段も必要です。会議を通して何度も発表されたように、国連のモニタリングと報告の仕組みは、戦争が子どもに与える真の影響について政策立案者に情報を提供し、紛争当事者との関与を促進するために不可欠です。これは非常に慎重を要す作業であり、残念ながら、そのために必要なリソースを動員することもまた大きな困難を伴います。

 

だからこそ、ユニセフは本日、子どもに対する重大な権利侵害のモニタリングを行い、記録、確認し、紛争当事者に働きかけるのに必要な人員を維持するための年間コストの50%を負担することを表明します。また私たちはパートナーと連携して、この重要な取り組みを実行するための追加的な資金を確保するつもりです。


迫撃砲により負傷し、両足を切断したイマドさん(中央)。義肢・理学療法センターで、義足の使い方を学んだり理学療法を受けたりしている。(イエメン、2022年12月撮影) © UNICEF_UN0747990_Al-Azarqi迫撃砲により負傷し、両足を切断したイマドさん(中央)。義肢・理学療法センターで、義足の使い方を学んだり理学療法を受けたりしている。(イエメン、2022年12月撮影) © UNICEF_UN0747990_Al-Azarqi

最後に、私たちは、状況やニーズの変化に対応した質の高い子どもの保護プログラムに投資しなければなりません。これは協働するための、そして子どもやコミュニティにプログラムの設計に参加してもらうためのより良い方法を見つけることを意味します。また、地域の実情に合わせたプログラムを提供することも必要です。

 

子どもの社会復帰は、その良い例です。私たちは、武装勢力や集団から抜け出した何万人もの子どもたちの復帰支援を成功させてきました。しかし、子どもの社会復帰は、子どもにとっても、彼らが戻るコミュニティにとっても、痛みを伴うことが多く、非常に複雑です。復帰プロセスに関わるすべての関係者は、取り組みへのさらなる支援を求めています。

 

ユニセフはこうした声に耳を傾けるとともに、これら活動の欠かせない推進者であるガンバ子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表の呼びかけを支持します。

 

この1年半の間に、ユニセフはパートナーを集め、武装勢力・集団から抜け出した子どもたちを支援する方法を変革することを意図した、子どもの社会復帰に関する新たなグローバル・イニシアティブの土台を築いてきました。ユニセフは、このイニシアティブを立ち上げ、子どもたちが必要とし、また受けるべき支援を提供することを表明します。


小学3年生の時、貧困のため学校を中退せざるを得ず、さらに紛争で故郷からの避難を余儀なくされ、父親に結婚させられそうになった17歳のウードラオゴさん。母親と妹と逃げ出し、北中部地方の都市カヤで暮らしている。(ブルキナファソ、2022年5月撮影) © UNIC小学3年生の時、貧困のため学校を中退せざるを得ず、さらに紛争で故郷からの避難を余儀なくされ、父親に結婚させられそうになった17歳のウードラオゴさん。母親と妹と逃げ出し、北中部地方の都市カヤで暮らしている。(ブルキナファソ、2022年5月撮影) © UNIC

締めくくりにあたり、ユニセフを代表して、武力紛争下での子どもの保護活動に資金を提供してくださっている、本日の共催者を含むドナー・パートナーの方々に感謝したいと思います。皆さまの支援によって、この活動は可能になるのです。私は、最も困難な状況でも子どもたちを守ろうと努力する多くのパートナーに深く感謝しています。

 

子どもたちを守ることは一つの選択です。そして、子どもたちを危険にさらし、紛争に巻き込み、子どもたちのニーズをあからさまに否定することも、また同様に選択なのです。

 

戦争や紛争は、おとなの仕業です。子どもたちは戦争を始めないし、戦争を終わらせる力も持っていません。少なくとも、私たちは、紛争に関与する人々によってもたらされる危険や剥奪から子どもを守るために、あらゆる力を尽くさなければなりません。

 

本日、私はすべての国や組織が、正しい選択をするために、私たちと共に行動することを強く求めます。今、子どもたちを守るために行動しましょう。そうすれば成長したその子どもたちは、後の世代のために、より平和な世界を築くでしょう。

 

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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