ファスネ、渋谷に響いたのは真新しいロッククラシック
LIVE REPORT 2022.01.15PhatSlimNevaehワンマンライブ@東京・渋谷Spotify O-WEST
ロックバンドPhatSlimNevaeh(ファットスリムネヴァ)が1月15日、渋谷Spotify O-WESTでワンマンライブを行った。PhatSlimNevaehはシンガーソングライターである藤川千愛がギターボーカルの“ロク”として昨年9月に始動、12月に1stアルバム「なんだかもう泣けてきて」をリリースした。メンバーはロクのほかに、金子ノブアキ率いるRED ORCAで活動する同道公祐(g)、葛城京太郎(b)、そして元tricotで現在はSUGIZOらのバンドで活動するkomaki(dr)の四人組。2022年初のワンマンとなる同公演ではアコースティックセクションやカバー曲を含む全11曲をパフォーマンスした。
会場BGMが落ち、暗転したステージに現れたのは同道、葛城、komakiの3人。この夜のライブはジャムセッションからスタートする。3人のスリリングなソロバトルにフロアが沸き立つ中、愛器レスポールジュニアを抱えたロクが登場してバンドはオープニングチューンとなる「おままごと」へ。ロクのドスの効いたシャウトは1曲目と思えないトップギア、オーディエンスも大きな拍手でその熱演に応えていく。メンバーの卓越したミュージシャンシップとフロントマンであるロクの圧倒的なボーカル。自分たちのバンドとしてのプロフィールを冒頭5分で完璧なまでにプレゼンテーションした4人だったが、それはまだほんのプロローグ。続くヘヴィファンク「読みかけの漫画」ではファンク、ジャズ、ロックとめくるめくアンサンブルでフロアの腰を揺らし、ストレートなロックチューン「きづかない」ではフロアに拳を突き上げさせ、パフォーマンスによってオーディエンスを縦横に操っていく。
冒頭3曲を駆け抜けたバンドはこの夜最初のMCへ。客席とのハンドサインによる掛け合いで、ライブ初参加の観客が多いことを知った4人。komakiが「結成して4か月ですが、ワンマンはもう4回目。友だちが少ないからワンマンしかやれないわけじゃないですからね」とおどけると、メンバー全員が「なんだかもう泣けてきた」と自らのアルバムタイトルをもじったリアクションで応じるなど、ステージ上はアットホームなフリートークに。サウンドとは裏腹の人懐っこいメンバーのキャラクターでもオーディエンスを引っ張っていく。
一体感を増したフロアにファスネが投入したのは「フィルムカメラ」。メロディにもリフにも一癖を持った”ひねくれロック”ながら、葛城とkomakiによる野性的なリズムセクションを軸に、変化球的な楽曲も剛速球に変えてしまうのが実にファスネらしい。さらにバンドは葛城作曲による「ろくでもない」でさらにディープな濃厚ファンクを叩きつけてセットリストの前半を堂々とまとめあげる。
ライブ中盤、会場が暗転するとステージからはリズム隊が消えてロクと同道の二人に。ロクがアコースティックセクションの開始を告げ、二人は「521km」をギターのみのシンプルな編成でパフォーマンスする。これまで数々の映像作品のテーマソングを吹き込んできたロクの歌をじっくりとオーディエンスに届けた後、葛城とkomakiの二人がステージにカムバック。再び勢ぞろいしたバンドはクリープハイプの楽曲「オレンジ」のカバーへ。komakiもドラムをカホンに替えたコンパクトな編成ながら、サウンドの軸となったのは葛城のグルーヴィなベースプレイ。アコースティックであることが逆に生々しい、剥き出しのアンサンブルによって原曲をバンドのカラーにしっかりと染め上げた。
その後もファンフレンドリーなMCと緊張感に溢れたパフォーマンスを繰り返してファスネは観客を魅了。クラシックロックへのリスペクトを感じさせる「Dive」では同道がスティーヴィー・レイ・ヴォーン直系と称されるブルースプレイを存分に発揮。まるで時を超えて届くようなその音色は今後バンドの躍進とともにさらなる名声を得ていくことだろう。
ライブ終盤、バンドはアンニュイなバラード「なまたまご」をパフォーマンス。ロクの繊細なボーカルと、湿り気のあるアンサンブルでフロアを情感で満たしたあと、本編のラストにバンドはパンクチューン「声」を全身全霊で叩きつけてステージを後にした。
ゼロからロックを歌うために過去のキャリアを封印したボーカル、ロク。現代にタイムスリップした求道的なブルースマン、同道公祐。かつてKenKenにも師事し、次世代のベースヒーローと目される葛城京太郎。そして国内外での華々しいプレイ歴を誇るkomaki。まるでアベンジャーズのようにバックボーンもキャラクターも異なる4人組、PhatSlimNevaehが2022年どのような道を歩んでいくのか。少なくともこの夜、4人が歩いていたのは清々しいまでにロックの王道だった。
撮影:石原汰一
セットリスト
- Jam Session~おままごと
- 読みかけの漫画
- きづかない
- フィルムカメラ
- ろくでもない
- 521km *アコースティック
- オレンジ(カバー) *アコースティック
- Dive
- なまたまご
- ついてない
- 声
EN02. おままごと
【アルバムリリース情報】
PhatSlimNevaeh 1st full album「なんだかもう泣けてきて」
2021年12月22日(水)release
配信リンク https://lnk.to/PhatSlimNevaeh_Naketekite
<初回限定盤> CD+Blu-ray(スリーブケース+スペシャルフォトブック付) ¥4,800(税込)品番:COZP-1858/9
<通常盤> CD only ¥2,200(税込)品番:COCP-41681
<収録曲>
1. ついてない
2. おままごと
3. Dive
4. なまたまご
5. 読みかけの漫画
6. フィルムカメラ
7. ろくでもない
8. きづかない
9. 521km / ロク from PhatSlimNevaeh
10. 声 / ロク from PhatSlimNevaeh
<初回限定盤Blu-ray 収録曲>
-PhatSlimNevaeh 1st Live
1. ついてない
2. フィルムカメラ
3. なまたまご
4. 声
-STUDIO LIVE MV
Dive
詳細リンク https://lit.link/phatslimnevaeh1st
【YouTube】
ロク from PhatSlimNevaeh / 521km [MUSIC VIDEO]
https://youtu.be/LdsXn2Tkq4Y
ロク from PhatSlimNevaeh / 声 [MUSIC VIDEO]
https://youtu.be/UVj3chyGWaA
PhatSlimNevaeh / ついてない [LIVE VIDEO]
https://youtu.be/_3SojhsacLY
PhatSlimNevaeh / おままごと [LIVE VIDEO]
https://youtu.be/KEm_mNg4cfo
Dive(Studio Live)/ PhatSlimNevaeh
https://youtu.be/kkhaEpT22MY
PhatSlimNevaeh 1st full album『なんだかもう泣けてきて』全曲ダイジェスト
https://youtu.be/rSFg0kDZ6kY
【PhatSlimNevaeh (ファットスリムネヴァ) プロフィール】
PhatSlimNevaeh(ファットスリムネヴァ)は、2021年コロナ禍真っ只中に、シンガーソングライターのロクがブルースギタリストの同道公祐(RED ORCA)、ストリートでのパフォーマンス動画が2000万回再生を越えるベーシストの葛城京太郎(RED ORCA)、ジャンルレスに活動するドラマーのkomaki(ex. tricot)に声を掛けて結成されたロックバンド。セッション力に定評のある三人が織りなすジャズやルーツミュージックを取り入れたバンドアンサンブルの上で、ロクが書く影のある歌詞と演奏に負けない芯のある声が耳に残る。
【関連リンク】
オフィシャルサイト:http://www.phatslimnevaeh.jp/
Twitter:https://twitter.com/PhatSlimNevaeh
Instagram: https://www.instagram.com/phatslimnevaeh/
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