「気候変動の定義」若者の半数のみ正解~COP28に合わせ、ユニセフ調査結果発表【プレスリリース】
子どもへの気候教育や保護・投資呼びかけ
【2023年12月7日 ニューヨーク/ドバイ(アラブ首長国連邦)】
本年開催の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に世界のリーダーたちが集まる中、ユニセフ(国連児童基金)とギャラップ社が行った新しい世論調査によると、大方の子どもと若者が気候変動について「聞いたことがある」と答えたものの、それが何であるかを理解しているのはわずか半数でした。
* * *
この世界的な世論調査によると、55カ国(日本を含む)の15歳から24歳までの若者の平均85%が、気候変動について「聞いたことがある」と答えました。しかし、気候変動の定義が「毎年起こる季節的な天候変化」と「人間活動に起因する異常気象の増加や世界の平均気温の上昇」のどちらであるかを選択するよう求められたところ、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が定める後者を正しく選択したのは、わずか50%でした。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、こう述べています。「若者たちは、気候変動の影響に対処するための行動を推進する上で、最も偉大なヒーローたちのひとりに数えられます。彼らは、街頭や会議室で気候変動対策を訴えてきました。すべての子どもたちや若者たちが、自分たちの将来にかかわる危機を理解できるよう、我々おとなはさらに努力する必要があります。COP28において世界のリーダーたちは、子どもや若者がこの問題に関する教育を受け、議論に参加し、今後何十年にもわたって彼らの人生を左右する決定に関与することができるよう、約束しなければなりません」
気候変動に関する知識を持つ若者の割合は、パキスタン(19%)、シエラレオネ(26%)、バングラデシュ(37%)といった、気候変動の影響を最も受けやすい下位中所得国や低所得国で最も低いことが明らかになりました。
ユニセフが2021年に発表した「子どもの気候危機指数」によると、これら3カ国の子どもは、気候変動と環境悪化の影響により、健康、教育、保護に負担がかかり、致命的な病気にさらされるリスクが極めて高いと分類されています。
この世界的な世論調査は、2021年に実施された初回の「変わりゆく子ども時代プロジェクト(原題:The Changing Childhood Project)」に続く調査で、2023年に実施したギャラップ世界世論調査の質問項目のうち、ユニセフのサブセットの質問から得られた結果を分析しています。これは、気候変動と並んで、子どもや若者の生活を形作る2つの長期的な課題、すなわち情報への信頼と、グローバル化した世界における政治的変化に対する制約を明らかにするものです。
情報への信頼に関しては、調査対象の若者の60%がニュースと情報の主要な情報源としてソーシャルメディアを利用しているにもかかわらず、そのようなプラットフォーム上の情報を大いに信頼しているのは23%にすぎないという結果が出ました。実際ソーシャルメディアは、各媒体や専門家の意見等、回答の選択肢として挙げられたすべての情報源の中で、最も信頼されていないものでした。
「変わりゆく子ども時代プロジェクト」の最初の調査結果と同様に、若い回答者の27%が自らを世界市民だと認識しており、これは世論調査を行った他のどの年齢層よりも高く、グローバル化がこの世代にどのような影響を与えているかを反映しています。
この世論調査で明らかになった若い世代のより広範な世界観は、気候危機や信頼の低下、その他の地球規模の課題に対する、国境を越えた連携や協力が進むという希望をもたらすかもしれません。
国連子どもの権利委員会は8月、2022年7月の国連総会で「清潔で健康的かつ持続可能な環境は人権である」との認識が示されたことを受け、子どもの権利を守るための、各国に向けた指針である「一般的意見26」を公表しました。指針では、気候緊急事態、生物多様性の崩壊、汚染のまん延にはっきりと言及し、子どもの命と人生の展望を守るための対応策を概説しています。
196の国・地域が締約している国連子どもの権利条約に基づくこれらの権利がありながら、また気候変動の影響を最も受けやすい人々の中に子どもが含まれるにもかかわらず、気候危機への対応に関する決定において、子どもはほとんど顧みられていません。つまり、子ども特有の脆弱性やニーズ、貢献は見過ごされがちなのです。
ドバイで開催中のCOP28で、ユニセフは世界のリーダーたちに対し、気候教育を含め、子どもの保護と子どもへの投資をしっかりと行うよう決定することを求めています。これには以下が含まれます。
COP28を総括・包括する全体決定(カバー決定)に、子どもをより大きく取り上げるとともに、子どもと気候変動に関する専門家対話を開催すること
グローバル・ストックテイク(GST)に子どもと世代間公平性を組み込むこと
適応に関する世界全体の目標(GGA)の最終決定に子どもと、気候変動にレジリエントな必須サービスとを含めること
「損失と損害」基金と資金拠出の取り決めにつき、基金のガバナンスと意思決定過程に子どもの権利を組み込むことで、子どもに対応したものとなるようにすること
COP28以降も、ユニセフは締約国に対し、子どもの命、健康、ウェルビーイングを守るための行動を取るよう求めていきます。これには、必要不可欠な社会サービスの適応、すべての子どもが環境の擁護者になるためのエンパワーメント、排出量の早急な削減をはじめ持続可能性と気候変動に関する国際合意の履行などが含まれます。
「若者の気候変動に対する運動のパワーを目の当たりにしてきた私は、気候危機をめぐり、さらに多くの若者に情報を提供し、参加してもらうことで、世界が切実に必要としている集団的緊迫感を一気に高めることができると確信しています」と、ラッセル事務局長は付け加えました。
* * *
■ 注記
ユニセフとギャラップ社による2023年国際世論調査の調査対象55カ国は以下の通り: アフガニスタン、アルゼンチン、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ブラジル、カンボジア、カメルーン、コロンビア、コートジボワール、エジプト、エチオピア、フランス、ドイツ、ガーナ、ギリシャ、グアテマラ、インド、インドネシア、イラク、日本、ヨルダン、ケニア、レバノン、マラウイ、マレーシア、マリ、メキシコ、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ナイジェリア、 パキスタン、ペルー、フィリピン、ルーマニア、ロシア連邦、セネガル、シエラレオネ、南アフリカ、韓国、スペイン、タジキスタン、タンザニア、タイ、チュニジア、トルコ、ウガンダ、ウクライナ、英国、米国、ベネズエラ、ベトナム、イエメン、ジンバブエ。
この世論調査は、複数の世代に、世界に対する見方や現代の子ども時代とはどのようなものかを尋ねた初めての調査「変わりゆく子ども時代プロジェクト(The Changing Childhood Project)」の第2弾として実施されたものです。21カ国、2万1,000人を対象とした2021年の調査に続き、2022年から2023年にかけて行われたこの調査は、第1回「変わりゆく子ども時代プロジェクト」の調査対象21カ国を含む55カ国、5万5,000人以上を対象に、ギャラップ世界世論調査(Gallup's World Poll)の一環として行われました。全国を代表するサンプルにより、あらゆる地方とあらゆる所得レベルを網羅した調査がなされ、ユニセフとギャラップ社は、15~24歳、25~39歳、40~64歳、65歳以上の4つの年齢層にわたってデータを分析しました。
日本、英国、スペイン、フランス、韓国、ウクライナ、ギリシャ、ルーマニア、タイは、若年層のサンプル数が少ないため、グローバルの集計には含まれていますが、一部の年齢層の国レベルデータは入手できていません。
55カ国の若者コホート: 全 55 カ国の 15~24 歳のコホートの誤差の中央値(MOE)は±7.6%(95%信頼区間と 50%の割合のテストに基づく、所定のサンプルサイズでの MOE の最大値を算出)。
* * *
■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像