レバノン危機の影響続く 子どものメンタルヘルス、栄養、教育の状況悪化 ユニセフ最新報告書 発表 【プレスリリース】

破壊された親せきの家の前に立つ10歳のジャワードさん。自宅も失ったが、オンラインで勉強を続けている(レバノン、2025年2月13日撮影) © UNICEF/UNI753055/Ibarra Sánchez

【2025年2月28日 ベイルート(レバノン)発】

ユニセフ(国連児童基金)の最新報告書によると、昨年レバノンで起きた戦争は、子どもたちの生活に深刻な打撃を与え、2024年11月に停戦が発効した後もその影響が続いていることが明らかになりました。ユニセフは、今こそ緊急の行動が必要、と訴えています。

この壊滅的な戦争により、子どもたちは家を追われ、必要不可欠なサービスを提供する設備・施設は被害を受け、国中の子どもが身体的・心理的な傷を負いました。

 

ユニセフ・レバノン事務所代表のアキール・アイヤーはこう述べています。「この戦争は子どもたちに甚大な被害をもたらし、彼らの生活のほぼあらゆる側面、すなわち健康、教育、そして究極的には将来にまで影響を及ぼしています。レバノンの子どもたちは、この危機がもたらした長引く影響から回復し、生活が再建され、生き延びていくための支援を緊急に必要としています」

 

ユニセフが2025年1月に実施した調査では、養育者の72%は、戦争中に子どもたちが不安や緊張を感じていたと答え、62%は自身が落ち込んだり悲しんだりしていたと答えました。これらの数字は、戦争前の2023年に調査されたデータを大幅に上回っています。養育者の10人に8人が、停戦以来、子どものメンタルヘルスにいくらか改善が見られると回答していますが、長期間にわたって心的外傷ストレスに耐えてきた子どもたちには、生涯にわたって健康や心理面に影響が残る可能性があります。

廃墟と化した、レバノン南部にある国境沿いの村(レバノン、2025年2月12日撮影) © UNICEF/UNI753032/Ibarra Sánchez

 

またこの調査では、特に空爆が繰り返し行われた人口密集地であるバールベック・ヘルメル県とベカー県において、子どもの栄養状態が深刻な状況にあることが明らかになりました。

 

バールベック・ヘルメル県では、2歳未満の子どもの半数以上(51%)が重度の食の貧困状態にあります。ベカー県では、その割合は45%で、2023年の28%から劇的に増加しています。子どもたちが、8つの主要食品群のうち2つ以下からしか食べ物を摂取していない場合、重度の食の貧困状態にあるとみなされます。

 

この危機が及んでいるのは乳幼児にとどまりません。ベカー県では18歳未満の子どものほぼ半数(49%)が、バールベック・ヘルメル県では3分の1強(34%)が、調査が行われた前日に食べたのは1食のみ、または何も食べていなかったことが分かりました。この数値の全国平均は30%でした。

 

栄養不良と食事の回数の不足は、子どもの発育と認知能力の発達を阻害するとともに、命を脅かす栄養不良に陥るリスクを高めます。

 

12歳のクラウドさんが通っていた学校は、破壊されたままとなっている(レバノン、2025年2月13日撮影) © UNICEF/UNI753022/Ibarra Sánchez

戦争はまた、長年にわたる経済的苦境、教員のストライキ、新型コロナウイルス感染症の影響により、すでに50万人以上の子どもたちが学校に通えていなかったという、レバノンの厳しい教育状況をさらに悪化させました。学校は破壊され、あるいは大きな被害を受け、被害を免れた何百もの学校も、戦争で国内避難民となった130万人の一部を受け入れる避難所として使用されました。

停戦後も、登校する子どもの割合は依然として低いままです。先月の調査時点で、未だ25%以上の子どもが学校に通えていません。戦争中は65%の子どもたちが学校に通えていませんでした。

多くの子どもは、経済的な理由で学校に通うことができません。非就学の子どもがいる家庭の3分の2が、学費、通学交通費、教材費が高額であることを理由に挙げており、その割合は2023年から倍増しています。

 

また、この調査では、以下のことも明らかになりました。

  • 45%の世帯が保健医療にかかる出費を削らざるを得なくなり、30%の世帯が生活必需品を手に入れるために教育への支出を切り詰めたりせざるを得なくなった

  • 31%の世帯が、十分な飲料水を得ることができなかった

  • 33%の世帯が、子どもが必要とする医薬品を入手できなかった

  • 22%の世帯は、冬の暖房に必要な機器や燃料を一切持っていなかった

レバノンは、戦争と長年にわたる政治・経済の混乱による惨状から復興するために、大きな課題に直面しています。ユニセフは戦時下でも継続して子どもたちを支援してきており、今後も引き続き、復興と再建の取り組みを支援していきます。

 

「このデータは、今すぐ行動を起こす必要があることを明確に示しています。レバノンが必要な支援を受けて、重要なインフラやサービスを復旧できるようにし、子どもたちが希望を持てる未来をつくらなければなりません。レバノン史上、最も脆弱で決定的なこの時期に、私たちは手をこまねいているわけにはいきません。すべての当事者に対し、停戦の条件に従い、国際社会と協力して平和を維持し、子どもたちの明るい未来を確保するよう求めます。また、レバノンの新政権に対し、改革と復興の最優先課題として、子どもたちの権利とニーズに取り組むよう求めます」(アイヤー代表)

ユニセフは、子どもたちが遊び、学び、希望を取り戻せるように、ECD(早期幼児開発)キット[NM1] をレバノンに発送しました(デンマーク、2025年1月7日撮影) © UNICEF/UNI729249/Asamoah

 

危機の複雑性と子どもへの長期的な影響を踏まえると、レバノンにとって非常に重要なこの局面で、持続的な支援のための緊急行動が必要です。ユニセフは国際社会に対し、レバノンの子どもたちを支え、また同国全土の240万人に命を守る支援を提供するユニセフの2025年の人道支援計画(6億5,820万米ドル相当)への資金拠出を呼び掛けています。

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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