ガザ、栄養不良の子ども急増 5月には5,000人以上が治療を受ける ユニセフ地域事務所代表、状況は「人為的だ」 【プレスリリース】

【2025年6月19日 アンマン(ヨルダン)発】
ガザ地区では栄養不良の子どもが驚くべき速度で増えており、5月だけでも生後6カ月から5歳までの5,119人の子どもが急性栄養不良の治療を受けた、とユニセフ(国連児童基金)は警鐘を鳴らしています。
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ユニセフが支援するガザ地区各地の栄養センターから寄せられたデータによると、この数字は2025 年 4 月に治療を受けた 3,444 人から 50% 近くの増加を示し、停戦が実施されガザ地区に多量の支援物資が搬入されていた 2 月と比べると150% の増加となります。
5月に治療を受けた5,119人のうち、636人は最も致命的な栄養不良の形態である重度急性栄養不良(SAM)に陥っています。これらの子どもは、生き延びるために、継続的な管理下の治療、安全な水、医療を必要としていますが、そのすべてが今のガザでは日に日に足りなくなっています。重度急性栄養不良の子どもの数は、2月以来146%も急増しています。
ユニセフの中東・北アフリカ事務所代表、エドゥアルド・ベイグベデルは次のように述べています。「今年の初めから 5 月末までのわずか 150 日間で、1万6,736 人、つまり1 日平均 112 人の子どもが、ガザ地区で栄養不良の治療を受けました。これらの事例のすべてが、予防可能でした。その子たちが切実に必要としている食料、水、栄養治療が、彼らに届くことが阻止されています。これは、命を奪う人為的な決定です。イスラエルは、あらゆる境界検問所を通じて命を守る支援物資の大規模な搬入を直ちに認める必要があります」

この状況がすぐに改善されなければ、急性栄養不良の事例は今後数週間で増え続け、紛争開始以来の最高水準に達する恐れがある、とユニセフは警鐘を鳴らしています。20 カ月前には、この地域の子どもたちに消耗症はまったく見られませんでした。

ユニセフは、この 3 週間に、栄養不良の予防と治療のために何百パレット分もの物資を届けましたが、その量は、膨大なニーズとより広範な状況を考慮すると、まったくもって不十分です。急性栄養不良に苦しむ子どもたちに欠かせない、すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)の在庫も、著しく不足しています。
この紛争は、ガザ地区内の水、衛生、保健医療に関する重要な設備や制度を損壊させ、重度栄養不良の患者を治療することも困難になっています。避難命令や絶え間ない爆撃により、236カ所あった治療センターのうち127カ所しか機能していません。
その一方で、国連諸機関は、燃料が今にも底を突く事態に直面しています。停戦が終わって以降、人道支援団体などは、ガザへの新たな燃料の搬入や、ガザ内の既存の燃料へのアクセスを繰り返し拒否されています。
これは、子どもたちとその家族に直接的な影響を及ぼします。なぜなら、燃料がなければ、水の製造や保健医療などの重要なサービスを停止するか、安全でない水を使用せざるを得なくなるからです。すでに、急性水様性下痢症がガザで報告されている疾病の 4 分の 1を占めており、感染力が高く、急激に死に至る A 型肝炎の疑いのある症例も報告されています。今後数週間で気温が上昇すると、この状況はさらに悪化する見通しです。
栄養不良と疾病は、そのまま治療せずに放置すると、悪循環を生み出します。栄養不良の子どもは、急性下痢症などの重篤な疾病にかかりやすいことがわかっています。また、急性かつ長期にわたる下痢症は、子どもの健康状態と栄養不良を著しく悪化させ、命を落とす危険性を高めます。
「これは緊急の警鐘です。飢餓の深刻化、栄養不良の増加、疾病のまん延、水の枯渇、そして究極的には、完全に予防可能な子どもたちの死の連鎖を食い止めるために、即座に協調した行動が必要です。人道支援物資および商用物資は、利用可能なすべての検問所から持ち込みが認められ、それらを必要とする家族たちに、彼らがどこにいようと、迅速かつ安全に、そして尊厳をもって届けられなければなりません」(ベイグベデル代表)
ユニセフは、紛争のすべての当事者に対し、暴力行為の停止、子どもを含む民間人の保護、国際人道法および国際人権法の遵守、人道支援の即時提供、および人質の解放をあらためて強く求めます。
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■ 注記
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2023年10月以降、栄養不良の子どもの治療者数が今回より多かったのは、5,472人が治療プログラムに登録された2024年12月だけでした。同月には、1年以上も残酷な戦闘が休むことなく続き、ガザ地区、とりわけガザ地区北部への支援物資の搬入が大幅に遮断されたため、栄養不良が劇的に悪化しました。
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2025 年に治療を受けた子どもの数が最も少なかったのは 2 月の2,068 人で、これは停戦が実施され、ガザ地区に大量の支援物資が搬入された時期でした。2025 年 2 月から 5 月までの 3カ月間で、治療を受けた子どもの数は 148% 増加しました。
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ユニセフの最近の市場調査によると、子どもの食事の多様性に必要な食品のほとんどは、市場に出回っていないか、あるいは非常に高価です。肉や乳製品など必須の食品の多くは、 2カ月間、完全に品切れの状態が続いています。食事の多様性が欠如すると、栄養摂取が損なわれ、急性栄養不良やそれに関連する合併症に陥るリスクが高まります。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )
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