命を守る「栄養治療食」、誕生から30年 子どもの重度消耗症の回復率は90% 紛争や資金不足に揺るがない供給確保が重要 【プレスリリース】

【2026年5月5日 ニューヨーク発】
消耗症に苦しむ子どもの命を守る治療法の一つ、「すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)」が1996年に開発されてから30年となる中、ユニセフ(国連児童基金)はRUTFの成果を振り返り、栄養治療をさらに拡充させていく必要があることを訴えました。
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過去30年間、栄養強化したピーナッツペーストが入った小袋は、5歳未満の子どもにとって、最も致死性の高い栄養不良の形態である「重度の消耗症(重度の急性栄養不良)」から回復するための、最も強力な手段の一つになりました。現在、世界中で1,200万人以上の子どもが重度の消耗症に苦しんでいます。紛争、気候ショック、資金面の制約が深刻化する中、「すぐに食べられる栄養治療食(RUTF=Ready-to-Use Therapeutic Food)」の予測可能かつ途切れのない供給を確保することは、これまで以上に重要となっています。

1996年に初めて開発されたRUTFは、子どもの栄養治療を一変させました。合併症のない重度の消耗症の子どもが、RUTFによって自宅で治療を受けられるようになって入院への依存が減り、家族の負担が軽減し、二次感染のリスクも低下しました。
今日、RUTFは、子どもの消耗症治療をコミュニティで行う取り組みの一環として、命を守るケアと治療の提供方法を大きく変えました。その結果、世界中で予防可能な子どもの死亡数が過去最低水準にまで減少することにも貢献しています。この30年という節目は公衆衛生における大きな前進を示す一方で、行動を促す呼び掛けるものでもあります。供給の混乱に耐えうる体制を築き、コストを削減し、治療を必要とするすべての子どもが治療用食品を途切れることなく利用できるように、治療用ミルクを含むすべての栄養治療を拡充しなければなりません。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「この小さくとも強力な治療食の小袋は、重度の栄養不良に苦しむ子どもたちの治療法を根本から変えました。私はRUTFによる治療を受けた消耗症の子どもたちが、再び生き生きとしていく姿を目の当たりにしてきました。この治療食は、家族自身の手で命を守る治療を行うことを可能にしました。豊かな世界において、栄養不良によって子どもが命を落とすようなことがあってはなりません」。
子どもの栄養をめぐる状況と「すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)」の概要
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重度の消耗症を患う子どもたちは、身長に対して痩せすぎており、免疫力が落ちていて、子どもがよくかかる通常の疾患でも命を落とす可能性があります。また、十分に栄養を摂っている子どもと比較して、死亡リスクは12倍に高まります。
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現在、4,280万人の子どもが消耗症の状態にあり、そのうち1,220万人は最も致死性の高い重度の消耗症に陥っています。
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重度の急性栄養不良に苦しむ子どもたちの回復率は90%近くに達しており、RUTFは非常に高い効果を示しています。
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2025年、ユニセフは世界中で2億5,500万人の子どもを対象に消耗症の検査を実施し、900万人以上に治療を行いました。
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ピーナッツ、脱脂粉乳、油、砂糖を原料とし、必須ビタミンやミネラルが含まれるRUTFは、重度の消耗症を患う生後6カ月から59カ月までの子どもに与えられる栄養治療食です。
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RUTFの92グラムの小袋1袋のエネルギー量は500キロカロリーで、重度の栄養不良状態にある子どもが治療をしていく中で体重を増やし、免疫力を高めるのに役立ちます。クリーミーな食感と、ほのかに甘く風味のある味わいにより、子どもにとって食べやすくなっています。
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RUTFが濃厚な油性ピーナッツペーストであるのには理由があります。水分を一切含まないため、細菌の繁殖を抑えます。この製法により、湿度の高い環境を含め、いかなる環境下でも治療食の安全性を保つことができ、冷蔵保存も不要です。保存可能期間は24カ月です。
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現在も、RUTFは子どもの消耗症に対して世界保健機関(WHO)が推奨する唯一の外来治療です。
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ユニセフは、世界で最も多くRUTFを調達している機関です。2003年から2025年の間に、世界全体で計87億袋のRUTFを調達・配布し、何百万人もの子どもたちの回復を支えました。
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2023年、ユニセフは新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に続いた世界的な栄養危機に対応し、約11億袋のRUTFを子どもたちに届けました。これは年間として過去最多の数量でした。
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エチオピアは、ユニセフが調達したRUTFを最も多く受け取っている国です。2003年から2025年にかけて、RUTF 16億袋(2億9,600万米ドル相当)がエチオピアに届けられました。同国では、毎年少なくとも50万人の子どもが重度の消耗症の治療を受けています。
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RUTF1箱(150袋入り)は、経過観察やカウンセリングと併せて、1人の子どもが回復するまでの6~8週間の治療に十分な量です。
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RUTFは、官民連携が成功した事例の一つです。ユニセフは世界各地にある21社の供給元からRUTFを調達しており、そのうち18社は、子どもの消耗症の発生率が高い国々、またはその周辺国に拠点を置いています。他国にも供給できる体制を備えた、こうした国々での製造は、特に世界的なサプライチェーンの混乱に直面した場合に、栄養不良の危機に迅速に対応するために不可欠です。
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■ RUTF関連の動画(日本語字幕付き)は、以下でご覧いただけます。
「栄養治療食~子どもたちの命を守る希望の袋~」
「栄養治療食の生産現地化で実現できることとは?」
■ ユニセフ、世界保健機関(WHO)、世界食糧計画(WFP)、栄養に関する常設委員会(SCN)による 「Community-Based Management of Severe Acute Malnutrition」(仮題:重度の急性栄養不良のコミュニティを基盤とした管理)に関する2007年の共同声明(英語)は以下でご覧いただけます。
■ 「ユニセフ栄養戦略 2020–2030:すべての子どもに栄養を」(英語)は以下でご覧いただけます。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。https://www.unicef.org
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。https://www.unicef.or.jp
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