ユニセフ「レポートカード20」 先進国の子どものウェルビーイング 経済格差の大きい国では過体重の子どもが1.7倍 日本、学力格差は最小水準も経済格差は43 カ国中34位 【プレスリリース】

【2026年5月12日 フィレンツェ(イタリア)/東京発】
ユニセフ(国連児童基金)のイノチェンティ研究所が本日発表した分析によると、先進国における経済格差は、子どもの身体的健康や学力水準の低下と関連していることが明らかになりました。文末に、日本の分析結果の概要を、阿部彩・東京都立大学教授のコメントと共に掲載しています。
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ユニセフ・イノチェンティ研究所の報告書「レポートカード20:子どもをめぐる経済格差―すべての子どもに平等なチャンスはあるか (原題:Unequal Chances – Children and economic inequality)」は、経済協力開発機構(OECD)加盟国および高所得国の計44カ国における経済格差と子どものウェルビーイングとの関連性を検証しており、これらの国々の大半において、所得格差と子どもの貧困率が依然として高い水準にとどまっていることが明らかになりました。対象国全体の平均では、所得層の上位20%の世帯の収入は、下位20%の世帯の5倍以上となっています。また、子どものほぼ5人に1人が相対的貧困の状態にあり、すなわち基本的なニーズが満たされていない可能性があります。


イノチェンティ研究所のボ・ヴィクトル・ニールンド所長は次のように述べています。「格差は、子どもがどのように学び、何を食べ、そして人生についてどのように感じるかに大きく影響します。格差がもたらす最悪の影響を抑えるためには、最も厳しい状況に置かれた子どもたちの健康、栄養、教育への投資を早急に強化する必要があります」。
報告書によると、経済格差の大きさと、子どもの健康状態との間に明確な相関関係が見られます。格差が非常に大きい国々で育つ子どもは、格差がきわめて小さい国々で育つ子どもに比べて、過体重になる割合が1.7倍高く、これは食事の質の低さや食事を取れない状況を反映している可能性があります。
報告書はまた、欧州連合(EU)加盟国のデータを引用し、所得層の下位20%の世帯の子どものうち「健康状態が非常に良好」なのは58%にとどまる一方、上位20%では73%に上ると示しています。
報告書はさらに、経済格差と学力との関連性について、社会経済的背景の格差が大きい国ほど、全体として学力テストの平均成績が低い傾向にあると指摘しています。格差が最も大きい国々の子どもは、読解力および数学の基礎的な能力を身につけないまま学校を卒業する割合が65%であるのに対し、格差が最も小さい国々の子どもでは40%にとどまっています。

こうした格差は一つの国の中にも同様に存在しており、各国においても、社会経済的背景の低い子どもと高い子どもの学力テストの結果には大きな差が見られます。平均して、上位20%の家庭の15歳の子どものうち読解力および数学の基礎的な能力を身につけている割合は83%であるのに対し、下位20%の家庭では42%にとどまっています。
本報告書は、格差が子どものウェルビーイングに及ぼす影響を最小限に抑えるため、特に子どもの貧困の削減を含め、政府や関係者がいくつかの政策分野で行動を起こすよう求めています。具体的な行動としては、以下が挙げられます。
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家族手当や児童手当、最低賃金を含むセーフティネットを強化し、いかなる子どもも貧困の中で育つことがないようにすること。
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公営住宅や住宅補助の提供、インフラ整備、緑地やレジャー施設などの公共施設への投資を通じて、困難な状況にあるコミュニティを支援すること。
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子どもの家庭の経済的背景にかかわらず、学校に充分な教職員を配備し、設備を確保するとともに、子どもたちに健康的で栄養価の高い学校給食を提供することで、教育における格差の是正を図ること。
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格差が子ども自身やその家族にどのような影響を及ぼしているかについて、子どもたちの視点をよりよく理解し、ウェルビーイングを促進する解決策を策定するために、彼らと対話し、意見を聞き、取り入れること。
日本の結果について
本報告書に掲載された比較可能なデータを持つ国々の中で、日本は所得格差の指標において43カ国中34位と先進国のなかでも格差は比較的大きく、所得層の上位20%の世帯所得は下位20%の世帯の6.35倍となっています。また子どもの貧困については16位で、子どもの貧困率は16.7%となっています。
他方、学力格差の面では、最富裕層と最貧困層の子どもの間に見られる読解力および数学の基礎的な能力の差が最も小さい国となっています。具体的には、上位20%の世帯の子どもの90.9%が読解力および数学の基礎的な能力を身につけているのに対し、下位20%の世帯の子どもでは69.7%にとどまっています。
日本の結果について、東京都立大学の阿部彩教授は次のようにコメントしています。「現在、日本は、経済格差の影響が比較的に子どもに及んでいない国であるといえます。しかしながら、格差の影響は時間差をもって現れる可能性もあります。子どもの世界に目を向けると、子ども間の格差は拡大傾向にあると考えられます」。詳しい解説はこちら:https://bit.ly/3QTX0IR
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■ 注記
「レポートカード20:子どもをめぐる経済格差 ーすべての子どもに平等なチャンスはあるか(原題:Unequal Chances – Children and economic inequality)」は、高所得国に分類される国々および/またはOECD加盟国の計44カ国において、経済格差が子どもの生活に及ぼす潜在的な影響に関するデータを提供しています(注:本報告書に含まれる一部の指標については、44カ国すべてのデータが提示されているわけではありません)。
所得格差に関するデータは、等価可処分所得分布における上位20%に位置する人と下位80%の比率を反映しており、OECDの格差に関するデータベース、ユーロスタット(EU統計局)データベース、およびユニセフによる算出に基づいています。
子どもの貧困に関するデータは、等価可処分所得が各国の中央値の60%未満の世帯に暮らす子ども(0~17歳)の割合に基づいており、その出典はユーロスタットの欧州所得・生活状況調査(EU-SILC)、OECD所得分布データベース、および各国の統計局です。
本報告書は、子どものウェルビーイングをめぐる以下の3つの主要な側面に関するデータを提供しています。
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精神的幸福度:OECD が15歳の子どもを対象に行う学習到達度調査「PISA」の 2022年の結果における生活満足度、および世界保健機関(WHO)の 死亡率データベース(Mortality Database)における若者の自殺の2つのデータ
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身体的健康:国連の子どもの死亡率推計に関する機関間グループ(UN IGME)の子どもの死亡率、および非感染性疾患の危険因子に関する国際共同疫学研究グループ(NCD-RisC)の過体重・肥満の2つのデータ
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スキル:OECD PISA 2022の学力と社会的スキルの2つのデータ
本報告書では、身体的健康、精神的幸福度、およびスキルの指標に基づき、OECD加盟国および高所得国計37カ国における子どもの状況に関する順位表を更新しています。オランダ、デンマーク、フランスが引き続き上位を占めています。
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■ レポートカード20の概要はこちらでご覧いただけます。また同ページから報告書全文をダウンロードしていただけます。
https://www.unicef.org/innocenti/reports/report-card-20
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。https://www.unicef.org
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。https://www.unicef.or.jp
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