戦争5年目のウクライナ 開始以降4,200超の教育施設が被害 生徒の学習到達度にも深刻な影響 【プレスリリース】

公益財団法人日本ユニセフ協会

2026年7月の攻撃で深刻な被害を受けた、スーミ州の学校と幼稚園(ウクライナ、2026年9月15日撮影)© UNICEF Video/UN0924272 

【2026年9月15日 スーミ(ウクライナ)発】

ユニセフ(国連児童基金)副広報官のリカルド・ピレスは、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見にウクライナのスーミからオンラインで参加し、戦争がウクライナの子どもの教育に及ぼす影響について、以下のとおり報告しました。

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ウクライナでの戦争が2022年2月に始まってから5年目に入っており、子どもたちの教育を受ける権利は脅かされ続けています。その影響は、この世代の子どもたちの将来を大きく左右する深刻なものとなっています。

 

9月1日に新しい学年度が始まってわずか15日間のうちに、ウクライナ全土で1,000回を超える空襲警報が発せられました。この時期としては戦争開始以降で最も多く、前年同期のほぼ2倍に上ります。

 

これは1日当たり100回超、1時間当たり少なくとも4回警報が鳴ったことに相当します。今私がいるスーミは、ミコライウやオデーサと並び、今年最も多くの空襲を受けた3つの地域の一つです。その警報の音は、誰よりも子どもたちの耳に大きく重く鳴り響いているのです。

 

チェルニヒウ州の学校に整備された避難シェルターの前に立つ校長。ユニセフの支援により、停電時や空襲警報下でも学習を続けられる環境が整えられている(ウクライナ、2026年8月21日撮影)© UNICEF/UN0920737/Filippov

私は今、前線近くで暮らす子どもたちのためにユニセフが設置を支援した、地下シェルターを学校に転用した22の施設のうちの一つにいます。この施設では最大300人の子どもを受け入れることができます。ここスーミ州では、教育施設のほぼ半数が紛争によって損傷を受けたり破壊されたりしています。本来、子どもたちが学び、守られる場であるはずの学校が、がれきと化した光景を見るのは胸が痛みます。

ウクライナ全土でも、状況は同様に深刻です。政府の推計によると、今年1月から8月の間にさらに何百もの教育施設が被害を受け、戦争開始以降、ウクライナ国内での被害総数は4,200施設を超えています。ただ学校に通いたいという当たり前の希望さえも、戦争によって阻まれ続けている子どもたちは、終わりの見えないトラウマの連鎖に苦しめられています。

 

子どもたちが払わされている代償は、壊れた壁や心の傷、けたたましいサイレンの音だけでは測りきれません。

 

先週公表された最新の経済開発協力機構(OECD) の生徒の学習到達度調査(PISA)の結果によると、調査を受けたウクライナの15歳の子どもたちのうち相当数が、さらに学びを進めていく上で必要な習熟レベルにまだ達していません。その多くは、過去5年間の学校教育を戦闘地域で受けてきた子どもたちです。これにより、進学や技術職への就労、さらに成人後の全面的な社会参画といった将来の選択肢が狭められてしまいます。

 

調査結果では、科学的リテラシーでは約3分の1、数学的リテラシーと読解力ではおよそ半数の生徒が、基礎的な習熟レベルに達していませんでした。OECD平均と比べると、読解では約2年分、数学と科学では約1年半分の学習差に匹敵します。

 

同様に、56%の生徒が、調査対象の数学、読解、科学のうち少なくとも1分野で基礎的な習熟レベルに達しておらず、10人中3人近く(29%)は、これら3分野のいずれにおいても基礎的な習熟レベルに達していませんでした。

 

学校長を対象にした調査によると、ウクライナの生徒の61%が学習教材や備品が不足している学校に通っており、54%はデジタル学習のための資源が十分でない学校に通っています。安全上の制約により、このデータはウクライナ国内17の区域に限定されています。そのため、前線に近い学校では教育に必要な資源がさらに不足していると考えられます。

 

戦争が続く中にあっても、2022年から2025年にかけての結果がほぼ横ばいで推移していることからわかるとおり、ウクライナは教育システムの維持において驚くべきレジリエンス(しなやかな回復力)を示してきました。しかし、私たちが繰り返し訴えているように、ウクライナの子どもが本来あるべき形で学ぶことを可能にするには平和が必要なのです。

ザポリッジャ州の学校で、新たに整備された地下シェルター内の教室で新学期初日を迎えた子どもたち(ウクライナ、2026年9月1日撮影)© UNICEF/UN0923668/Tistechok 

5年目に入っているこの戦争において、学校は子どもたちが、友だちや先生と過ごし、日々の生活リズムを保ち、安心感を得られ、数少ない日常を感じられる場所の一つです。これは非常に重要なことです。なぜなら、この戦争は子どもたちに計り知れないほどの心理的負担を強いているからです。

 

9歳のサブリナは昨日、地上は危険だけれど、クラスメートと一緒にいられることがどれほど恋しいかを私に話してくれました。「またみんなと一緒になって、オンラインではなく対面授業を受けられるのはとてもうれしい。以前のように散歩をしたり外で遊んだりしたいけど、今は危険なので一日中室内にいるの」と、前向きな出来事として語っていました。

 

サブリナのような子どもたちは、何年もの間、爆発音で目を覚まし、シェルターへ駆け込み、家から避難させられ、友達と離ればなれになり、次の攻撃がいつ来るのかと不安を抱き続けてきました。私たちは、子どもたちが眠ること、集中すること、感情をコントロールすることに苦労している姿を目にしています。子どもたちは、そうした恐怖を教室のドアの外に置いてくることなどできません。

 

空襲警報のサイレンが鳴れば、数学の授業が中断されます。子どもたちは机を離れてシェルターに避難し、警報解除を待ちます。教室に戻り、再び集中しようとしたところに、またサイレンが鳴るのです。繰り返しになりますが、子どもたちも親たちも、学ぶためにできる限りのことをしています。しかし、戦争がもたらす影響は明白であり、それは本能的な恐怖を呼び起こすものなのです。

 

こうした状況にもかかわらず、保護者や政府、そして人道支援機関の努力の成果として、この9月には420万人近い子どもが学びの場に戻りました。そのうち71万2,000人超は就学前の子どもです。また、36万6,000人を超える教員が教室に戻りました。

 

空襲の対象地域や頻度が変化・激化する流動的な状況において、多くの子どもたちは引き続き、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型や完全オンライン型の学習に頼らざるをえません。就学前児童のほぼ半数が、通常の就学前教育や保育を受けられず、生涯にわたる学びの土台となるスキルを身につける機会を失っています。

故郷のヘルソン州から避難してきた13歳のダニーロさん。ドニプロペトロウスク州の学校に新たに整備された避難シェルター内の教室で、9月から対面授業を受ける(ウクライナ、2026年8月19日撮影)© UNICEF/UN0921373/Filippov 

そして今、新たな脅威が迫っています。それは冬です。インフラへの攻撃があれば、電力や暖房の供給が途絶えることになります。昨年は、暖房、電気、水がない状態に置かれた約200万人の子どもが、過酷な冬の寒さに苦しみました。停電はオンライン授業にも支障をきたし、スーミなどの最前線地域が最も深刻な影響を受けました。

 

ユニセフの2026~2027年の冬季支援計画は、54万人の子どもを含む300万人を支援することを目指しています。これには、暖房システムの修理や学校への非常用電源の提供が含まれます。これにより、37万5,000人の生徒が冬の間も対面授業で学び続けられるようになります。また、パートナー団体と連携し、学校内のシェルターの改修、攻撃で損傷した教育施設の修復、学習の遅れを取り戻すための支援、そしてメンタルヘルスケアおよび心理社会的支援の提供も行っています。

 

ユニセフは子どもたちが学び続けられるよう、全力を尽くしています。しかし、どれだけ支援を行っても、攻撃が続く限り、それが教育に及ぼす影響から子どもたちを守り切ることはできません。

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■    注記

OECDの生徒の学習到達度調査(PISA)は、15歳の生徒の知識、技能、勉強に対する意識や態度を評価するものです。ウクライナは2018年に初めてPISAに参加しました。2025年のPISAでは、ウクライナ国内の17の区域が調査対象となりましたが、次の10区域は対象外となりました。ドニプロペトロウスク州、ドネツク州、ハルキウ州、ルハンスク州、ザポリッジャ州、ヘルソン州、ミコライウ州、スーミ州、クリミア自治共和国、およびセヴァストーポリ市。

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国連児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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