ネパール土石流災害 「温暖化の代償を背負う子どもたち」 ユニセフ広報官 、被災地から報告 【プレスリリース】

【2026年10月9日 カトマンズ(ネパール)発】
ユニセフ(国連児童基金)広報官のジェームズ・エルダーは、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見にカトマンズからオンラインで参加し、8月に大規模な土石流に見舞われたネパールの現状について報告しました。以下はその概要です。
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8月下旬、ヒマラヤ山脈で大量の氷河の塊と岩盤が崩れ落ちたことをきっかけに発生した土石流により、ネパールでは3万2,000人を超える子どもが被害を受けています。町や村のあちこちは、まるで戦場のような様相を呈しています。科学者たちは、温暖化によるヒマラヤの気温上昇に伴い、このような災害が発生する可能性がより高まっていると警告しています。そして、温暖化の原因にほとんど関与していない国々が、温暖化の代償を負わざるを得ない状況に置かれているのです。
84人の子どもの死亡が確認されています。また、なお5,285人が行方不明となっており、この数字は残念ながらさらに増えることになるでしょう。
そして災害発生から6週間が経った今もなお、悲しみや苦しみは続いています。16歳のサハラさんについてお話しします。彼女とは今週火曜日に職業訓練センターで会いました。母親が洪水に巻き込まれ、亡くなったそうです。彼女は涙ながらに「お母さんがいないのはつらいです」と言いました。

サハラさんに、気候変動がこの災害の一因となったと思うか尋ねました。彼女は、学校で身近な環境を大切にすることを学んでいると答えました。彼女の住む地域社会も、周囲の自然を守るためにできる限りのことをしています。サハラさん自身に、この危機を引き起こした責任は何らありません。それにもかかわらず、彼女のような子どもたちは、教育の中断や安全の喪失、大切な人を失うことなど、その影響を不釣り合いなほど大きく受けています。
科学者たちは、災害を個別に気候変動のせいだと断定することには慎重であり、それは当然のことでしょう。しかし、その背景にある条件については十分に解明されています。ヒマラヤ山脈の温暖化の速度は世界平均のおよそ2倍に達しています。氷河は縮小し、永久凍土は融解し、山の斜面を支えてきた氷や凍結した岩盤は弱くなっています。
これはネパールだけの問題ではありません。ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域には、極地を除けば地球上のどこよりも多くの氷が蓄えられています。この山岳地帯には2億4,000万人が暮らしています。さらに、下流には16億5,000万人が住んでおり、この氷が源となる川が彼らの生活を支えています。つまり、合わせると20億人近く、つまり全人類の約4分の1に当たります。
いま、このシステムの均衡が崩れつつあります。氷河の融解が加速することで、現在は水量が増え、洪水の危険性が高まっていますが、将来的に氷河が消失すれば深刻な水不足が生じることになります。これらはいずれも地球の温暖化によって引き起こされているのです。
ネパールが排出する温室効果ガスは世界全体のわずか0.1%程度にすぎません。それにもかかわらず、気候危機に対して最も責任のない子どもたちが、その最も深刻な影響に直面している人々の一角を占めています。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国は、損失と損害を回避し、最小化し、対処するための資金と支援を提供することに合意しています。ネパールなどの国々にとって、こうした約束は、被災した地域社会に迅速に届く実効ある支援へと結び付くものでなければなりません。またその資金は、返済不要で供与されることを基本とし、利用しやすく、子どもたちのニーズや権利に配慮したものでなければなりません。

その資金によって今、何ができるのでしょうか。シュシラさんと夫のジバンさんの話をしましょう。
ジバンさんは耳が聞こえず、話すこともできません。シュシラさんは左脚の一部を失っています。二人は力を合わせて仕立て屋と喫茶店の2つの事業を始め、3人の子どもを学校に通わせ学費も賄っていました。洪水前の2店舗の写真を見ましたが、明るく、心地よく、気配りに満ちていました。そして事業は成功しており、自分たちの住まいも購入していました。
しかし洪水が襲いました。自宅は2メートルを超える浸水被害を受け、2つの事業も失いました。二人は着の身着のまま逃げ出し、ほかには何も持ち出せませんでした。シュシラさんは「逃げることができなかった方が、かえって良かったのかもしれません」と言いました。
これこそが、世界が行動を取らなかったことによってもたらされた苦悩とトラウマ(心的外傷)なのです。そして気候資金とは、このような家族が再び人生を立て直すためにあるのです。
ユニセフはシュシラさん一家に現金給付支援を行いました。さまざまな必要に迫られる中で、二人は真っ先に何に使ったのでしょうか?―子どもたちのために、教科書や文房具、衣類を購入したのです。
もちろん、一度限りの給付で問題が解決するわけではありません。この家族、そして同じような境遇に置かれた何万もの家族に対し、継続的な現金給付支援が不可欠です。
人道的現金給付は、ユニセフの冬季支援の一環です。毛布や新生児用キット、防寒着も配布していますが、現金給付があれば、人々はこの冬に何を最も必要としているかを自ら決める尊厳を保つことができます。家賃の支払いかもしれませんし、娘を学校に通わせ続けるための費用かもしれません。ガスや燃料の購入費、あるいは小規模な商店や事業を再開するための元手かもしれません。そして冬はすぐそこまで来ています。
最後にはっきりさせておきたいことがあります。この災害は、洪水で水かさが増した時に始まったのではありません。洪水が起こる以前から、ネパールでは50万人を超える子どもが、少なくとも3つの気候・環境ハザードが重なる状況にさらされていました。
このような災害は、子どもたちに3つの面で被害をもたらします。第一に、必要不可欠なサービスの提供が途絶します。今回の洪水だけでも、23校の学校、7カ所の保健施設、64の給水設備が損傷または破壊の被害を受けました。第二に、心に深い傷を残します。そのため、心理社会的支援は食料や水、避難場所と同じくらい重要です。第三に、世代全体の将来を危険にさらします。子どもたちが学習の機会を失います。そして、若い女性の28%がすでに児童婚を経験しているこの国では、女の子が児童婚を強いられるリスクもさらに高まります。
最後に明るい話題もあります。政府、地域社会、そして国連による対応は包括的に進められています。大量の土石流が橋を押し流した後、わずか数週間で新たな橋が建設されているのを目にしました。ユニセフとパートナーは、数週間のうちに6万8,000人を超える人々にコレラワクチンを接種し、2万7,000人への給水を再開し、何千人もの子どもが学びや遊びの場に戻れるよう支援してきました。また、親や養育者とはぐれた51人の子どもを家族の元へ戻すことができました。

学校のテントで笑顔を見せる子どもたちの姿や、乳児・新生児キットを受け取った母親たちの安堵の表情、そして放課後に心理的支援を受ける子どもたちの様子を目の当たりにして、ユニセフの支援の成果を見てとることができました。しかし、世界が気候リスクの軽減に向けた行動を取らなければ、私たちユニセフは次の洪水や次の土砂崩れのたびに再び同じ谷あいに戻り、またしても子どもたちが最も大きな代償を払っている現実を目の当たりにすることになるでしょう。
それはネパールだけでなく、アジア太平洋地域、そして世界各地においても当てはまることなのです。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国連児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )
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