小学館の国語辞典『大辞泉』が選ぶ今年の新語は【ホワイト案件】!
株式会社小学館の国語辞典『大辞泉』編集部は、2024年5月18日~11月15日に開催した「大辞泉が選ぶ新語大賞2024」キャンペーンに寄せられた2,731本の投稿の中から大賞を決定しました!
大賞は
【ホワイト案件】
本来は犯罪にならない仕事のことだが、SNSで強盗などの闇バイトがホワイト案件と偽って募集されることがあり、社会問題となってる。
※ウッシャンさん投稿の語釈
【闇バイト】と対をなす言葉だが、じつは同義語 ──
◆明治大学 国際日本学部・田中牧郎(たなか・まきろう)教授の選評◆
2023年の『大辞泉』新語大賞、次点の新語が【闇バイト】でした。今年の【ホワイト案件】は、それと対になる新語といえます。いや、【ホワイト案件】は、本当は闇であることを隠して、さも安全な仕事のように見せているだけですから、対ではなく、むしろ同義語なのかもしれません。
昨年までの報道では、犯行グループは悪事と分かって参加しているふうでしたが、今年は凶悪化・頻発化が進む一方、末端の実行犯は【ホワイト案件】だとダマされ、途中からは脅されてやらされている被害者の面もあるということが分かってきました。これらを示す【匿名・流動型犯罪】や、その略称【トクリュウ】という言葉も数多く投稿されました。
次点は2語
【フキハラ】と【静かな退職】
【フキハラ】
「不機嫌ハラスメント」の略。
これみよがしなため息など、不機嫌さを押し出すハラスメント。
※妥協老人さん投稿の語釈
怒りを抑えているのに、それでも責められる場合も──
◆田中教授の選評◆
部下や配偶者などに、ガミガミと直接怒ることはしないものの、これみよがしな態度で怒りを示してしまうのが不機嫌ハラスメント、略して【フキハラ】。具体的には、ため息・舌打ち・無視・無言になるなどなど。ドアの開閉やパソコンのタイピングで大きな音を立てるケースもあるそうです。
やられた側は、具体的な言葉で責められているわけでないので、釈明や反論できない……
これがストレスになるというわけです。しかし、やってしまっている側は、「ホントは怒りたいけど、それは我慢する」という時点で、一定の譲歩をしているんだ! という気持ちかもしれません。
【静かな退職】
企業に属しつつ、やりがいを求めず、必要最低限の仕事のみ淡々とこなす働き方。
あたかも退職したかのように、仕事に対するエネルギーを失いつつ働くこと。
※クラゲさん投稿の語釈
怠けとの境界を超えずに過ごす、それなりのテクニックが必要?──
◆田中教授の選評◆
パ~ッとにぎやかな送別会ナシの退職……ではありません。実際は、まだ退職していないビジネスパーソンが、あたかも既に退職してしまったかのように、最低限、やるべきことのみやるだけという状態のことです。2022年、米国のあるキャリア・カウンセラーが「quiet quitting」という生き方を提唱し、世界中で支持されたのが始まり。日本では、直訳の【静かな退職】が、昨年ごろからメディアで見られるようになりました。このような働き方をする動機は、私生活を重視してワークライフバランスを求めるというポジティブなもののほか、もう出世は見込めないと分かったから、本当の定年退職まで適当にやり過ごすという考えもあるといいます。終身雇用制が残っている日本だから許容される働き方のように思えますが、ドライな雇用制度の米国発祥だというのは意外な感じを受けます。
■投稿数ベスト10(および、それそれの代表的な投稿語釈)■
第1位【50-50(フィフティ-フィフティ)】
大谷翔平選手の達成した偉大な記録。転じて、かなりの困難を伴うミッションを達成すると言う意味を持つ。 (ゴルゴキャットさんの投稿)
第2位【インプレゾンビ】
X(旧Twitter)で投稿のインプレッション数を稼ぐために迷惑な投稿を繰り返すアカウント。 (オサルさんの投稿)
第3位【風呂キャンセル界隈】
毎日あるいは定期的にお風呂に入らない人たちの総称。鬱など精神的な病をきっかけにお風呂に入りたくても入れない人も含まれる。(やるしかさんの投稿)
第4位【猫ミーム】
猫を使ったインターネットミーム全般。とくに過去にバズった猫の動画の切りぬきを素材として、台詞やキャプションをつけた、日常生活を中心とした再現動画のこと。(はまちさんの投稿)
第5位【ホワイト案件】《前掲》
第6位【メロい】
ある人に対して好意的に感じ、夢中になる気持ち。独特な感性によるものが多い。恋愛感情というよりも、推しに対する感情に近い。(レモンティーさんの投稿)
第7位【もしトラ】
2024年に行われるアメリカ大統領選で、「もしトランプ氏が再選したら」の略語。再任した場合、対策の必要性や各方面への影響が懸念されることから使われだした。(のさんの大統領選前の投稿)
第8位【石丸構文】
質問されたことに質問で返し、核心に到達されないようにする論法。(イーリーさんの投稿)
第9位【マルハラ】
SNSなどの文章が「。」で終わると若者は威圧的でハラスメントを受けたように感じる、というもの。マルハラスメント。何でもかんでもハラスメントにしてしまうのは若者から年長者へのハラスメントともいえる。(まここしゃんさんの投稿)
第10位【無課金おじさん】
パリ五輪・エアピストルに出場したトルコ代表のユスフ・ディケッチ選手のこと。多くの選手が重装備で競技に挑む中、シンプルな装備で銀メダルを獲得した。お金をかけずに結果を出したことから話題になった。(kameiさんの投稿)
■キャンペーン概要■
○名称:大辞泉が選ぶ新語大賞 2024
○実施概要:『大辞泉』に未収録の新語と新語義を広く募集しました。本プレスリリースに掲載の言葉は、編集部と執筆陣による検討のうえ、『大辞泉』ならびに同辞書がデータ提供しているweb辞書・アプリ・電子辞書などに追加される可能性があります。ただし語釈は執筆陣が新たに執筆します。
○投稿募集期間:2024年5月18日(土)~11月15日(金)
○投稿総数:2,731本
○募集方法:キャンペーンサイト(https://daijisen.jp/shingo/)の投稿フォーム、もしくはXからの投稿
○選考方法:『大辞泉』編集部と田中牧郎教授の協議。【田中氏略歴】1962年・島根県生まれ。東北大学文学部・卒業。東北大学大学院文学研究科・修士課程修了。東京工業大学大学院社会理工学研究科・博士課程修了。明治大学国際日本学部・教授。国立国語研究所・運営会議委員。日本語学会・評議員。主な著書に『図解日本の語彙』(三省堂/共著)。『近代書き言葉はこうしてできた』(岩波書店)。『コーパスと日本語史研究』(ひつじ書房/共著)ほか。
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