観光地域が次に狙うインバウンド市場は「シンガポール」 インバウンド誘致は“量”から“高付加価値化”へ 誘致課題TOP3は「二次交通」「ガイド不足」と「プロモーション」

インバウンド市場の注力ターゲット調査2026

株式会社リクルート

株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:牛田圭一、以下リクルート)の観光に関する調査・研究、地域振興機関『じゃらんリサーチセンター』(センター長:高橋佑司、以下JRC)は、全国の自治体およびDMO(観光地域づくり法人)を対象に、訪日プロモーションにおけるターゲットを可視化することを目的に「インバウンド市場の注力ターゲット調査2026」を実施しました。本調査は今回で、5回目となります。

本調査から、観光地域のインバウンド戦略が「量の回復」から「高付加価値化・質重視」へと移行している実態が明らかになりました。

注力市場は台湾・米国が上位、今後はシンガポールが浮上

自治体およびDMOが現在注力している市場では、台湾が最多となり、米国、香港が続きました。アジア市場を中心に、滞在日数や消費単価の高い欧米市場も引き続き重視されています。

一方、今後新たに狙いたい市場では「シンガポール」が最多となりました。現在の主力市場を維持しつつ、高単価・長期滞在型市場へと戦略の軸足を広げる動きが見られます。

シンガポールは人口規模こそ限定的ですが、消費単価が高く、地方体験への関心も高い市場です。人数規模の拡大よりも、滞在中の消費の質や地域内での支出の広がりを重視する傾向が強まっていることがうかがえます。

誘致最大の壁は「二次交通」と「ガイド不足」受け入れ体制がボトルネックに

インバウンド誘致における課題では、「二次交通の整備」が最多となり、次いで「ガイド不足」「誘客/プロモーション戦略」が続きました。

訪日客数が高水準で推移するなか、地方部では目的地までの移動手段や体験を担う人材の不足が顕在化しています。とりわけ、地方分散を掲げる地域にとっては、鉄道・バスなどの二次交通の確保や、地域の魅力を伝えるガイド人材の育成が急務となっています。

また、プロモーション戦略も依然として上位に挙がりましたが、単なる情報発信強化にとどまらず、ターゲット市場に合わせた戦略設計やデータ活用の高度化が求められているようです。

今回の結果からは、市場選定は進んでいる一方で、受け入れ体制の強化が重要なテーマとなっています。

観光地域の取り組み事例

各地域ではインバウンド誘致の高度化に向けた取り組みが進みつつあります。

東北観光推進機構:広域でのガイドネットワーク構築と育成強化

東北観光推進機構(広域DMO)では、広域連携によるガイド人材の育成とネットワーク化を進めています。2024年には、東北各地で活躍している地域ガイドが“広域で活躍できる体制”を構築することを目的に、東北全域でガイドの実態を把握。288名のガイドをリスト化し、可視化しました。英語に堪能なガイド205名を中心に研修案内を展開。東北6県と新潟県で計82名のガイドを対象に、広域で活躍できるガイドの育成研修を座学と実践で開催し、ネットワーク化に努めています。基礎スキル向上に加え、英語ガイド実地研修や通訳アプリを活用した研修も行い、参加者の78%がアプリ導入を前向きに検討するなど、テクノロジー活用も進んでいます。

AdventureWeek2025TOHOKUの受け入れに向けた研修では、東北広域で119名が基礎研修に、39名が実務研修に参加しました。併せて、2025年の東北観光推進機構の自主事業としてアドベンチャートラベル(AT)受け入れ整備のためのストーリーテリング、フィールドでの安全管理、緊急対応等全6回のより実務的なATガイド研修を実施。東北、沖縄、北海道のATに精通している講師を迎え、延べ96名が受講。うち10名は4回以上参加しました。研修を通じてガイド同士のネットワーク形成も進み、相互送客やDMC(Destination Management Company)間での横連携など東北広域での受け入れ体制強化につながっています。

このように東北では、地域の歴史や文化に精通したガイドと、自然・伝統文化・地域体験などのコンテンツを組み合わせることで、高付加価値型の観光商品の造成にも取り組んでいます。

韓国市場:現地OTAとの連携による販路拡張の動き

韓国市場においては、現地OTA(Online Travel Agent)との連携を通じた販路拡張の取り組みが進んでいます。韓国最大級のOTAをはじめとする提携先において、日本の宿泊施設を特集する企画ページやバナー露出を実施し、現地ユーザーへの認知拡大を図っています。こうした取り組みでは、インバウンド向けに設計した専用プランを対象に露出を行うことで、海外ユーザーへの訴求力を高める仕組みが構築されています。

こうした海外販路との接続にあたっては、既存在庫を活用できる仕組みや、問い合わせ対応の一元化など、運用負荷を抑えながら展開できる体制づくりも進んでいます。

 『じゃらん』のグローバルエージェントサービス(GAS)では、提携先の海外OTAを活用し、国内で登録している宿泊在庫を活用しながら海外向け露出を拡大できる仕組みを提供しています。活用施設からは、「新たな契約や精算対応の負担が少ない」「問い合わせ窓口が一本化され安心感がある」といった声も聞かれています。

熱海:東京起点の“旅ナカ検索”を捉えた多言語コンテンツ強化

静岡県熱海市では、訪日客の“旅ナカ”行動に着目した情報発信の高度化に取り組んでいます。Google AnalyticsおよびGoogle Search Consoleの分析により、訪日客の多くが東京滞在中に周辺観光地を検索している実態が明らかになりました。特に、英語(アメリカ・日本滞在中)および繁体字(台湾・日本滞在中)を中心に、

•“Onsen near Tokyo”

•“Day trip from Tokyo”

•“Tokyo to Atami shinkansen”

•“How to get from Tokyo to Atami”

といった「東京起点」での移動・温泉関連キーワードの検索が多い傾向が確認されています。

こうした分析結果を踏まえ、インバウンド公式サイト「Visit Atami」では、検索ニーズに即した記事を新規作成・リライトし、多言語化を実施。単なる翻訳ではなく、検索意図に沿ったコンテンツ設計を行うことで、旅ナカでの情報接触機会を高めています。

その結果、サイト閲覧数は約4.6倍、Google検索表示回数は15.3倍に増加(※1)し、平均掲載順位も大きく向上しました。旅ナカでの閲覧率も約3割を維持しており、現地滞在中の行動支援ツールとして機能しています。

さらに、各記事をQRコード(※2)化し、観光案内所や宿泊施設で活用することで、オンラインとリアルの接点を接続。東京滞在中に情報収集を行う訪日客に対し、検索段階から熱海への来訪検討を促す仕組みを構築しています。

(※1)2025 年5 ⽉21 ⽇(水)〜6 ⽉30 ⽇(月)(41 ⽇間)と2025 年11 ⽉21 ⽇(金)〜12 ⽉31 ⽇(水)(41 ⽇間)で⽐較(Google Search Console 計測) (※2)QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です

担当者のコメント

株式会社リクルート じゃらんリサーチセンター 研究員 松本 百加里

今回の調査では、観光地域のインバウンド戦略がより戦略的な段階に入っていることが読み取れます。訪日客数が高水準で推移するなか、地域では「どの市場に、どのような価値を届けるか」という視点を重視しています。

今後狙いたい市場でシンガポールが最多となったことは象徴的です。人数規模だけでなく、消費単価や滞在スタイルを踏まえた市場選定が進んでいることがうかがえます。

一方で、二次交通やガイド不足が課題として挙がったことは、誘致施策の成果を最大化するための受け入れ環境整備が重要になっていることを示しています。今後は、ターゲット市場に応じた戦略的なプロモーションと、地域の受け入れ体制を両輪で強化していくことが求められます。

インバウンドは回復段階を経て、持続的成長を見据える局面に入ったといえます。これからは、ターゲット市場のポートフォリオによる「量の設計」と、高付加価値化による「質の向上」を同時に実現する戦略的なプランニングが、ますます重要になるでしょう。

本調査の詳細は報告書をご参照ください。

https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2026/04/report-inboundtarget2026.pdf

この調査の詳細は、担当研究員から5月14日(木)15:00~、YouTubeライブ配信にて解説します(後日アーカイブとして視聴も可能)。配信では、研究員より「本調査報告内容の解説」に加え、観光庁よりゲストをお招きし、新たな「観光立国推進基本計画」および「訪日マーケティング戦略」についての解説を予定しております。ライブ配信URLは下記よりお入りください。

https://youtube.com/live/ZBhqNkNkQ6E?feature=share

調査概要

調査方法:対象組織のインバウンド担当者宛に調査票を送付して、インターネット上でアンケートを実施

調査対象:DMO観光地域づくり法人、都道府県庁、観光協会

有効回答数:157(DMO観光地域づくり法人/137、都道府県庁/18、観光協会/2) 

調査実施期間:2025年12月1日(月)~ 2026年2月13日(金) 

調査機関:じゃらんリサーチセンター

▼リクルートについて

https://www.recruit.co.jp/

▼本件に関するお問い合わせ先

https://www.recruit.co.jp/support/form/

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会社概要

株式会社リクルート

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URL
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業種
サービス業
本社所在地
東京都千代田区丸の内1丁目9番2号
電話番号
-
代表者名
牛田 圭一
上場
未上場
資本金
-
設立
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