気候変動適応に向けて、うどんこ病への抵抗性をもつホップ「フラノ2004B号」を開発
病害リスクを低減し、持続可能なビール原料調達の実現へ
サッポロビール(株)はホップ栽培において世界的な課題となっているうどんこ病への抵抗性をもつホップである「フラノ2004B号」の開発に成功しました。気候変動により増加の恐れがある病害リスクの低減と将来にわたるビール原料の安定的な生産・調達を目指し、継続的に取り組みを進めてきた成果であり、今後品種登録された場合、日本で登録されたホップ品種として初のうどんこ病抵抗性品種になります(注1)。

ホップはビールに香りや苦味を与える重要な原料で、他の農作物と同様に収穫量や品質が気候条件によって左右されます。今後、温暖化や天候の不安定化といった気候変動が世界のホップ生産に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
気候変動がホップ生産にもたらすリスクの1つに、うどんこ病による被害の増加があります。うどんこ病は葉や球花に白い粉状の斑点が発生する病気で、感染した球花は成長が抑制され萎縮、さらにはビールの苦味の元となる成分が減少し(注2)、収穫量や品質の低下をもたらします。うどんこ病は20℃前後の温度帯で感染が進行しやすいこと(注3)、夜間に感染リスクが高まること(注4)がそれぞれ示唆されています。国内におけるホップの主要産地である北海道と東北は比較的冷涼な気候でホップの生産に適していますが、今後夜間の気温が上昇した場合、うどんこ病にとってより好適な気象条件となり、ホップへの被害が増加する恐れがあります。
また、現在の主なうどんこ病対策は農薬の散布ですが、近年では一部の生産者において農薬を使用してもなお、うどんこ病が発生し対策に苦労しているケースが確認されています。さらに、世界的には環境負荷の低減に向けて化学農薬への規制強化が進むことも予想されており、うどんこ病抵抗性品種の開発は、持続的な病害対策を目指す中で重要な手段の1つになります。
このたび当社は、うどんこ病への抵抗性を示す「フラノ2004B号」を開発し、気候変動適応性を有するホップと位置付けて品種登録を出願しました。この出願は、当社が掲げている「2030年までに気候変動に適応するための新品種を登録出願」(注5)を4年前倒しで達成するものであり、当社が気候変動対策を率先して取り組んだ成果であると捉えています。また「フラノ2004B号」は収穫量と苦味成分量、醸造試験においても従来品種と同等以上の成績を出しており、うどんこ病抵抗性以外の側面からも有望視しています。
「フラノ2004B号」は現在、品種出願登録と商業栽培の計画を進めており、2027年から商業栽培開始を目指すとともに、将来的には当社の主力ビールブランドでの使用、また海外での商業栽培化も見据えていきたいと考えています。
これからもお客様においしいビールを提供し続けるため、気候変動の適応に向けた原料育種の研究開発を進め、持続可能なビール原料の生産・調達に努めていきます。
(注1)当社調べ
(注2)Twomey, M. C., Wolfenbarger, S. N., Woods, J. L., & Gent, D. H. (2015).
Development of partial ontogenic resistance to powdery mildew in hop cones and its management
implications.
PLoS ONE, 10(3), e0120987.
(注3)Turechek, W. W., Mahaffee, W. F., & Ocamb, C. M. (2001).
Development of management strategies for hop powdery mildew in the Pacific Northwest.
Plant Health Progress.
(注4)Mahaffee, W. F., Turechek, W. W., & Ocamb, C. M. (2003).
Effect of variable temperature on infection severity of Podosphaera macularis on hops.
Ecology and Epidemiology, 93(12), 1587.
(注5) https://www.sapporobreweries.com/sustainability/
■サッポロビール(株)担当者コメント

原料開発研究所 主幹研究員 兼 購買部 ホップフィールドマネージャー 久慈 正義
以前のホップの品種開発は苦味や香りといった、ビールのおいしさに関わる要素を重視していましたが、近年は気候変動の影響や持続的な生産についても意識するようになり、病害への強さや収穫量の高さを兼ね備えたホップの開発に取り組むようになりました。こうした方針の変化の中で生まれたのが「フラノ2004B号」です。収穫量や苦味成分量が有望でうどんこ病に強い「フラノ2004B号」が、高品質で安定的なホップの生産・調達に貢献できることを期待しています。サッポロビールではこれからもおいしいビールを造り続けていくために、ホップの品種開発に取り組んでいきます。
【消費者の方からのお問い合わせ先】
サッポロビール(株)お客様センター
℡ 0120-207-800
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