世界最高レベルの精度で球の直径測定を実現

パナソニックグループ

国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ 近藤 余範主任研究員、平井 亜紀子研究グループ長、川嶋 なつみ研究員、尾藤 洋一副研究部門長、パナソニック プロダクションエンジニアリング株式会社(以下、PPE)は世界最高レベル(※1)の精度を実現する球直径測定技術を開発しました。

近年、車載カメラや内視鏡などの高精細な画像が必要とされる分野において、それらのデバイスに搭載される光学素子は、光学性能を向上させるために設計形状の自由曲面化が進んでいます。自由曲面レンズ・ミラーでは、表面の凹凸をナノレベルに低減するだけでなく、曲率半径を含めた絶対形状をナノレベルで設計形状と合致させる必要があります。これを実現するにはナノレベルの加工技術だけでなく、それと同等以上の形状計測技術が不可欠です。

自由曲面レンズ・ミラーなどの光学素子の形状測定機において、絶対形状の測定精度は、形状測定機の基準として用いられる球の直径校正精度に依存しています。これまでの球の直径校正精度は、100 nmから200 nm程度の不確かさをもち、形状測定機のもつ測定の分解能や再現性に比べて高いとはいえません。今回、低接触力プローブシステムを搭載した三次元測定機(µ-CMM)(※2)と、シリコン製ブロックゲージ(※3)を基準とした球直径校正方法を開発し、それにより不確かさ15 nmで球の直径を測定できました。この球を自由曲面形状測定機の基準として用いることで、自由曲面形状の高精度化が期待されます。

なお、この研究成果の詳細は、2024年12月7日に「Precision Engineering」に掲載されます。

※1 論文発表時(2024年12月7日)現在、PPE標準機事業センター事業企画課調べ

※2 三次元測定機(µ-CMM)

測定物にプローブを接触し、測定物表面のXYZ座標位置を読み取る座標測定機(CMM:Coordinate Measuring Machine)。プローブには非接触式もある。一般的なCMMは、プローブ測定点がXYZ座標測定用のスケール軸上と合致しない(アッベの原理を満たさない)ため、アッベの誤差が発生する。今回開発した三次元測定機は、測定精度を高めるため、レーザー干渉計を搭載し、レーザー光軸がプローブ中心を通るように設計したアッベの原理を満たすものである。一般的なCMMに対して、アッベの原理に従って微小な寸法を高精度に測定するために設計された三次元測定機を特にµ-CMM(micro-Coordinate Measuring Machine)と呼ぶ。nano-CMMと呼ばれることもある。

※3 ブロックゲージ

ブロックの端面間の長さで定義される端度器の一つ。シンプルでありながら精度が非常に高く、加えて実用性も高いため、マイクロメーターやノギス、三次元測定機などの校正に用いられる、最も普及している長さ標準。

【お問い合わせ先】

■国立研究開発法人産業技術総合研究所

工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ

主任研究員 近藤 余範

〒305-8563 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央事業所3群

TEL:050-3521-3207

Email:kondou.y@aist.go.jp

■パナソニック ホールディングス株式会社

コーポレートR&D戦略室 技術広報担当

〒571-8508 大阪府門真市大字門真1006

Email:crdpress@ml.jp.panasonic.com

全文は以下プレスリリースをご覧ください。

▼[プレスリリース]世界最高レベルの精度で球の直径測定を実現(2024年12月16日)

https://news.panasonic.com/jp/press/jn241216-1

<関連情報>

・産総研プレス発表 基準球面レンズの表面形状を高精度に校正(2024年11月28日)

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241128_2/pr20241128_2.html

・産総研プレス発表 シリコンウエハーの厚さを高精度に測定(2018年9月4日)

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2018/pr20180904/pr20180904.html

・Two-point diameter calibration of a sphere by a micro-coordinate measuring machine using a silicon gauge block as a reference standard

https://doi.org/10.1016/j.precisioneng.2024.12.003

・国立研究開発法人産業技術総合研究所

https://www.aist.go.jp/

・パナソニック プロダクションエンジニアリング株式会社

https://www.panasonic.com/jp/company/ppe.html

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1935年12月