“11戦全勝の最強ファイターvs最強の悪童”が激突!世界のTK曰く「新しいチマエフを出さないとディアスには勝てないと思う」『UFC279』WOWOWで独占生中継&ライブ配信
9/11(日)午前11:00[WOWOWライブ]※生中継(WOWOWオンデマンドで同時配信)
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日本時間の9月11日(日)、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのT―モバイル・アリーナで『UFC279』が開催される。
メインイベントは、MMA11戦全勝、UFCでも5連勝中の超新星ハムザト・チマエフが、コナー・マクレガーとの2度にわたる激闘で知られる“悪童”ネート・ディアスと対戦する。この注目の一戦の見どころをWOWOW「UFC-究極格闘技-」解説者としても知られる“世界のTK”髙坂剛に語ってもらった。
――『UFC279』メインイベントは、ハムザト・チマエフvsネート・ディアスという大注目のウェルター級マッチが組まれました。
「もともとチマエフvsネートは注目されていたカードでしたけど、先月の『UFC278』で行われたウェルター級タイトルマッチで、王者カマル・ウスマンが敗れてレオン・エドワーズが新王者となったことで、この試合の意味がより深くなった気がしますね」
――絶対王者ウスマンの独走体勢が続いていたウェルター級が、一気に戦国時代に突入した感もあります。
「ここでチマエフが勝てばタイトルマッチが見えてくるし、ネートの方も新王者エドワーズとは因縁がありますから」
――ネートは2021年6月の『UFC263』でエドワーズと対戦し、判定で敗れたものの5ラウンドにあわや逆転KO勝ちというシーンを作りましたしね。チマエフも2020年にエドワーズ戦が組まれながら、両選手の新型コロナウイルス陽性などもあり3度試合が流れて結局中止になった経緯があります。
「だからチマエフもネートも新王者エドワーズという存在を意識しながらの一戦になると思うんですよ。とくにネートは、これがUFCとの契約最終試合で、この一戦を最後にオクタゴンを去るんじゃないか、なんて言われてますけど。ここでチマエフに勝ったら、“1試合だけエドワーズとタイトル戦やらせろ”とか言い出しかねない(笑)」
――莫大なファイトマネーで1試合契約を迫ることも考えられますね(笑)。
「そういった裏事情も含めてさらに深みが増したな、と思います」
――試合展開自体についてはどうみていますか?
「両者の特性を考えると、まず“スタミナ抜群のネート・ディアス”ということが挙げられますよね。それを前提にUFCでのチマエフの試合をあらためて見返すと、やはり前回のギルバート・バーンズ戦がすごく引っかかるんですよ」
――これまで全試合1、2ラウンドで圧勝してきたチマエフが初めて判定に持ち込まれ、2ラウンドは落とすなど、僅差の激闘になりました。
「あの試合でチマエフは、スタミナの点で若干難ありというところをちょっと露呈しちゃった感があるんですよね。これまでは秒殺に近い試合時間で勝てていたので、1ラウンドから出力全開でいっても問題なかったけれど、やはりトップランカーのバーンズは、そのチマエフの猛攻を凌いだじゃないですか」
――バーンズは1ラウンドにダウンを喫したもののそれを凌いで、2ラウンドは逆にパンチラッシュで圧倒しましたね。
「チマエフ相手にこれができたのは、それまで誰もいなかったんですよ。それで1ラウンドにフィジカルを使いすぎたチマエフは、2ラウンドに崩れてきた。パンチの空振りが目立ち出して、空振りから体勢を戻すのって疲れるので、負のスパイラルに入ってしまった。だから、これまで圧倒的な強さを見せてきたチマエフが、バーンズ戦では自分のペースが崩れた時の脆さを露呈してしまったというのが自分の見方ですね」
――ただ、バーンズも消耗した3ラウンドに再び反撃して、そこから判定勝ちをものにしたのは、たいしたもんですよね。
「そこは彼の地力の異常な強さというか、獣(けもの)チックなところがあると思うんですよ。3ラウンド目にバーンズが残りのフィジカルを振り絞ってタックルにいったとき、チマエフはそれを体のいなしだけで切ったシーンがあった。ああいう動きはすごく感覚的なもので、疲れていながらあれができるというのは、その動きが体に染み付いているか、本能的なものなんですよ。だからチマエフは、今のUFCトップレベルの選手が持っている洗練された総合力はまだ持ちあわせ手いないけれど、天性、野生の格闘技の才能があまりにも強すぎるために、早くもトップクラスに届いてしまった状態なんじゃないかと、バーンズ戦を観て思いましたね」
――まだ荒削りであるにもかかわらず、才能がありすぎてトップランカーに勝ててしまった、と。
「そうですね。UFCのトップファイターはみんな、プランAが凌がれたとしてもプランB、プランCが用意されていて、さまざまな局面でフルラウンド戦える選手ばかりですけど、チマエフはトップクラスの実力がありながら、そういった試合作りがまだできていない、という珍しいタイプですね」
――一方、ネート・ディアスは、前半どんなにボコボコにやられても最終的に盛り返して勝てばいいという戦い方を信条としています。
「だから今回は、そのスタミナ抜群のネート・ディアスとチマエフが、5分5ラウンド制で戦うというのがいちばんのポイントですよね。で、ひとつ疑問に思うのは“ネートって、なんであんなにスタミナがあるの?”ってことだと思うんですよ。ネートには悪いですけど、そこまで追い込んで、スタミナを向上させるための特別なトレーニングをしているように見えないじゃないですか(笑)」
――昔からトライアスロンに取り組んでいるのは知られていますけど、一方でいろんな葉っぱを吸ってたりしますしね(笑)。
「だからあのスタミナの秘密は、ネートの戦い方にあると思うんですよ。注意深く見ると、ネートは攻撃も防御もほぼ“いなし”を使ってるんです。もちろんネート最大の武器であるパンチのワンツーを入れるときは体重を乗せて、出力も使っているんだけど、他の動きに関しては脱力してなるべく体に負荷がかからないようにしている。ネートがよく見せる、距離を取るための軽い蹴りの時、両腕をブランブランにさせているのなんて、まさにそれですよね。
ネートの中には“体に負荷がかからないように動く”ということが、おそらく主題としてあるんだと思います。だから5ラウンドまでいっても動きは変わらないし、逆に相手はどんどん消耗しているので、ちょっとしたフェイントに引っかかって、ネートのパンチや寝技の餌食になってしまう」
――無駄な力を使わず、フィジカルで勝る相手を時間をかけて仕留めるというのは、かつてのヒクソン・グレイシー、ホイス・グレイシーなんかにも通じるものがありますよね。
「だからネートはMMAの試合の中で、自分なりの“柔術”で戦っているような気がします」
――あのネートの戦い方こそが“ディアス柔術”だという。
「それに対して、これまで1ラウンドからフィジカルを全開で使って短時間で圧倒する戦い方をしてきたチマエフが、5ラウンド制でネートとどう戦うのか。ネートというこれまでとはまったく違うタイプの選手とやってスタミナを消耗した時、どんな技を持っていてどんな動きができるのか、それを見るのがすごく楽しみですね。
おそらくバーンズ戦を踏まえて“これじゃいかんぞ”と思って、自分なりに新たに取り組んだものもあるだろうし。どちらにしても、新しいチマエフを出さないとネート・ディアスには勝てないと思うんですよ。もしかしたら、その力を引き出すのは、他ならぬ対戦相手のネートかもしれない」
——ネート・ディアスは相手の心理を弄ぶようなところがありますよね。
「相手をイライラさせて、平常心でいられなくする、それもネートの技術ですから。あの粛々と任務を遂行するような戦いをするレオン・エドワーズが、ネート戦では試合中に中指を立てたんですよね。あれは相当、フラストレーションを溜めさせられたんだと思うんですよ」
――そのイライラもあって、最終5ラウンドに反撃を許してしまったのかもしれないですよね。
「そうやって心理的に追い込んでいく術をネートは持っているので、それが野性のチマエフにどこまで働くのか。逆にネートの揺さぶりを簡単に凌駕するほどの力をチマエフが見せるのか。単に技術やフィジカルの攻防だけでなく、心理面も含めていろんな角度で楽しめる試合になると思いますね」
(取材・文/堀江ガンツ)
◆◆◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール◆◆◆
『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC279 in ラスベガス 無敗チマエフVS悪童ネート・ディアス』8月、UFC契約を勝ち取った木下憂朔がゲスト解説出演!
9/11(日)午前11:00[WOWOWライブ]※生中継
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
9/14(水)午前8:00[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
【対戦カード】
・ウェルター級/ハムザト・チマエフ vs ネート・ディアス
【収録日・収録場所】
2022年9月10日<現地>/アメリカ・ネバダ州ラスベガス T―モバイル・アリーナ
【出演】
ゲスト:木下憂朔
解説:髙坂剛、堀江ガンツ
実況:髙柳謙一
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