医療費抑制 社協のサロン活動

社協「ふれあい・いきいきサロン」の参加者は身体活動量が多く医療費は少ない

 流通経済大学スポーツ健康科学部の大槻毅教授は,社会福祉協議会が普及に努めている「ふれあい・いきいきサロン」(以下,サロンと略します)の参加者を対象にアンケート調査や医療費分析を行い,サロン参加者は非参加者に比べて身体活動量が多く,医療費の上昇が小さいことを明らかにしました.これらの結果は,高齢者の健康・体力づくりにサロンが一定の役割を果たす可能性を示唆しており,サロン事業の普及と発展に寝たきりの減少や医療費の抑制が期待されます.本研究成果は、アジア太平洋公衆衛生学術連合国際会議(Asia Pacific Academic Consortium for Public Health)の機関誌「Asia Pacific Journal of Public Health」オンライン版に2018年10月19日付で公開されました.
【結果の概要】
・サロン参加者は非参加者に比べて日常生活活動動作(Activities of daily living, ADL)得点および日常生活における身体活動量得点が高い値を示しました.
・サロン参加者は非参加者に比べて医療費の増加が少ない傾向にありました.
・今後,サロンの普及と発展による高齢者の健康・体力づくりが期待されます
 
【背景】
 社会福祉協議会が提唱し,普及に努めている「ふれあい・いきいきサロン」は,参加者とボランティアが協働で企画し、内容(体操,レクリエーション,手芸,音楽,伝統伝承に関わる活動,子どもとの交流など)を決めて地域を拠点に運営する活動です.サロンは高齢者に社会参加の機会を提供すること,徒歩での参加を促すために数多くの場所で開催されていること,健康体操等がプログラムに取り入れられていること等から,認知症や寝たきりの予防になるとされています.社会参加により生活態度が前向きに変わったり,歩数の増加や健康体操で足腰が強くなってADLが改善したりすると,日常生活における身体活動量が増大し,健康・体力が増進して,認知症や寝たきりの予防になるというわけです.また,身体活動には免疫力および生活習慣病リスクの改善などによる医療費の抑制が期待できます.しかし,サロンと身体活動量および医療費との関連性についての研究は,これまでに行われていませんでした.

【研究内容】
 アンケート調査には,調査実施日に研究対象地域のサロンに出席したサロン参加者4,439人が回答しました.また,サロン参加者と居住地域,平均年齢,男女比が等しくなるように抽出された非参加登録者1,576人にも,同様の調査が行われました.回答に不備があった者と,多忙のためにサロンに登録していないと回答した者を除いた参加者3,214人および非参加登録者570人を対象にデータ分析が行われました.その結果,ADL得点(図1)および日常生活における身体活動量得点(図2)は,月2~4回の参加者,月1回の参加者,非参加登録者,の順に高いという結果が得られました.

 

 

 医療費分析は,当該地域でサロン事業が始まった2005年度の参加登録者のうち,2003~2007年度の国民健康保険および介護保険の記録が照合可能であった2,431人を対象に行われました.対象者は,全ての対象年度で参加頻度が1回/月を上回った721人(参加群),参加登録はしているが全ての年度で参加頻度が1回/月を下回った1,124人(非参加群),年度によって参加頻度が1回/月を上回ったり下回ったりした586人の3群に分けられました.年間医療費は,2003年および2004年は参加群と非参加群でほぼ同額でした.しかし,サロン事業が始まった2005年の医療費は,非参加群では前年より増加した一方で参加群では逆に減少し,2005~2007年における参加群の年間医療費は非参加群より一人あたり約8万2千~11万1千円少額でした(図3).

 

 【今後の展開】
 本研究の結果を解釈する上では,元々活動的な人が積極的にサロンに参加したためにサロン参加者の身体活動量が多かった可能性に留意する必要があります.医療費についても,健康度の高い人が継続的にサロンに参加した結果なのかもしれません.サロンに参加することで身体活動量や医療費が改善することを明らかにするためには,更に検討を重ねることが必要です.ただし,活動頻度はサロン毎に異なっており,どのサロンに参加するかは本人の意思ではなく居住地域で決まります.この研究では月1回の参加者より月2回以上の参加者で身体活動量が多かったことから,サロン活動が実際に健康を維持増進させる可能性は十分に考えられます.

【用語解説】
身体活動:身体活動には,スポーツや健康・体力づくりを目的とする体操およびウォーキングなどの「運動」と,家事,職業,移動等に伴う「生活活動」の両方が含まれます.過去の研究で,社会参加は身体活動量を増大させることが明らかにされています.
 

論文タイトル:Older Community Residents Who Participate in Group Activities Have Higher Daily Physical Activity Levels and Lower Medical Costs
タイトル日本語訳:グループ活動に参加する地域在住高齢者は日常生活における身体活動量が多く医療費は少ない
著者:Takeshi Otsuki
著者(日本語表記):大槻毅
所属先(日本語表記):流通経済大学スポーツ健康科学部
掲載誌:Asia Pacific Journal of Public Health, Published online 19 October, 2018
DOI:1010539518806809

本研究は愛媛県松山市および同市社会福祉協議会の協力により実施されました.

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ビジネスカテゴリ
福祉・介護・リハビリ
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会社概要

URL
https://www.rku.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
茨城県龍ケ崎市120
電話番号
0297-64-0001
代表者名
上野裕一
上場
未上場
資本金
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設立
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