~医療・介護施設と従事者へのアンケート調査レポート~
歯止めの効かない手数料高騰と崩れたパワーバランスが明らかに
医療・介護業界に特化した求人サイト『コメディカルドットコム』を運営するセカンドラボ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:巻幡 和徳)は、全国の医療介護施設と従事者を対象に、人材紹介サービスの採用手数料および利用の実態把握を目的としたアンケートを実施しました。
- エージェント手数料、年収30%以上の割合が約2倍に
- “おとり求人”に釣られる求職者が約7割
- “おとり求人“是正すべきと考える事業者が97%以上
トピック① 人材紹介会社の手数料が大幅に高騰、利用施設も増加傾向
■介護職の採用手数料、「(年収の)30%以上」が“約5倍”に増加
介護職の採用手数料について、 2018年の調査では2.8%だった「30%以上」が2019年7月には約5倍の14.5%に増加しました。また、「25%」も10.9%から19.9%に増加。採用費が約1年の間に大幅に高騰している実態が分かりました。一方で「利用していない」は45.0%に対して37.8%と、人材紹介会社を利用する施設が増えていることがみてとれます。
■看護師の手数料も「30%以上」の手数料の割合が“約2倍”に増加
看護師の採用費は、「30%以上」が2018年は5.7%に対して2019年では11.9%と約2倍に増加しました。また、「25%」も10.4%から15.4%と約1.5倍に増加。「利用していない」は19.8%から15.0%に減少。看護師も介護職同様、採用費は高騰し、利用施設は増加傾向である結果がでました。
トピック② “おとり”を使った強引な人材紹介会社の集客実態
■約半数の施設がおとりに使われている実態
「おとり求人」という言葉を知っていると答えた事業所は27.4%と約1/4程度にとどまりましたが、「無断で掲載されていた経験」で50.6%、「募集終了後にも掲載され続けていたことがある」が57.0%と、半数以上の施設が自らの意図していないところで求人情報として求職者に対して開示されていることが分かりました。
■半数以上が“おとり”をきっかけに別の求人情報を案内された経験
「おとり求人」という言葉の認知度は19.1%と2割以下に留まりました。しかし、「希望した求人情報に問い合わせたら終了していた」が64.4%、「問い合わせた求人情報とは違う求人を案内された経験」が66.1%とともに半数以上の方が、自らの望んだ求人情報とは別の求人に誘導されたことがある結果となりました。
トピック③ 人材紹介会社への依存度が強く声を上げづらい実態
「おとり求人は是正されるべきか」との問いに事業者は、「そう思う」が79.9%、「どちらかといえばそう思う」が17.6%、あわせて97.5%が「是正されるべき問題」と返答しました。事業者にとっても、勝手に求人を掲載されて求職者を集めることに利用されることは快く思っていないことがわかります。しかし、是正するには医療・介護事業者と人材紹介会社との関係性を考える必要がありそうです。事業者へのヒアリングでみえてきました。(次項参照)
■人材紹介会社に対する医療機関の声
<一般病院(埼玉県)>
過去に人材紹介会社の利用を止めていた時期がありました。理由としては、採用手数料が高く経営の負担になっていたこと。人材紹介会社経由で入職した職員の離職率の高さも採用活動の上での問題となっていました。利用を控えてからは自社の採用ホームページやウェブの求人媒体を主に活用していますが、比較的問い合わせが集まり、採用費の削減に繋がっています。一方で医師や一部の看護師など媒体を使って集めることが出来ない職種については人材紹介会社に頼らざるを得ないこともあり、取引を再開した経緯があります。
<一般病院(東京都)>
現在はウェブの広告媒体を中心に採用活動を行っています。定期的に職員の補充は出来ているので、今のところ人材紹介サービスを積極利用する予定はありません。過去に利用をしていたこともありましたが、コスト面で使い続けることは難しいという判断から、2年ほど前より依存度を徐々に減らしています。その結果採用費を削減することが出来たので、浮いた分の費用については院内設備の入れ替えや職員の給与増額などに使いたいと考えています。
人材紹介サービスのコストが高いということももちろんですが、求職者のモチベーションの低さは気になる点です。能動的な方は少なく、エージェントのフォローアップが無くなったとたんに辞めてしまうというケース過去何度かありました。最近も昨年入社した看護師が1年足らずで退職してしまったということもありました。そのため人材紹介会社の提案は基本断っていますが、急な欠員など緊急時には問い合わせるということもあるので、完全に使わないというのは難しいかもしれません。
■迫る2025年問題
団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者化(75歳以上)する事により、医療費などの社会保障費の急増が懸念されている問題です。これまで国を支えてきた団塊の世代が給付を受ける側に回るため、医療費、社会保障やその他の課題にどう取り組んでいくかが大きな問題となることが指摘されています。
そして費用の問題だけでなく、特に医療・介護業界ではサービスの担い手側への影響も大きく、2025年を期に医療サービスを受ける側の人は増加しますが、働き手が減少していきます。その状況の中で重くのしかかるのが採用費に関する問題です。
■医療・介護業界の転職市場に起こる異変
公的資金で運営される病院や介護施設は、一般企業と異なり財源が限られています。それにも関わらず、本来設備投資や待遇改善など患者や職員の環境改善に使用されるべきお金が、採用費につぎ込まれてしまっている現状があります。専門技術を持ち即戦力となれる医療・介護業界の従事者は、実は転職のハードルが低く、人の循環が起こりやすい。そして転職の際には人材紹介サービス(以後、エージェント)を介すケースが増加しており、短い頻度で転職を繰り返す「悪意なき職員の循環」が採用費を押し上げる原因の一つとなっています。
さらに、極端な売り手市場のためエージェントに頼らざるを得ない実情があり、施設とエージェント間のパワーバランスが崩れてしまっています。そのため採用費の高騰に歯止めが効かず、経営上の大きな問題となっています。2019年10月に実施される最低賃金の引き上げや消費増税はその問題にさらなる拍車をかけるおそれがあります。
セカンドラボの代表の巻幡は独立前に元々看護師の人材紹介事業を行っていました。しかし、限られた公的資金で運営される病院、介護施設が、設備投資や職員の待遇改善に使うべき費用を採用費に充てている状況を目の当たりにし、採用費に関する問題を改善するため、コメディカルドットコムを立ち上げました。
今後は、“おとり求人”是正の他、医療・介護業界の採用に関する問題について、業界内外への周知を図り賛同者を募りながら、行政への働きかけを実施していく予定です。
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