エバーブルーテクノロジーズ、全長2m級オリジナル帆船型ドローン「Type-A」が、海上での自動操船と自律航行テストに成功
〜風力をダイレクトに動力として利用した帆船型ドローンを通して、漁業、観光業などの産業シーンでエネルギー課題を解決するソリューションの開発に着手〜
風力をダイレクトに動力として利用した帆走の自動化技術を通して、持続可能な社会の実現に貢献する、エバーブルーテクノロジーズ株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役CEO:野間 恒毅、以下エバーブルーテクノロジーズ)はこのたび、技術開発および実証テストを進めてきた帆船型ドローンの実証機「Type-A(タイプエー)」の開発において、海上での自動操船、長時間自律航行に成功、サービス開発に着手したことをご報告いたします。
<海上での実証テスト概要および結果>
このたびの実証テストに使用した「Type-A」は、漁業支援や海洋探査といった実運用を想定したモデルとして開発した全長2mクラスの帆船型ドローンです。ソナーを標準装備するほか、各種IoT機器の搭載を可能にするため、独自にデザイン・設計・製造をしています。
- 実証テスト実施エリア:神奈川県逗子市 逗子海岸
- 実証テスト概要:海上に設定した2か所の経由地を半径5mの範囲で経由し、帆走と補助モーターを利用して自動でスタート地点に戻るマニューバビリティテストを実施、成功
今回の実証テストの成功を受け、漁業分野では魚群状況の無人モニタリングによる後継者不足と労働力不足の解決を目指します。また海洋調査分野での活用に向けては、水温、潮流センサー等を搭載して無人調査を行うことを想定した、量産機の開発を予定しています。実証実験で証明された航行距離から、帆船型ドローンが離島や半島間の渡船用途にも適していることが確認されました。これにより、2人から6人乗りの無人自動帆船海上タクシーの開発も計画しています。
操縦者が搭乗せず、自然風のみで運行できる無人自動帆船は運用コストが非常に低く、燃油代と人件費でやむなく廃航路となった地域での航路復活も可能にします。
特に国土の周囲を海で囲まれた日本においては、離島や半島間の渡船用途をはじめ、航路にとらわれない自由な海上移動手段の提供をも実現します。
<帆船型ドローン開発の背景>
近年、あらゆる産業で地球温暖化防止のための施策が求められていますが、海上を舞台とする産業ではいまだ内燃機関が主力であり、決定的な方策が打ち出されていません。
また陸上交通の電動化による将来的な電力不足も予測される中、国土の狭い日本では太陽光発電による電力供給に限界があることから、波力、潮力、地熱、風力といった海上の再生可能エネルギーの活用が注目されています。
しかし海中送電ケーブルの敷設コストの高さや、動力船を電気推進船に置き換えるための大型バッテリー積載容量、重量、充電時間確保といったハードルから、海上の再生可能エネルギーの活用も現実的ではありません。
一部では水素を使った燃料電池の活用が有望ともいわれていますが、そのためには低コストで水素を大量に用意する必要があり、実現には時間がかかると考えられています。
海上の再生可能エネルギーを水素に変換して自動操船ヨットで運搬することにより、海上水素サプライチェーンを構築し、動力船をゼロエミッションの帆船または電気推進船に置き換えていく未来を目指しています。こうしたビジョンのもと、2019年より全長1mクラスのRCヨットモデルを改造した実証機での自動操船実験を開始。実証テストで以下のことを確認しています。
<オリジナル帆船型ドローン 「Type-A」仕様概要>
船体デザインには多彩なメンバーが参加:
ハル(船体)の基本設計は、世界的ヨットレース「アメリカズカップ」のレース艇をデザインした、有限会社ACTの金井亮浩氏が手がけています。通常、軽量な小型ヨットは人が体重移動してバランスをとる必要がありますが、「Type-A」では自動操船ヨットに最適な構造、かつ帆走効率を最大化した構成を取り入れました。さらに現役カーデザイナーや3Dモデラーをはじめとする多彩なメンバーが集結し、これまでのヨットの常識にとらわれない設計、製造方法を追求したデザインを実現しています。
船体設計製造には3Dプリンタを活用:
通常、FRPやPPが使われる船体の製造には雌型が必要で、設計製造には大きな資金投資と製造期間が必要でした。
エバーブルーテクノロジーズではこの設計製造に大型3Dプリンタを活用し、3Dモデリングされたデータを直接プリントアウトすることで、製造期間の大幅な短縮と製造費の低減を実現しています。
昨今、海洋プラスティックゴミが社会課題となっていますが、持続可能な社会の実現を企業理念に掲げるエバーブルーテクノロジーズでこの課題を解決するため今後、3Dプリンタのフィラメント素材を消化分解可能な魚用飼料に替えていくことを計画しており、その点でも3Dプリンタの利用は必要不可欠でした。
独自のソフトウェア技術開発:
制御ソフトウェアはドローンのオープンソースプロジェクト「Ardupilot」をベースに、独自技術を実装することで開発期間の短縮を図っています。
特にドローンを無線操縦するための通信に関しては、一般的に運用範囲を数百メートルから数キロメートルに設定することが多い中、エバーブルーテクノロジーズでは4G/3G回線とクラウド(インターネット上のサーバー)を活用することにより、通信キャリアがサポートするサービスエリア内であればリアルタイムモニタリングや遠隔操作を可能としています。
もちろん回線サービスエリア圏外であっても自律航行が可能で、航行は全自動で行われます。
自然風をそのまま動力に利用する帆船の最大のメリットは、稼働時間が長いことです。
独自開発した帆船型ドローンは通信とセール、ラダーの制御にのみ電力を利用するため、飛行型ドローンであれば20分程度しか稼働できない電池容量でも、5時間から最大8時間稼働することが可能です。
今後、太陽光発電と組み合わせることで、数日から数週間の無充電運用を視野に入れています。
また、離着岸時や無風時など帆走が困難な場合に備え、電気モーターを補助的に利用することで安全性や機動性を確保しています。この場合も電気推進のため排気ガスや騒音を出さず、環境に配慮した運用が可能です。
<具体的な活用シーンと試験運用状況>
1)魚群探索を無人で行う探索船
Type-Aをベースに開発中の機体では、魚群探知機を搭載した無人自動帆船で予め設定したポイントへ自動帆走し、スマートフォンから遠隔で魚群情報を見て臨機応変にポイントを設定したり、コースを変更したりすることが可能です。
これまで有人の漁船でしかできなかった探索活動を効率化するとともに、魚群状況によって出漁するかどうかを判断できるようになり、人件費や燃油代などのコスト削減につなげます。
将来的にはAIを搭載し、魚群探知の自動化や、高級魚を一本釣りして帰港する漁の全自動化を目指しています。
またデプスマッピング機能により詳細海底地図を自動作成することで、定置網漁での詳細な海底を知りたいといったニーズに応えます。
本開発に際しては、神奈川県二宮町で活動する二宮漁場の全面的な協力を得て、実際の漁場での試験運用を実施し、実証テストを通して実データを収集していきます。
現在二宮漁場で行われているシラス漁では、漁船に搭載した魚群探知機を利用し、直接海に出てシラスを探し回るという方法を取っています。そのため1回の漁が数時間にも及び、燃料代や漁師への負担も大きいという課題を抱えています。
今回の取り組みでは、無人探索船で魚群をあらかじめサーチすることで漁を効率化し、魚群の早期発見や燃料費削減、稼働時間の短縮を通して漁業従事者の肉体的、経済的負担軽減に貢献することを目指しています。
2)旅客・観光向け船舶型ドローン
昨今、海上交通は少子高齢化やマイカーの普及などによって利用者が減少していることに加え、運用コストが高いことから、廃路に追い込まれる航路も少なくありません。こうした中、人件費や燃油代がかからない帆船型ドローンは、劇的なコスト削減への貢献が期待されています。
帆船型ドローンを使った自動海上タクシーは、乗船定員を2人から6人に設定し、カップルやファミリー層の利用を想定しています。大量輸送を前提としていたこれまでの船舶の概念を覆し、プライバシーを確保したエンジン音のない快適なクルージングを提供することで、まったく新しい海上移動体験を提供します。
陸上のライドシェアサービス(例:Uber、Lyft)のようにスマートフォンで帆船型ドローンを呼び、半島、離島を気軽に行き来する渡船用途に最適です。また緊急時や異常時には地上のグランドコントロールセンターが有人で対応し、安心安全な運用を行う計画です。
GPS誘導と衝突回避センサーを装備した帆船型ドローンは、これまでの有人船舶で負担の大きかった夕暮れから夜間の航行も安全に行うことができ、海上グランピングといった新たな観光・レジャー用途での活用も見込んでいます。
旅客用途は瀬戸内海や相模湾など、地域を限定したトライアル運用からの実現を計画しています。
<今後の事業展開>
エバーブルーテクノロジーズでは、自動操船ヨットの製造販売、サービス提供、自動帆走技術提供などを主な事業とし、カーボンフリーな世界の実現を目指します。
将来的には海上の再生可能エネルギー、潮力、波力、風力由来の電力を使用して水素を製造し、エネルギー消費地へ自動運搬する水素エネルギーサプライチェーン「Hydroloop(ハイドロループ)」の実現を構想しています。
今後、陸上交通の電力化で起こる電力不足を解決するとともに、これまで有効な代替手段がなかった動力船のゼロエミッション化を実現するため、水素エネルギーを利用した電気推進船への転換促進、水素エネルギー補給を海上で実現させるサービスを展開する計画です。
【補足資料:エバーブルーテクノロジーズについて】
http://everblue.tech/
[会社名] エバーブルーテクノロジーズ株式会社
[代表者]野間 恒毅(のま つねたけ)
[設立]2018年12月
[本社所在地]東京都目黒区大橋2-22-42 B1,2F Mistletoe of Tokyo
[活動拠点]葉山、逗子海岸、二宮漁場、シンガポール、ホノルルなど
[事業概要]
自動航行で動くヨットの開発、設計、運用、製造販売及び関連サービス
2019年2月、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏の実弟で、日本を代表するシリアル・アントレプレナー(連続起業家)の孫泰蔵氏が代表を務めるMistletoe株式会社より1億円の投資を受ける。2021年までに航行可能なHunter(仮)の実モデル(MVP)の設計開発を行う計画。
現在は、プロトタイプの設計、実証実験を行い実用化に向けて活動中。
[補足資料:デザイン/開発環境 「A.D.A.M & E.V.E」について]
エバーブルーテクノロジーズでは、独自のデザイン環境、開発環境を導入しています。
(参考:https://www.zaikei.co.jp/releases/771560/)
デザイン環境:A.D.A.M(Ai Design Autonomous Multihull)
AIデザインをテーマに、現在のAIデザインの最先端であるジェネレーティブデザインを実践的なプロジェクトで活用し、学びながら将来のAIデザインのメソッドを参加者とともに考え、実際に自動操船ヨットをデザインしていくワークグループです。
昨今、デザインする要素や課題、制約条件を設定し、最終的な形状デザインをコンピュータが行うジェネレーティブデザインなどの手法が導入され始めており、デザイナーの手を経ないデザイン手法の研究が進められています。同時にプロダクトデザイナーの役割も、手を動かしてデザインすることから、AIに対してデザインをディレクションしていくことへと変化していくと考えられています。
そうしたディレクションにおいては、条件設定の方法や学習データの提供方法など、AIを用いたデザインならではのメソッドが求められると想像できます。
A.D.A.Mで実践しているプロジェクトでは、エバーブルーテクノロジーズが開発する自動操船技術を漁業に応用して魚群探索、捕獲補助を実現する無人ディンギー「Fisherdrone(仮)」を、ジェネレーティブデザインを用いてデザイン、設計、製造しています。
複雑な形状を短期間で製造する3Dプリンタの利用を前提とし、部位ごとの素材変更(マルチマテリアル)に対応した製造手法の確立、また複雑な形状にも最適化できるジェネレーティブデザインの技術を使用することで、高強度かつ軽量な構造の実現を目指します。
そのプロセスの中で、AIデザインの可能性やメソッドの開発などを実験、検証しています。
開発環境:EVE(Everblue engineering community)
エバーブルーテクノロジーズでは帆船型ドローンの技術開発を促進するために、コミュニティ形式の開発体制を導入し、本プロジェクトに参加するエンジニア、学生、企業を広く募集しています。
定期的にコンペティションを開催することで技術を共有し、切磋琢磨することによって全体のレベルアップを加速度的に高めることを目指しています。
2019年6月には沖縄県うるま市でプレイベントを開催。今後も開催する予定です。
デザイナーやエンジニアなど、バックグラウンドの異なるプロフェッショナルが集結したオープンイノベーションモデルでのデザインワークにより、単独のデザイナーでは生まれない発想やノウハウの共有が実現し、より高いレベルのアイデアと機構、デザインの融合が実現する可能性があると考えています。
こうした体制のもと、エバーブルーテクノロジーズでは将来的に、必要な時に必要な分だけ漁獲するオンデマンド漁業の実現や、再生可能エネルギーを水素などのエネルギーキャリアに変換して無人で運搬するサプライチェーンの構築を通して、持続可能な社会の実現を目指しています。
そして既成概念にとらわれない自由な発想で自動操船ヨットという新しい移動体をデザインし、世界の海洋シーンをアップデートすることを目指しています。
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