危機的な温暖化・生物多様性損失・窒素汚染から大転換するためのGEO-5下巻のリリースとクラウドファンディングの開始
その大転換の手法を示したGEO-5「地球環境概観 第5次報告書」下巻がウェブで無料公開され、クラウドファンディングも開始された。
GEO-5上巻(2015年日本語版公開)は、このような地球の危機的な状況について述べているが、それらを解決する持続可能な社会へ大転換するための方策を示したのが、この度のGEO-5下巻だ。GEO-5は環境報告研によって翻訳され、先月(8月)その下巻がウェブ上に無料全公開(https://www.hokokuken.com/geo5.html)された。そしてその活動を支援するクラウドファンディングが本日(9月10日)から開始された(https://readyfor.jp/projects/geo-5)。GEOは国連環境計画が数年毎に発行する最重要レポートで、英語版GEO-5は2012年6月の持続可能な開発会議(リオ+20)に時期を合わせて発行されたが、日本語版の発行は今回が初めてだ。世界600名の科学者が3年かけてまとめた権威ある報告書だ。
図1はNASAのホームページに掲載されているが、その移動平均気温を示す赤い線を見ると、世界の平均気温が曲線的に上昇している。つまり加速している可能性がある。(注意:図1と図2は最新のものでGEO-5ではない)
■ 温暖化するいくつかの悪循環がGEO-5上巻で指摘されている
(その1) 北極の海氷面積の減少
温暖化で海氷が減り(上巻P.199,197,36,38)、これまで白い海氷で反射されて宇宙に戻っていた太陽光が暗い海水にもろに吸収され、海水温が上がり、さらに海氷が解けて減少して温暖化が加速するという悪循環(正のフィードバック)に陥っている。夏の北極海氷の大きさが、この40年で半減した(https://readyfor.jp/projects/geo-5)。
(その2) 大規模な森林火災の多発
温暖化で森林火災が多発し、大量の黒いススが大気および北極や南極の雪氷を暗くして太陽光の吸収を高めて(上巻P.204,57,72,73,143,148)、温暖化が加速され、さらにシベリヤ、北米、オーストラリアなどで大規模な長期の森林火災が発生するという悪循環に陥っている。
(その3) 永久凍土の融解によるメタンの大量放出
気温上昇が永久凍土層を融かすことになれば、高緯度地域の地下に閉じ込められていた莫大な量のメタン(温室効果がCO2の25倍)が放出され、気温がさらに上昇し、より多くの永久凍土が融かされ、もっと多くのメタンが放出されるという悪循環が起こり得る(上巻 P.76,197,37)。
(その4) 土壌呼吸によるCO2放出の加速
気温上昇で土壌内の微生物の活動がさかんになり、土壌内の有機物の分解が加速され、CO2の放出が増えて気温が上がり、さらに土壌呼吸が加速される可能性がある(上巻 P197)。
■ 生物多様性の損失は、主として人類の活動によるもので、多くの場合、6 度目の地球規模絶滅と呼ばれている(上巻P.196)。
■ 窒素汚染は、人類の活動によって環境の中を循環する反応性窒素の量が2倍以上になったことで、窒素カスケード(上巻P.43)を引き起こしている。①亜酸化窒素(N2O)の大気への放出。②窒素化合物がPM2.5 の前駆物質(その生成原因となる物質)となり、③窒素酸化物が対流圏オゾンの前駆物質となっている(対流圏オゾンは健康、作物収穫量、生態系、気候に影響を及ぼす)。④また亜酸化窒素と対流圏オゾンは、有力な温室効果ガスでもある。⑤また反応性窒素化合物の沈着は、陸域生態系と水界生態系における富栄養化と酸性化を通して、生物多様性の喪失を引き起こす。
■ 西南極の氷床崩壊で3.3mの海面上昇の可能性 図2 西南極の氷床の急速な減少
南極の氷床のほとんどは陸の上に乗っているが、これらの陸の上面は現在の平均海面よりもかなり低く、例えば、西南極の氷床の底は、その多くが海面より1,000 メートル以上も下にある。したがって、氷床の下部は、急速に温暖化している海水内にあるために、その安定性が懸念される。温暖化で氷床が崩壊すれば、世界の海水面を3.3m上昇させることが予想されている(上巻 P.200、201、25、119)。
■持続可能な社会への大転換 (ここから下巻)
GEO-5の英語版は、2012年の持続可能な開発会議(リオ+20)に時期を合わせて発行された。リオ+20において、それまでの「ミレニアム開発目標」MDGsを「持続可能な開発目標」SDGsに拡張するというGEO-5の提案がなされ、2015年にSDGsが採択された。GEO-5を見ることでSDGsの基盤になっている考えを知ることができる。
持続可能な世界シナリオ(下巻第16章)
分野ごとに、従来の世界シナリオと持続可能な世界シナリオを比較している
大気(温暖化)(下巻 P.428~432)
土地(P.432~435)
水(P.435~438)
生物多様性(P.438~441)
持続可能な世界のビジョン(P.424~425)
ビジョンが描かれるまでは持続可能な世界は実現され得ない
持続可能な世界の目標とターゲット(P.426~427)
温暖化、 土地、 水、 生物多様性、 廃棄物
持続可能性へ大転換するための4つの手法 (第16章)
(その1) 持続可能性という説得力のあるビジョンについて社会的合意を得る
SDGsの採択はこの手法による成果の一つ。
(その2) 持続不可能なものを反転させる
人類史において前例のない規模の取り組みが必要。
(その3) レバレッジ (てこの原理) を適用する
レバレッジの適用とは、その出力が入力に対して不釣り合いなほど 大きくなるポイントを見つけ、
そこをついて大転換を起こす。
レバレッジポイントを見いだすための3つの層
(1.中心の層)物の見方
物の見方は、ビジョンや目標や集団行動
へと形を変える。
(2.中間の層)規則とインセンティブ
まさに形勢を一変させる。正しいインセ
ンティブによって構造変化が生まれ、
駆動要因に影響を与えることができる。
(3.外側の層)フィードバックと調節
フィードバックを生じさせ、それを受け
取り、環境への圧力を調整して持続可能
性へと向かわせる。
(その4) 順応的ガバナンス
地球システムの問題では、不確実性の及ぼす影響が大きい。
その結果、遷移プロセスを管理するには、試行することによって
学習するプロセスや、新たに得られた学びに基づいて定期的に
再評価することや、多様な対策をとることが必要になる。
→ パリ協定にこの考え方が導入されている。
■ 世界の各地域における環境政策(下巻)
アフリカ(下巻 第9章)
アジア太平洋(第10章)
ヨーロッパ(第11章)
中南米とカリブ(第12章)
北アメリカ(第13章)
西アジア(第14章)
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