大学発ベンチャーがタッグを組み、膨大な微生物ゲノムデータベースを起点としたシームレスな合成生物学サービスの提供へ
〜微生物ゲノムのビッグデータ探索からゲノム設計、そして精密ゲノム合成から高機能微生物創出までの、バイオとデジタルが融合した革新的プラットフォームを構築
大学発バイオテックベンチャーのbitBiomeとLogomixの2社は、bitBiomeの膨大な微生物ゲノムデータベースと、Logomixの高度なゲノム改変技術をかけ合わせ、バイオエコノミー実現のためのソリューションをパートナー企業に共同で提供していきます。
bitBiome:微生物シングルセルゲノム解析で膨大なゲノムデータベースを構築
bitBiomeは世界初の微生物シングルセルゲノム解析技術bit-MAP®をコア技術とする、2018年創業の早稲田大学発バイオテックベンチャーです。bit-MAP®は従来手法のメタゲノム解析と比較して、難培養微生物、未知の微生物を含む、あらゆる微生物から1細胞毎の全ゲノムが得られることが特徴です。
bitBiomeは設立から現在まで、腸内細菌や土壌細菌などあらゆる環境に生息する細菌のシングルセルゲノム解析を通じて、独自の遺伝子資源データベースを構築し、6万を超える微生物ゲノムを蓄積してきました。bitBiomeは今後2023年には20万を超えるゲノムデータを蓄積し、微生物ゲノムデータベースを起点としたモノづくりを目指しています。
Logomix:ゲノム改変技術を展開
Logomixはゲノム大規模構築技術Geno-Writing™をコア技術とする、2019年創業の東京工業大学発バイオテックベンチャーです。Geno-Writing™は、従来のゲノム工学技術を凌駕する広範囲のゲノム領域を、高精度に設計・改変・合成することが可能なゲノム構築技術プラットフォームです。Logomixは、Geno-Writing™を用いて、クライアントのご希望に合わせた細胞株・細胞システムを創出する、汎用性の高い合成生物学的ソリューション・プロバイダーです。製薬企業、化学系企業、総合電機メーカーなど幅広い業種の企業と共に、創薬・バイオものづくりを推進中です。
ゲノムデータ×ゲノム構築技術=バイオエコノミー実現へ
bitBiomeは、従来手法とは比較できないほどの種類・活性共に多彩なゲノムデータの蓄積がある一方で、ゲノムデータの効率的な活用・評価が難しく、また、Logomixは欧米バイオテック企業と比較してもゲノム工学において技術的優位性を誇る一方、産業微生物に関するデータの蓄積の加速化が課題でした。
この度、独自性の高いゲノムデータを持つbitBiomeと、高度なゲノム改変技術を持つLogomixの両社がそれぞれの強みを提供し合うことで、ビッグゲノムデータから高機能細胞開発までのシームレスな合成生物学サービスが可能になります。
近年バイオテクノロジーとデジタルテクノロジーの融合による技術の急速な進歩により、合成生物学の商業化、バイオエコノミーの実現に向けた動きが欧米中心に進んでいますが、bitBiomeとLogomixの2社のコア技術が掛け合わさることで、国際的ニーズにも対応できる高付加価値な合成生物学ソリューションを提供出来るようになりました。
まず、6つのユースケース(①難培養細菌ゲノムライブラリーからの新規化合物生合成遺伝子マイニングと実験検証 ②顧客保有微生物株のゲノム改変ライブラリーの構築と、ライブラリーからの高機能株探索 ③Living Medicineの開発プラットフォームの設計・構築 ④持続可能な農業のための高機能土壌細菌叢の開発 ⑤脱炭素・カーボンリサイクルに資する特殊環境微生物を用いた物質循環システムの開発⑥プラスチック分解菌株の開発)を軸に、研究開発ニーズをお持ちの企業様とのパートナリングを通じて、プロジェクトを立ち上げて参ります。
2社は本協業において「地球上のあらゆる遺伝子資源を活用し、進化の壁を越えて生物の進化をデザインする」を掲げ、パートナー企業との協業による新価値創造を通して、バイオエコノミー社会の実現を目指して参ります。
補足1:会社紹介
<bitBiome社について>
bitBiome株式会社は、地球上のあらゆる微生物の設計図=ゲノムデータを最高解像度で蓄積し、あらゆる産業をupdateします。
独自のシングルセルゲノム解析技術bit-MAP®により、これまで培養・解析が極めて難しかった微生物から高効率で全ゲノム配列を取得し、質・量ともに他を凌駕する微生物遺伝子データベースを構築します。これを起点とし、産業パートナーと協調してデータからモノを創り出す革新的バイオ生産プラットフォームを展開します。
https://bitbiome.co.jp/
<Logomix社について>
相澤康則博士(東工大生命理工学院・准教授)が培ってきたゲノム構築技術によって世界に貢献する新価値を創造することを目的として2019年に設立。「目的達成や課題解決にあったゲノム設計技術」と「設計通りにゲノムを改変・合成するゲノム工学精密技術」を組み合わせたゲノム構築技術プラットフォーム(Geno-Writing™)を活用し、民間企業等と協業を進めております。
https://www.logomixgenomics.com/
またLogomixは微生物ゲノム構築プロジェクト(Bacterial Genome Architecture Project;BGAプロジェクト)を2020年9月発足し、大腸菌人工ゲノムを構築中です。BGAプロジェクトは、様々な産業分野を橋渡しする「国内初の合成生物学オープンイノベーション組織」として期待されています。
https://www.titech.ac.jp/news/2020/047749.html
補足2:合成生物学
自然界の様々な生物種が持っている代謝経路を組み合わせて、新しい物質生産システムやセンサー機能をもつ人工細胞を設計・創出する学問領域。古来より発酵産業において物質生産工業に活用されていた微生物・細胞をゲノムレベルで改良した人工微生物・細胞による物質生産・ものづくり産業として、大きな注目を浴びています。
合成生物学に関わる企業は、農業から医学、細胞を培養して作る代替肉まで多様な産業に及び、より持続可能性の高い生産を可能にし、排出された二酸化炭素のリサイクルは、バイオ燃料の生産につながっています。
補足3:バイオエコノミー
バイオエコノミー産業は、2030年までにOECD加盟国の全GDPの2.7%(約180兆円)の市場へ、また2040年までに約400兆円市場へ成長すると見込まれており(McKinsey Global Institute調べ)、その対象は環境・化学・素材分野から、農業・食品分野、そして健康・医療分野と多様な産業基盤に変化をもたらすことが想定されています。
補足4:Living Medicine
広義には、動物、バクテリア、真菌やウイルスなどを活用し、疾患の治療を試みるものを指しますが、ここでは特に、特定の代謝機能を持つようゲノム改変された生きた菌を投与することで、調節不全や疾患のその他原因因子に対処しようとするもの。
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