在日ドイツ企業の90%以上が日本を「不確実な時代に安定をもたらす市場」として評価 ー 2021年4月調査
在日ドイツ商工会議所 (略称:AHK Japan) はKPMGドイツとともに、在日ドイツ系企業を対象に在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2021」を4月に実施いたしました。
- 在日ドイツ企業の経営層は、売上と利益の大幅な増加を見込んでいる
- 回答企業の90%以上が、日本を「不確実な時代に安定をもたらす市場」として、また「未来の関連分野でビジネスチャンスをもたらす重要なパートナー」として評価している
- 東京2020オリンピックの開催を楽観視していないドイツ企業もある
<調査結果の概要>
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1. 日本は依然として重要かつ収益性の高い市場である:新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年に、在日ドイツ企業の83%が年間平均税引前利益を上げることができた。
2. 中期的にもポジティブな見通し:回答したドイツ企業の経営層は、売上高(73%)と利益(55%)の大幅な増加を期待している。
3. 86%の企業が、日本でビジネスを行う最も重要な理由として「販売拠点としての高いポテンシャル」を挙げている。
4. 在日ドイツ企業にとって、世界第3位の経済大国である日本は戦略的観点からさらに重要な市場である。59%の企業は市場トレンドのリサーチ、53%は日系競合他社の調査・分析のために日本に拠点を置く。
5. ドイツ企業は、国際的に活動する日本企業とともに海外でも大きな売上を上げている:53%の企業が海外で日本企業と提携し、国内と同等の売上を獲得している。うち16%は国内売上の3倍の売上を上げている。
6. 48%の企業は、アジアやその他地域へのアクセスの良さを理由に第三国市場で日本企業と提携している。
7. 76%のドイツ企業が、最大の課題としてコロナ禍に伴う入国制限、次いで人口減少(74%)を挙げている。また、79%の企業が十分に訓練されたスタッフの確保に苦労している。
8. 将来ドイツ企業と日本企業が協力できる分野:「燃料電池・水素技術」(48%)、「デジタル技術」(39%)、「グリーンテクノロジー」(39%)
9. 回答企業の5社に1社は、東京2020オリンピックの開催による大きな経済的損失を見込んでいる。3分の1弱の企業は、開催によるプラスの影響を期待していない。
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新型コロナウイルス感染症拡大の影響による厳しい状況下にもかかわらず、調査に参加した在日ドイツ企業の83%が昨年度に利益を上げることができました。さらに、5社に1社近く(19%、前年14%)が、10%以上の年間平均税引前利益率を獲得したと回答しました。中期的見通しでは、4分の3の企業(73%)が売上高の増加を、55%が利益の増加を見込んでいます。一方、売上高、利益が減少すると予想しているのはそれぞれ5%と4%に過ぎませんでした。これらは、最新の在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2021」の主な結果です。調査は、在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)とKPMGドイツにより、2021年4月19日から30日にかけて実施されました。
安定性が第一の立地条件
ドイツ企業にとって、日本の安定性は、変わらず最も優れた立地要因です。回答した企業の95%が、ビジネス関係の安定性とビジネスパートナーとしての高い信頼性を立地の最大の利点として評価しています。しかしまた、経済の安定性(90%)、社会的安定性と安全(90%)、安定した政治環境(84%)も、国際的に比較すると非常に高い支持を得ています。とりわけ米国と中国という二大経済大国の対立が続き、地政学的な緊張が高まるなかでは、日本は安定をもたらすアンカー的な存在であり、アジアでビジネスを展開するドイツ企業にとって重要なパートナーであると考えられています。「投資は常に長期的な視点で行うものです。そのため、ドイツ企業は常に安定性と安全性を重要視しています。その点において、日本は国際的に見てもトップレベルの地位を占めています」と、駐日ドイツ商工特別代表 兼 在日ドイツ商工会議所の専務理事であるマークゥス・シュールマンは述べています。
日本の利点は、単なる販売市場だけではない
日本に拠点を置く理由のトップ3には、日本市場の販売拠点としての高いポテンシャル(86%)に加え、市場トレンドのリサーチ(59%)、日本の競合他社の調査・分析(53%)といった戦略的な理由も含まれています。「日本が世界第3位の経済大国であることには十分な理由があります。日本の企業は、エレクトロニクスやハイテク、自動車産業をはじめとする多くの分野で、そのイノベーション力により、世界のリーダーとなっています。日本のイノベーションは一般的には目立たず、進化的で長期的な視点に立ち、静かに起こるものです。何が起きているのかを知りたければ、現地に拠点を置き、活動しなければなりません」と、KPMGドイツのインターナショナルビジネス部門のマネージング・パートナーであるアンドレアス・グルンツは強調しています。
日本の強みを活かす
在日ドイツ企業は、グローバルに活躍する日本企業を足がかりにして、海外でも売上を伸ばしています。回答企業の2社に1社以上(53%、前年47%)が、顧客である日本企業とともに、少なくとも日本国内と同程度の売上を海外で上げています。そのうち16%の企業は、海外において日本国内の3倍の収益を上げています。
さらに、調査したドイツ企業の約半数(48%、前年63%)は、第三国市場において日本企業と共同でプロジェクトを実施しています。その際、特にASEAN(36%)と中国(28%)へのアクセスの良さを活用しています。前年比で15%ほど低下した背景には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による大規模な入国制限があります。そのため、回答企業の16%がアジア太平洋地域の本社拠点としてシンガポール(22%)、中国(17%)に次いで、日本を選択したことは驚くべきことではありません。「日本の顧客やパートナー企業とともに、ドイツ企業は、日本市場だけでなく、アジアや世界の市場へも参入することができます。それは日本ならではの特徴といえるのですが、えてして過小評価されがちです」と、アンドレアス・グルンツは述べています。
ドイツ企業の課題
日本に対して主に肯定的な見方をしているからといって、日本市場における課題や問題点を見過ごしてはいけません。日本は世界で平均年齢が最も高い国です。回答した企業の74%(前年60%)が、高齢化は今や新型コロナウイルス感染症拡大による影響と同じくらい脅威的なものであると認識しています。また、在日ドイツ企業にとって、人事関連のテーマも引き続き懸念材料となっています。例えば、79%の企業が、十分な訓練を受けた従業員の採用を最大の課題として挙げています。また、日本の労働法の柔軟性のなさも、ほぼ2社に1社の割合で問題視されています(48%)。
ドイツと日本が協力できる未来の主要分野:「水素技術」、「デジタル化」、「グリーンテック」
日本政府は、新成長戦略のなかで、未来のトピックについても焦点を当てています。在日ドイツ企業にはすでに先見の明があり、その内容はまさに調査に参加した企業の回答にも反映されています。ドイツ企業の2社に1社(48%)が、「燃料電池」と「水素技術」は日本にとって最も有望な未来の分野であると回答しています。次いで、「デジタル技術」と「グリーンテクノロジー(GreenTech)」(各39%)、「自動化・ロボット工学」(38%)が続きます。「こういった分野では、規格や多国間規制、協力関係が重要な役割を果たします。同じ価値観を共有するパートナーとして、日本とドイツは、日本市場や第三国市場においてさらなるビジネスチャンスや協力関係を築いていくことができるでしょう」とマークゥス・シュールマンは語っています。
中国との対話を提案
ドイツと同様に、日本も、経済大国である米国と中国間の緊張関係のなかで、自らの進むべき道を見つけなければなりません。回答企業の40%は、日本政府が対立路線をとる(22%)のではなく、対話を重視し、中国を自国の戦略やプロジェクトに組み込むべきだと考えています。
日本市場において中国の競合他社がドイツ企業に与える直接的な影響は、前年よりもわずかに減少しています。回答企業の16%は依然として中国を強力な競合相手とみなしていますが、その一方で、36%は全く関係がないと回答しており、10%ポイントほど増加しています。
東京2020オリンピックの開催を楽観視していない
回答企業の3分の1弱(29%)は、東京2020オリンピックの開催方法が新たな推進力を示すポジティブな指標ではなく、危機的状況が続いていることを示すものだと考えています。また、開催により日本が大きな損失を被ると予想している企業も20%ほどあります。
<調査概要>
調査名称:在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2021」
調査期間:2021年4月19日~4月30日
調査方法:オンライン・アンケート
調査内容:在日ドイツ系企業を対象に、事業見通しや現状、課題を把握することを目的に2006年より毎年実施
調査対象:在日ドイツ系企業415社
有効回答数:105社(25.3%)
本調査結果の詳細(英語)は、こちらからダウンロードできます:
https://japan.ahk.de/jp/infothek/umfragen-und-studien
- 在日ドイツ企業の経営層は、売上と利益の大幅な増加を見込んでいる
- 回答企業の90%以上が、日本を「不確実な時代に安定をもたらす市場」として、また「未来の関連分野でビジネスチャンスをもたらす重要なパートナー」として評価している
- 東京2020オリンピックの開催を楽観視していないドイツ企業もある
<調査結果の概要>
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1. 日本は依然として重要かつ収益性の高い市場である:新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年に、在日ドイツ企業の83%が年間平均税引前利益を上げることができた。
2. 中期的にもポジティブな見通し:回答したドイツ企業の経営層は、売上高(73%)と利益(55%)の大幅な増加を期待している。
3. 86%の企業が、日本でビジネスを行う最も重要な理由として「販売拠点としての高いポテンシャル」を挙げている。
4. 在日ドイツ企業にとって、世界第3位の経済大国である日本は戦略的観点からさらに重要な市場である。59%の企業は市場トレンドのリサーチ、53%は日系競合他社の調査・分析のために日本に拠点を置く。
5. ドイツ企業は、国際的に活動する日本企業とともに海外でも大きな売上を上げている:53%の企業が海外で日本企業と提携し、国内と同等の売上を獲得している。うち16%は国内売上の3倍の売上を上げている。
6. 48%の企業は、アジアやその他地域へのアクセスの良さを理由に第三国市場で日本企業と提携している。
7. 76%のドイツ企業が、最大の課題としてコロナ禍に伴う入国制限、次いで人口減少(74%)を挙げている。また、79%の企業が十分に訓練されたスタッフの確保に苦労している。
8. 将来ドイツ企業と日本企業が協力できる分野:「燃料電池・水素技術」(48%)、「デジタル技術」(39%)、「グリーンテクノロジー」(39%)
9. 回答企業の5社に1社は、東京2020オリンピックの開催による大きな経済的損失を見込んでいる。3分の1弱の企業は、開催によるプラスの影響を期待していない。
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新型コロナウイルス感染症拡大の影響による厳しい状況下にもかかわらず、調査に参加した在日ドイツ企業の83%が昨年度に利益を上げることができました。さらに、5社に1社近く(19%、前年14%)が、10%以上の年間平均税引前利益率を獲得したと回答しました。中期的見通しでは、4分の3の企業(73%)が売上高の増加を、55%が利益の増加を見込んでいます。一方、売上高、利益が減少すると予想しているのはそれぞれ5%と4%に過ぎませんでした。これらは、最新の在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2021」の主な結果です。調査は、在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)とKPMGドイツにより、2021年4月19日から30日にかけて実施されました。
安定性が第一の立地条件
ドイツ企業にとって、日本の安定性は、変わらず最も優れた立地要因です。回答した企業の95%が、ビジネス関係の安定性とビジネスパートナーとしての高い信頼性を立地の最大の利点として評価しています。しかしまた、経済の安定性(90%)、社会的安定性と安全(90%)、安定した政治環境(84%)も、国際的に比較すると非常に高い支持を得ています。とりわけ米国と中国という二大経済大国の対立が続き、地政学的な緊張が高まるなかでは、日本は安定をもたらすアンカー的な存在であり、アジアでビジネスを展開するドイツ企業にとって重要なパートナーであると考えられています。「投資は常に長期的な視点で行うものです。そのため、ドイツ企業は常に安定性と安全性を重要視しています。その点において、日本は国際的に見てもトップレベルの地位を占めています」と、駐日ドイツ商工特別代表 兼 在日ドイツ商工会議所の専務理事であるマークゥス・シュールマンは述べています。
日本の利点は、単なる販売市場だけではない
日本に拠点を置く理由のトップ3には、日本市場の販売拠点としての高いポテンシャル(86%)に加え、市場トレンドのリサーチ(59%)、日本の競合他社の調査・分析(53%)といった戦略的な理由も含まれています。「日本が世界第3位の経済大国であることには十分な理由があります。日本の企業は、エレクトロニクスやハイテク、自動車産業をはじめとする多くの分野で、そのイノベーション力により、世界のリーダーとなっています。日本のイノベーションは一般的には目立たず、進化的で長期的な視点に立ち、静かに起こるものです。何が起きているのかを知りたければ、現地に拠点を置き、活動しなければなりません」と、KPMGドイツのインターナショナルビジネス部門のマネージング・パートナーであるアンドレアス・グルンツは強調しています。
日本の強みを活かす
在日ドイツ企業は、グローバルに活躍する日本企業を足がかりにして、海外でも売上を伸ばしています。回答企業の2社に1社以上(53%、前年47%)が、顧客である日本企業とともに、少なくとも日本国内と同程度の売上を海外で上げています。そのうち16%の企業は、海外において日本国内の3倍の収益を上げています。
さらに、調査したドイツ企業の約半数(48%、前年63%)は、第三国市場において日本企業と共同でプロジェクトを実施しています。その際、特にASEAN(36%)と中国(28%)へのアクセスの良さを活用しています。前年比で15%ほど低下した背景には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による大規模な入国制限があります。そのため、回答企業の16%がアジア太平洋地域の本社拠点としてシンガポール(22%)、中国(17%)に次いで、日本を選択したことは驚くべきことではありません。「日本の顧客やパートナー企業とともに、ドイツ企業は、日本市場だけでなく、アジアや世界の市場へも参入することができます。それは日本ならではの特徴といえるのですが、えてして過小評価されがちです」と、アンドレアス・グルンツは述べています。
ドイツ企業の課題
日本に対して主に肯定的な見方をしているからといって、日本市場における課題や問題点を見過ごしてはいけません。日本は世界で平均年齢が最も高い国です。回答した企業の74%(前年60%)が、高齢化は今や新型コロナウイルス感染症拡大による影響と同じくらい脅威的なものであると認識しています。また、在日ドイツ企業にとって、人事関連のテーマも引き続き懸念材料となっています。例えば、79%の企業が、十分な訓練を受けた従業員の採用を最大の課題として挙げています。また、日本の労働法の柔軟性のなさも、ほぼ2社に1社の割合で問題視されています(48%)。
ドイツと日本が協力できる未来の主要分野:「水素技術」、「デジタル化」、「グリーンテック」
日本政府は、新成長戦略のなかで、未来のトピックについても焦点を当てています。在日ドイツ企業にはすでに先見の明があり、その内容はまさに調査に参加した企業の回答にも反映されています。ドイツ企業の2社に1社(48%)が、「燃料電池」と「水素技術」は日本にとって最も有望な未来の分野であると回答しています。次いで、「デジタル技術」と「グリーンテクノロジー(GreenTech)」(各39%)、「自動化・ロボット工学」(38%)が続きます。「こういった分野では、規格や多国間規制、協力関係が重要な役割を果たします。同じ価値観を共有するパートナーとして、日本とドイツは、日本市場や第三国市場においてさらなるビジネスチャンスや協力関係を築いていくことができるでしょう」とマークゥス・シュールマンは語っています。
中国との対話を提案
ドイツと同様に、日本も、経済大国である米国と中国間の緊張関係のなかで、自らの進むべき道を見つけなければなりません。回答企業の40%は、日本政府が対立路線をとる(22%)のではなく、対話を重視し、中国を自国の戦略やプロジェクトに組み込むべきだと考えています。
日本市場において中国の競合他社がドイツ企業に与える直接的な影響は、前年よりもわずかに減少しています。回答企業の16%は依然として中国を強力な競合相手とみなしていますが、その一方で、36%は全く関係がないと回答しており、10%ポイントほど増加しています。
東京2020オリンピックの開催を楽観視していない
回答企業の3分の1弱(29%)は、東京2020オリンピックの開催方法が新たな推進力を示すポジティブな指標ではなく、危機的状況が続いていることを示すものだと考えています。また、開催により日本が大きな損失を被ると予想している企業も20%ほどあります。
<調査概要>
調査名称:在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2021」
調査期間:2021年4月19日~4月30日
調査方法:オンライン・アンケート
調査内容:在日ドイツ系企業を対象に、事業見通しや現状、課題を把握することを目的に2006年より毎年実施
調査対象:在日ドイツ系企業415社
有効回答数:105社(25.3%)
本調査結果の詳細(英語)は、こちらからダウンロードできます:
https://japan.ahk.de/jp/infothek/umfragen-und-studien
<関連イベント開催のご案内>
開催日時:2021年7月6日(火)16時~17時
開催方法:オンライン
参加料金:無料
開催内容:調査結果のご紹介。在日ドイツ企業数社もパネリストとして参加予定。日英同時通訳あり。
HP:https://japan.ahk.de/jp/events/aktuelle-veranstaltungen/event-details/german-business-in-japan-2021
参加登録:https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_0mkuIon8RAKWCl6pHD8dXw
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