『小児がん白書2022』 小児がんの子どもたちを支えるための5つのアクション
小児がん患者が直面する社会的課題に対する提言を発表
こちらのウェブサイトから白書をご覧いただけます。https://skip-project.com/
小児がんは子ども1万人に約1人、年間2,000人から2,500人が発症しています。医科学等の進歩により、全体の5年生存率は20年ほどの間に60%程度から80%程度となるなど、治療成績の向上は見られています。国の対策も強化されてきました。例えば、第二期の「がん対策推進基本計画」において小児がん対策は重点項目と位置づけられ、2012年以降、全国で「小児がん拠点病院」の整備が進められてきました。しかし、一方において、未だ課題も多く残されています。
そのためスキップ・イニシアチブは、「小児がん白書2022」において、日本の小児がんの患者及び経験者の方々の直面する治療上あるいは社会生活上の課題、および薬剤等の治療開発上の課題を、文献レビュー調査及びがん経験者へのインタビュー調査結果に基づき整理し、政府等の主体に期待される今後のアクションを「提言」としてとりまとめました。
<5つの大きな壁>
1.学びの壁:学びを継続する困難
2.情報の壁:「治療の選択」における困難
3.費用の壁:治療費の捻出における困難
4.薬剤服用の壁:子どもにとっての「クスリを飲む」ことの困難
5.新薬創出の壁:子どもたちの「生存率」を向上させることの困難
小児がん患者及び経験者のなかには、健康な人と同等の生活を送るための5つの大きな壁があり、本白書ではそうした環境を改善するために「小児がんの子どもたちを支える5つのアクション」を提言しています。
<提言:子どもたちを支える、5つのアクション>
1.「学校における学び」を支えるために
・入院・自宅療養中の患児を対象とした、学籍移動を伴わない教育環境の提供(例えば、病院内学級の「適応指導教室」としての運用、ICT機器を利用による「オンライン教育」の推進 等)
・機能障害を有する小児がん経験者に対する、公平な高等学校/大学等の受験機会の提供
ー「大学入学共通テスト」における“受験上の配慮”の内容や申請手続き等に関する学校から生徒、保護者に対する正確な情報の早期からの提供⦅例えば、高等学校第三学年に進級する4 月時点で⦆
ー私立学校の入学試験における「受験上の配慮」に関する手続き、書式等の簡素化と標準化 等)
2.子どもと患者家族による「治療の選択」をサポートするために
・可能な範囲において平易な表現にて記述された「一般/患者向けガイドライン」の普及、活用
・遠隔診療をはじめとするデジタル技術を活用した、患者及びその家族の負荷を軽減する可能性のある医療提供体制等の積極的な導入
3.「20歳」からの闘病生活も支えていくために
・小児慢性特定疾病対策事業に基づく医療費助成制度の対象年齢の引き上げ(特に就労困難な患者を対象に)
・小児がん経験者による定期接種ワクチンの再接種への公費助成の全国における実施
4.「飲みやすい薬」を提供するために
・子どもにとって安全かつ飲みやすいクスリの開発を促す観点から、日本版の「小児用製剤ガイドライン」を作成、発行すること
5.未来の小児がん患者の「生存率」を、さらに高めていくために
・日本版BPCA(「小児最良医薬品法」)及びPREA(「小児用薬研究公平法」)の制定による小児向けの薬の開発促進
スキップ・イニシアチブでは、関係行政機関、団体および企業などにおいてこれらの提言を参考にしていただき、小児がんの子供たちの環境がさらに改善されることを期待しています。特に、本年、政府において予定されております第四期がん対策推進基本計画の検討に、本白書が寄与することを強く願っています。
※白書全文:こちらのウェブサイトからご覧いただけます。https://skip-project.com/
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小児がん白書2022の発行に至るまでの全ての活動は、2007年以来小児がんを取り巻く課題に取り組んでいるNPO 法人 サクセスみらい科学機構 (東京都千代田区/理事⾧ 森川康英)による支援を除き、関係者による無償の活動により実施されています。
民間企業・団体からの資金提供はなく、開示すべき利益相反はありません。
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<一般社団法人スキップ・イニシアチブ(SKIP Initiative, Inc.)について>
スキップ・イニシアチブ(https://skip-project.com/)は、小児がんを中心とする希少疾患を取り巻く環境の改善を実現すべく、2019年11月に設立されました。団体名称の「スキップ(SKIP)」には2つの意味が込められています。一つはSupporting Kids In Pediatric cancer、つまり困難と向き合う子どもたちが家族や仲間と共に足取り軽やかに歩んでいくことへの願い。もう一つはSynergy by Kids Intelligence & Practice、つまり子どもたちの能力や活動が社会全体の活力に結びつく社会を創りたいという願いです。
医科学、ヘルスケア産業の発展により、多くの疾病において治療成績の向上が図られています。しかしながら、推定14,000人以上の未成年者ががんの治療に向き合い、11万人以上が小児慢性特定疾病の治療に向き合っているなど、人口減少社会のなかで貴重な若い世代が困難に直面している状況は続いています。私たちは、政策調査・提言活動等を通して、こうした状況を少しでも改善できるよう努めていきたいと考えています。
一般社団法人スキップ・イニシアチブ(英名SKIP Initiative, Inc.)
https://skip-project.com/
法人種別:非営利型一般社団法人
所在地:東京都千代田区神田神保町2-8-2 パークサイド九段1101
理事長:間中健介
理事:平田研、村田章吾
監事:梅田明人
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