「第二回たばこハームリダクションシンポジウム」のダイジェスト映像を公開
海外の先進事例に触れながら国民の健康増進、経済の発展、税収の安定確保のバランスが取れた解決を図る政策を提言
たばこハームリダクション研究会(事務局長:山森貴司)は、東京都内にて開催した「第二回たばこハームリダクションシンポジウム」のダイジェスト映像をYouTube上に公開しました。
ダイジェスト映像:https://www.youtube.com/watch?v=FvunlT3piJE
「ハームリダクション」とは、個人が健康被害や危険をもたらす行動習慣をただちに止めることができないときに、その行動に伴う害や危険をできる限り少なくしていくことを目的とした、公衆衛生上の実践や政策を指します。「たばこハームリダクション研究会」は、たばこにこそ「ハームリダクション」の考え方が最も当てはまるのではないかと考える有志の団体です。「たばこハームリダクション」の考え方を広く世の中に浸透させるべく、2021年の初開催に続き、この度「第二回たばこハームリダクションシンポジウム」を開催しました。
本シンポジウムでは、自民党次世代たばこ研究会会長の田中和德衆議院議員、同事務局長の宮内秀樹衆議院議員、AOI国際病院 副院長・健康センター長の熊丸裕也氏、経済評論家の門倉貴史氏および当会会員2名(一般生活者)が登壇し、それぞれ公共政策、社会経済、禁煙治療、生活者の視点から見た「たばこハームリダクション」の有効性について議論しました。
今回のシンポジウムでは、たばこハームリダクションを公衆衛生政策に反映させている、海外の先進的な事例を取り上げました。実例として、禁煙支援のため、紙巻たばこの代替品として電子たばこの使用を政府が推奨するイギリスの現状や、スヌース(※1)が浸透しているスウェーデンにおける科学的研究事例が紹介されました。また、加熱式たばこの普及により、たばこハームリダクションという概念が日本でどのように変化してきたかについても意見が交わされました。
(※1) たばこ葉を袋に入れて頬と歯茎の間に挟む嗜好品
日本に関しては、国民の健康増進、経済の発展、税収の安定的確保といった、これまで相反するものと捉えられがちであった各課題について、たばこハームリダクションの考えを取り入れた、バランスの取れた政策を導入することにより解決していくことが望ましい、との提言で締めくくられました。
たばこハームリダクション研究会 事務局長 山森貴司のコメント
「ゼロコロナからウィズコロナへの転換に伴い、ゼロリスクにこだわりすぎる日本社会の不寛容さがもたらす弊害が議論され、バランスを重視する『ハームリダクション』の考え方が徐々に浸透していると実感しています。そこで、たばこにおけるハームリダクションについて議論し、近年登場した加熱式たばこなど、新しい製品の果たす役割も踏まえて、問題提起の場とすることを目的に『第二回たばこハームリダクションシンポジウム』を開催しました。今後も当研究会は、シンポジウムなどを通じて、たばこハームリダクションの社会的意義を広く世の中に伝えてまいります。」
各登壇者のコメント
■田中 和德 衆議院議員(自民党次世代たばこ研究会会長、元復興大臣)
「先日たばこハームリダクションを取り入れた先進的な公衆衛生政策を推進しているイギリスを訪れた際、『電子たばこの健康リスクに対する疫学的な結果が判明するには何十年もかかる。それを待つのではなく、害の少ない電子たばこの推進に早く舵を切ることが、あるべき政治の姿なのではないか』と、同国の国会議員が語っていたことが印象に残っています。
しかし、日本では電子たばこ(※2)が販売されていないため、紙巻たばこから、より害が少ないと考えられる加熱式たばこに切り替えることが『たばこハームリダクション』になると考えます。日本も海外の先進的な政策を参考に、国として税制や喫煙関連規制の見直しを行い、この動きを加速させることを検討すべきです。そのことが、ひいては日本経済にも良い影響を及ぼすのではないでしょうか。」
(※2) ニコチンが入ったタイプの電子たばこ
■宮内 秀樹 衆議院議員(自民党次世代たばこ研究会事務局長、元農林水産副大臣)
「たばこは小売価格の約3分の2が税金です。この税金は国や地方自治体の財源に充てられており、社会の中でなくてはならない貴重な財源であるという大前提があります。嗜好品として楽しみたい方々もいらっしゃる一方で、受動喫煙問題については社会的な規制が必要となり、喫煙者、非喫煙者が共存する社会において税財源をどうするのか総合的に考えられた政策を作っていくというのがあるべき姿です。
一方、イギリスやスウェーデンにおいては、たばこハームリダクションを国の政策に取り入れています。イギリスでは政府が、電子たばこを、紙巻たばこと比較して健康被害を低減できる、禁煙の補助ツールとして推奨しています。
このように健康被害の低減策を国が奨励している現実を見て、日本もハームリダクションについて冷静に議論をしていかなければいけないと考えています。
我が国が直面する課題としては、紙巻たばこよりも加熱式たばこの方が有害性物質の発生が大幅に低減されており、加熱式たばこは健康被害を軽減するたばこであるということを、科学的データによって証明することが必要です。ぜひ厚生労働省にも関わっていただきたいと思いますし、多くの科学技術に携わっている研究者の方々にそういった科学的データを発信していただき、ハームリダクションの考え方への理解を求めていきたいと考えています。様々な立場や観点からエビデンスを基本とした中で社会としてバランスをとった政策を作っていくことが大切なのではないでしょうか。」
■熊丸 裕也氏(AOI国際病院 副院長・健康管理センター長)
「私は医師として禁煙治療に取り組んでいますが、禁煙に成功する方もいれば、どうしてもできなかった方もいらっしゃいます。根性論では根本的な解決になりません。日本社会はリスクを極端に嫌う傾向がありますが、避けられないリスクをどう減らすかを考える方が現実的です。たばこハームリダクションに関連する海外の学会に参加した際、それを欧米の知識人はよく理解していると感じましたし、特にイギリスとスウェーデンは進んでいます。
スウェーデンでは、スヌースという、たばこ葉を袋に入れて頬と歯茎の間に挟む嗜好品が普及しています。このように、ニコチンを、燃やさずに身体に吸収させる場合、がんの原因にはならないという科学的データが既に存在しています。また、イギリスでは科学的根拠に基づいて、英国王立内科学会が電子たばこを推奨しています。しかし、日本は医療関係者の間にも、ニコチンに対する誤解が根強くあります。がんなどのたばこ関連疾患の主な原因はニコチンそのものではなく、燃焼により発生する有害性物質であることは、欧米では常識となっています。
これらの燃やさない製品の有害性物質が少ないというデータは、たばこ会社だけでなく、医師や国立衛生研究所からも発表されています。例えばイタリアの医学部の教授が発表したデータでは、閉塞性肺障害という喫煙により悪化する疾患が、加熱式たばこや電子たばこを使うことにより悪化を防ぐことができると示されています。
我が国において、このようなハームリダクションという概念の科学的データの確保に素早く着手できるのは公衆衛生学だと思います。盲目的な日本の医学界を変えるため、エビデンスをもとに、たばこハームリダクションをもっと普及させていきたいと考えています。」
■門倉 貴史氏(経済評論家、BRICs経済研究所代表)
「コロナ禍において、一定の規制を設けて感染拡大を抑制していくことはもちろん重要ですが、限りなくゼロに近づけようとすると膨大なコストが発生します。たばこも同様で、必ず社会の中には一定数、たばこを止められない人が存在します。ある程度妥協し、喫煙者と非喫煙者が共存できる道を探ることが重要です。コロナにとっても、たばこにとっても、寛容な社会が必要になってきていると感じます。
経済の観点から見ると、たばこ税は用途が限定されていない税金で、国民の生活向上に広く有効活用されています。その税収額は年間約2兆円、消費税率に換算すると約1%分に相当するという試算もあります。一方で喫煙に伴う医療コストは年間3~4兆円と言われています。健康リスクの少ない製品、つまり加熱式たばこへのシフトにより、医療コストがたばこ税収を下回ることが予測され、将来的に社会全体にとってもプラスになるのではないかと考えます。」
■辺見 美咲さん(一般生活者)
「以前、摂食障害に悩んでいたときは食事に罪悪感を覚え、ストレスを抱えていました。しかし、止める、止めないではなく、和らげるというハームリダクションの選択肢を知り、気持ちが楽になりました。
たばこハームリダクションにおいても、国が指針を示してくださると安心して生活に取り入れることができますし、友人にもおすすめしやすいと思います。」
たばこハームリダクション研究会とは
「ハームリダクション」とは、個人が健康被害や危険をもたらす行動習慣をただちに止めることができないときに、その行動に伴う害や危険をできる限り少なくしていくことを目的とした、公衆衛生上の実践や政策を指します。「たばこハームリダクション研究会」は、たばこにこそ「ハームリダクション」の考え方が最も当てはまるのではないかと考える有志の団体です。2021年に初めて「たばこハームリダクションシンポジウム」を開催し、今後もシンポジウムなどを通じて、たばこハームリダクションの社会的意義を広く世の中に伝えたいと考えています。
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