“踏切事故の未然防止をめざして” 5Gネットワーク、MEC技術、AIなどを活用した「踏切内AI滞留検知システム」による実証実験を開始
1.背景
踏切事故は、鉄道運転事故※1の4割を占め、2021年度は217件発生しています。また踏切事故のうち42.9%が、歩行者の渡り遅れに起因するものです※2。踏切事故を防ぐためには、線路内の滞留を検知する踏切支障検知装置※3が設置されることが一般的です。しかし自動車など大きな物体は高精度に検知できる一方で、自転車・ベビーカー・車いす・手押し車や、それらの帯同者など小さな物体の検知精度向上が課題とされてきました。本実験では、5GネットワークやAIを活用した本システムを導入し、小さな物体の検知精度を向上させることで、踏切事故の未然防止をめざします。
2.本システムの特長
本システムは、踏切付近に取り付けた市販のネットワークカメラの映像を、5Gネットワークで「docomo MEC(R)」※4に伝送しVAE※5や背景差分技術※6を活用してAIにより解析することで、線路内に滞留する物体を大小問わず高精度かつリアルタイムに検知するものです。物体を検知した場合、施設管理者へアラート通知します。
また、取得した映像をリアルタイムに「docomo MEC(R)」へ伝送し一定期間蓄積するため、遠隔地からの現場確認用カメラとしても活用することが可能です。
3.本実験の概要
検証期間:2023年9月1日~2024年3月31日
検証場所:常総線の海老原踏切道(守谷駅~新守谷駅間)
検証内容:本システムの、実フィールドにおける実用性検証
●自動車以外の小さな物体(車いす、電動カート、ベビーカー、手押し車および帯同者)の検出精度
●障害物検知の検出精度に関する既存の装置との比較
4.各社の役割
関東鉄道:本実験のフィールド提供
コシダテック:本システムの開発・提供、本システムを構成するAIの提供
ヤシマキザイ:本システムの関東鉄道への提案
NTT Com:本システムを構成する5Gネットワークおよび「docomo MEC(R)」の提供
5.今後の展望
7ヶ月におよぶ本実験により得られた結果を踏まえ、本システムの有効性を確認するとともに、線路内に滞留する物体を検知した場合に接近する列車の運転士にアラート通知する機能などシステム改修を図ります。その後、鉄道各社への本システム導入に向けた提案を行います。また本システムを構成する技術を応用し、線路内への鳥獣侵入、ホームからの転落、駅構内の異物などを検知可能とすることで、鉄道運行の適切化や駅構内の安全対策に貢献します。
※1:鉄道運転事故とは、交通現象に伴って生ずる災害のうち、鉄道の運転によって発生した事故です。
※2:記載のデータは、国土交通省が発表した「鉄軌道輸送の安全に関わる情報(令和3年度)」を参考としたものです。
(https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr8_000051.html)
※3:踏切支障検知装置とは、自動車などが踏切で立ち往生した場合にセンサーが検知し、接近する列車の運転士に異常を知らせる信号を送る装置です。
※4:「docomo MEC(R)」とは、移動通信網においてお客さまにより近い位置にサーバーやストレージを配備しデータ処理する技術であるMEC (Multi-access Edge Computing)を、NTTドコモとNTT Comが連携して提供する国内初のサービスです。
※5:VAEとは、変分オートエンコーダ(Variational AutoEncoder)の略語です。訓練データの特徴を学習し、似たような画像を作成する生成モデルの一種です。
※6:背景差分技術とは、移動物体の検出方法の1つです。 事前に用意した背景画像と、入力画像の差分を計算することにより移動物体を検出することが可能です。
関連リンク
「docomo MEC(R)」のWebサイト:https://www.mec.docomo.ne.jp/
コシダテックのWebサイト:https://www.koshida.co.jp/
*「docomo MEC(R)」は株式会社NTTドコモの商標です。
*「docomo MEC(R)」は、株式会社NTTドコモが提供元であり、 NTTコミュニケーションズ株式会社が代理人として契約締結権限を授与され、包括的な業務受託にもとづき販売しています。
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