EV知財戦略、センサーに活路

ソニー・ホンダモビリティ、テスラ、BYD、Apple、Waymoの関連特許6634件を徹底分析、2大潮流は「AI」と「センサーフュージョン」――「EV未来予測 世界5社の開発戦略」

株式会社 日経BP

 「人工知能(AI)」と「センサーフュージョン」がEV知財戦略の活路に──。日経BP(本社:東京都港区、社長:吉田直人)の調査から、今、世界で大きな注目を集めている次世代電気自動車(EV)企業の開発戦略が浮き彫りになりました。本調査では、ソニー・ホンダモビリティ、米Tesla(テスラ)、中国BYD(ビーワイディー)、米Apple(アップル)、米Waymo(ウェイモ)の5社を対象に関連特許6634件を分析、各社の開発戦略を明らかにしました。


 調査の結果、ソニー・ホンダモビリティ、Tesla、Apple、Waymoの4社が開発分野としてAIに力を入れており、ソニー・ホンダモビリティ、Apple、Waymoの3社が複数のセンサーから高度な情報を抽出して活用するセンサーフュージョンの技術を重視していることが判明しました。これらはEVの安全性を高め、自動運転技術を進化させるうえでの今後の2大潮流といえます。調査の詳細はEVの未来を予測した専門レポート「EV未来予測 世界5社の開発戦略」(日経BP刊/2023年12月20日発行)にまとめています。


 2026年にEVブランド「AFEELA」から第一弾の車両を市場投入する計画のソニー・ホンダモビリティは、ホンダとソニーグループのシナジー(相乗効果)で先行他社からの後れを挽回する戦略をとっていることが明らかになりました(出願件数はホンダ2284、ソニー1095)。巻き返しの鍵を握るのが、センサーフュージョンとAI分野におけるソニーの特許ポートフォリオです。センサーフュージョン分野では、撮像装置(カメラ)におけるイメージ分析技術関連の出願が目立ちます。例えば、高性能センサーLiDARの点群データとカメラの撮像内位置を対応付ける技術はその一つ。センサーフュージョンの課題であるデータ処理量の抑制や省電力化を実現するものです。また、カメラ方式(撮像データ)と則長方式(デプスデータ)を組み合わせた物体認識技術は、自動駐車を支える技術として注目されます。AI分野では、運転者の運転挙動をAIでスコアリングし、スキルや安全性を可視化する技術が出願されています。


 自動運転分野では、Waymoが開発競争のリーダーの1社であるといえます(出願件数829件)。同社の特許を分析すると完全自動運転志向が強いことが明確です。例えばセンサーフュージョン分野では、一部のセンサーの劣化や不良を検知して最適補完する技術がその典型。Googleマップとの組み合わせによる開発戦略も浮き彫りになりました。LiDARやカメラによるセンサー情報を基にした、道路や地図情報の収集、活用、歩行者や緊急車両の検知などに関わる出願が多数確認できます。


 Apple(出願件数539)は自動運転や通信、車両のハード関連で存在感を示しています。注目の出願の一つは、高速道路の合流など運転の難易度が高い状況でも安全な自動運転を実現するため、各種センサーからのデータをAIで分析して最適制御する技術です。また、自動運転モードでテレビ会議などを行う際に仮想現実(VR)酔いを抑える没入型ディスプレーに関する出願は、ユーザー体験向上に直結する技術で、メタバース時代を先取りした戦略といえます。


 EV市場で先行するTeslaの出願件数は5社のうち最も少ない230件ながら、AI関連のほか、熱マネジメントや自動運転関連、車両のハード関連まで主要技術を幅広く出願しており、総合力を示しています。自動運転技術では、LiDARを用いないカメラ方式にこだわる戦略で、快適性追求、デザイン志向なども強みといえます。


 BYDはAIやセンサーフュージョンに注力する他の4社とは異なる開発戦略が浮き彫りになりました。ブレードバッテリーを内蔵したEV専用プラットフォーム「e-Platform3.0」と複数の充電プラグを同時接続して充電時間を短縮できるマルチガンを組み合わせ、高いコストパフォーマンスや急速充電を訴求点とした開発戦略が見てとれます。

 

■関連特許6634件を分析


 本調査は、次世代EV企業を対象に、知財情報分析によって各社の開発戦略をあぶり出したものです。ソニー(主要関係会社含む)、Tesla、Apple、Waymoについては自動車関連特許、ホンダとBYDについてはEV関連特許を対象に、かついずれも取り組みが活発化した2011年以降の現存出願6634件を分析に活用しました。


 これら5社は、既存の自動車メーカーとは異なる発想で製品やサービスを生み出す新興のEVメーカー*1です。注目度が高い半面、秘密裏に開発を進めていたり、具体的な製品の市場投入が計画中だったりすることもあって、開発戦略がベールに包まれているといっても過言ではありません。そこで、本調査ではIPランドスケープ*2と呼ばれる手法を用いて知財情報を解析、市場動向の分析と合わせて各社の開発戦略やEV発展の方向性を予測しました。


*1 BYDはプラグインハイブリッド車(PHEV)の開発も手掛けています。

*2  IPランドスケープとは、特許などの「Intellectual Property(知財)」と、景観や風景を意味する

「Landscape」を組み合わせた造語で、知財情報解析を活用して知財経営に資する戦略提言を図ることです。


 前述したAIやセンサーフュージョンの潮流をはじめ、本調査で見えてきた各社の開発戦略の注目ポイント以下の表にまとめました()。



■加速するxEV開発、トヨタやVolkswagenなど14社を簡易分析


 EVをはじめ電動化の開発に力を入れているのは次世代EV企業だけではありません。むしろ、既存の自動車メーカーはかなりの経営リソースを投入してEVをはじめxEV(電動車)の開発を加速しています。そこで、電動化関連の世界トップ企業についても簡易分析を実施しました。

 具体的には、トヨタ自動車、Hyundai Motor、BYD、Robert Bosch、Audi、Geely、BMW、デンソー、Volkswagen、Audi FAW NEV、SUBARU、BAIC、Ford Motor、ホンダの14社です。1万9145件のグローバル特許出願を解析しました。

 例えばSUBARUのIPC別ポートフォリオマップによれば、総じてハイブリッド車(HEV)関連が減少する一方、EVのアンダーボディーにおける電動装置の配置最適化への傾注(伸びおよび件数の両面)が認められました(図2)。その多くがトヨタ自動車との共同発明であることから、両社の共同開発車種である「bZ4X」と「ソルテラ」に採用された蓋然性が高いといえ、注目に値します。



■分析・未来予測レポート『EV未来予測 世界5社の開発戦略』について

 

 ここまで紹介してきた次世代EV企業5社から電動化関連のグローバル14社までの比較分析および個別分析の詳細は、2023年12月20日発行の分析・未来予測レポート『EV未来予測 世界5社の開発戦略』に掲載しています。


 次世代EV企業として世界の注目を集めるソニー・ホンダモビリティとBYD、Apple、Tesla、Waymo。知財分析から各社の開発戦略をあぶり出し、EVの未来を予測したのが本レポートです。知財情報解析であるIPランドスケープを活用し、自動運転・デザイン・UI(ユーザーインターフェース)・電池・熱マネジメントなどの新しい体験を実現する技術を深掘り分析し、将来を予測しています。


 具体的な事例や関連記事を多用し、かつ全ての分析結果を図にまとめて視覚化しているので、開発部門から経営企画、マーケティング部門まで理解、活用いただけます。さらに、トヨタ自動車や独Volkswagen(フォルクワーゲン)、韓国Hyundai(ヒョンデ)、米Ford Motor(フォード・モーター)など世界トップメーカー14社の全体分析結果も収録しています。ぜひ、本レポートを貴社の経営戦略、事業開発戦略の策定にご活用ください。


本レポートの紹介ページ:https://info.nikkeibp.co.jp/nxt/campaign/b/288620/


【目次】


第1章 本書目的ならびに各社注目ポイント


第2章 分析対象となる母集団の設定


第3章 マクロ分析(注目プレイヤーのグローバル俯瞰)

出願人×IPCマトリクスマップに基づく全体俯瞰/各社傾注技術の俯瞰

EV関連3社の筆頭IPC百分率マップによる傾注技術の俯瞰

ビジネス関連発明3社の全部IPC百分率マップによる傾注領域の俯瞰

自動運転関連5社分析による傾注センサ方式の俯瞰


第4章 個社分析:ホンダ編

自動運転分析(自動駐車×ワイヤレス給電への傾注/事業上の狙い)

グリッド/V2G分析(電力業界参入の足掛かり)


第5章 個社分析:ソニー編

センサフュージョン分析①(鍵はソニーセミコンダクタソリューションズ)

センサフュージョン分析②(自動運転保険適用の必然性)

センサフュージョン分析③(センサ関連の重要特許一覧)

AI分析(×AIによる機能/性能強化)

意匠分析(エンタメカーについての将来予測の鍵)

フロントウインドー全面GUIの採用(迫力ある映像空間の鍵)

外部向けメディアディスプレーの採用(周囲との対話の鍵)

ソニー・ホンダモビリティ製EVの将来予測

●論述強化 自動駐車×ワイヤレス給電の普及予測


第6章 個社分析:BYD編

重要特許分析①(ブレードバッテリーの競争力を支える特許群)

●論述強化 自動車分野の中国勢のグローバル動向(BYDの圧倒的存在感)

●論述強化 EV分野におけるBYDの脅威分析①(ブレードバッテリー関連特許)

重要特許分析②(熱マネジメントの競争力を支える特許群)

●論述強化 EV分野におけるBYDの脅威分析②(電池制御関連特許)

重要特許分析③(商品訴求力を高めるマルチガン関連特許)

意匠分析(マルチガン関連の知財ミックス戦略)

BYDの分析結果まとめと将来予測

●論述強化 デザイン力の源泉分析(BYD躍進の鍵となるデザイン経営)


第7章 個社分析:Waymo編

自動運転分析①(全方位戦略)

●論述強化 完全自動運転志向①(突出した先駆性)

自動運転分析②(重要特許一覧)

●論述強化 完全自動運転志向②(ビジネス志向)

自動運転分析③(高速合流時の信頼確保)

自動運転分析④(ロボットタクシー用途)

自動運転分析⑤(ユーザーとの連携)

自動運転分析⑥(センサの省電力/最適化)

自動運転分析⑦(AI活用による高性能化)

ユニークIPC分析(センサ関連全方位戦略)

●論述強化 LiDAR分野での突出した先駆性

マップ分析(グーグルマップとのシナジー戦略)

● 論述強化 マップ情報収集/活用によるシナジー志向

発明者分析(CMU/SUの2大陣営)

● 論述強化 技術力の源泉分析(突出したスター集団)

Waymoの分析結果まとめと将来予測


第8章 個社分析:Apple編

ソフト/ハード関連仕分け

ソフト関連分析 自動運転/通信関連仕分け

自動運転の分析 重要特許①(自動運転×メタバース)

●論述強化 中途入社組の圧倒的存在感

自動運転の分析 重要特許②(×AIによる機能/性能強化)

自動運転の分析 重要特許③(Apple既製品とのシナジー)

通信関連の分析 重要特許①(Intelのスマホ半導体関連)

通信関連の分析 重要特許②(クラウド/セキュリティー関連)

通信関連の分析 重要特許③(5G/デジタルキー関連)

ハード関連分析

●サスペンションなど(VR酔い抑制へのこだわり)

●シート(乗り心地/快適性の追求)

●ウインドーなど(機能性/意匠性の追求)

発明者分析(デザインドリブン志向の協創戦略)

●ライティング(エンジニア/デザイナーによる協創)

●ウインドー(高度な意匠性/快適性の追求)

●コンピューター(UX向上の追求)

●論述強化 エンジニア/デザイナー融合による異次元の協創

Appleの分析結果まとめと将来予測


第9章 個社分析:Tesla編

傾注分野特定

Tesla:HVAC/熱マネジメント分野の関連の重要特許一覧

重要特許①(統合的熱マネジメント)

重要特許②(熱マネジメントの鍵となるオクトバルブ)

重要特許③(HVAC 最適化)

重要特許④(HVAC 個別化)

●論述強化 Tesla/Appleの熱マネジメントを支えた天才発明者

自動運転/AI分析

重要特許①(DeepScale 買収によるAIへの取り組み進化)

重要特許②(Summon/Autopilot 特許)

重要特許③(Autopilotの進化を支える発明者)

車両ハード分析

重要特許①(快適性の鍵となるモノポストシート)

重要特許②(個別化の鍵となる生体センシング)

重要特許③(ものづくり改革の旗手としての片鱗)

意匠分析(デザインファースト志向)

●論述強化 半導体関連の開発取り組み

●論述強化 徹底したUX向上取り組み

●論述強化 SDGs銘柄としての圧倒的存在感

Teslaの分析結果まとめと将来予測


第10章 世界5社将来予測

世界5社の将来予測 総まとめ

世界5社の将来予測(BYDの強みをデザイン面からあぶり出したブラッシュアップ版)

ブラッシュアップ版 プロセス


第11章 電動化関連のグローバル14社分析

トヨタ自動車/Hyundai Motor/ホンダ/BYD/Ford Motor/Robert Bosch/BAIC/Audi/Geely/BMW/デンソー/Volkswagen/FAW/SUBARU


第12章 テーマ別分析

アップルカー開発行為の「見える化」/電池交換式ビッグ3の要注目特許紹介(Aulton、Geely、NIO)/BYDのデザイン力の源泉分析 ほか


【分析・未来予測レポート『EV未来予測 世界5社の開発戦略』 著者プロフィル】

山内 明(やまうち・あきら)

知財ランドスケープ 代表取締役社長CEO

弁理士、シニア知的財産アナリスト(AIPE 認定)講師、大学、大学院では機械制御工学を専攻し、大手メーカーでの開発業務、大手特許事務所での特許出願権利化業務、商社系知財戦略ベンチャーやシンクタンクでの知財コンサルティングの業務に従事する。シンクタンク時代にIPランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略を確立し、互教の精神で啓発活動と手法改良に努める。現在は、最新手法 IPランドスケープ 3.0 実践によるビジネスコンサルティングに取り組んでいる。2019年には JAPIO 理事長賞(活用研究功労者)を受賞。2020 年以降、毎年IAM Strategy 300 に選出される。主な著書に『知財情報戦略 自動運転編』(日経BP)などがある。


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業種
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吉田 直人
上場
未上場
資本金
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設立
1969年04月