日本の若年女性におけるウェルボディの実態 | 若年女性における低体重の5人に1人、普通体重の2人に1人が「痩せたい」
より苦しく・切迫感のあるダイエットを行っているのは「普通体重」とされる若年女性たち低体重、 普通体重のいずれも5割以上が体型へのネガティブ発言を受けた経験あり。最も影響力があるのは「母親」*1
女性が精神的・身体的・社会的に真の健康を知ることは重要です。「マイウェルボディ協議会」は、さまざまな情報や他者に惑わされることなく、生涯を通じて自ら健康な身体を選択できる社会の構築を目指しています。この協議会は、日本の若年女性たちのボディイメージに関する意識を調査するため、全国の16歳~23歳の女性1000名を対象に、『日本の女子高生・女子大学生における痩せ行動とその影響に関する調査』を実施しました。本調査により、若年女性の自分の体型に対する認識や、ダイエット意識を明らかにし、ひとりひとりが自分らしく、心地よくあり続けられる健康な身体、すなわち“ウェルボディ”な社会の実現を目指しています。
本調査の結果から、16歳から23歳の若年女性のうちBMI18.5Kg/㎡未満の「低体重」に該当する人が24.9%、BMI18.5Kg/㎡以上25Kg/㎡未満の「普通体重」に該当する人が70.2%、BMIが25Kg/㎡以上で「肥満」に該当する人が4.9%であることが明らかになりました。
本調査では、特に低体重と普通体重に着目して検討した結果、普通体重の約半数(53.4%)が自分を「太っている(とても太っていると思う、やや太っていると思う計)」と認識していることがわかりました。この認識は、低体重女性の約2割(18.8%)にも見られます。また、痩せたいという欲求についても、低体重の約16%、普通体重の約半数が「とても痩せたい」と感じていることが判明しました。
また低体重の人の約6割、普通体重の約9割にダイエット経験があり、もしくは現在ダイエット中であると回答しています。さらに、同じダイエット経験者の中でも、普通体重の人の方が他者からの評価を気にし、罪悪感や過度な痩せ欲求を伴う苦しいダイエットを行っていることが判明しました。
また、「痩せたい」という欲求を持っている女性は、低体重の人でも約半数以上、普通体重の人では約7割が、体型に対して周囲から何らかのネガティブなコメント(「ちょっとぽっちゃりしたね」など)を受けた経験があることがわかりました。その発言者としては、母親、きょうだい、父親といった家族が上位を占める結果となりました。たとえ身近な家族であっても、周囲からの何気ない言葉が影響を与え、他者目線の自己評価を助長し、若年女性の過剰な痩せ意識や行動につながる危険性が示唆されました。
本協議会では、このような若年女性の現状を社会課題と捉え、生涯にわたる健康な身体の基盤を作るウェルボディの実現に向けて、社会的・精神的・身体的な当事者のサポートに取り組んでまいります。
*1: 全国の16歳~23歳の女性1000名のうち、痩せたい欲求がある人739名対象。特に低体重と普通体重にフォーカスし検討。
■調査サマリ
1. 自身のことを「やや太っている」と認識している割合は、低体重が16.6%、普通体重は45.1%であり、「とても太っている」と認識している割合は、低体重は2.2%、普通体重で8.3%であった(図②)。
2. BMI別に痩せたいという欲求を見ると、「少しだけ痩せたい」という意識は、低体重が33.4%、普通体重は40.5%と大きな差は見られなかった。一方で、「とても痩せたい」意識は普通体重の女性の47.5%、低体重女性では15.7%であった(図③)。
3. ダイエット経験について、低体重女性では28.6%が「現在ダイエット中」、33.4%が「過去にダイエット経験あり」と回答した。普通体重では、51.3%が「現在ダイエット中」、35.1%が「過去にダイエット経験あり」と回答した。どちらのBMI区分においても、半数以上の女性にダイエット経験があることが明らかになった(図④)。
4. ダイエット経験がある女性のうち、ダイエットをするきっかけとして「自分に自信を持てると思ったから」が、低体重では41.4%、普通体重では53.2%と最も高い割合を占め、「痩せ=自信に繋がる」という価値観がうかがえる(図⑤)。
5. ダイエット経験者の意識を見ると、低体重、普通体重のどちらも「まわりの人は痩せている人の方がかわいいと思っている」「まわりの人の体型といつも比較してしまう」が上位2位を占めており、周囲の評価や周囲との比較を気にする傾向が見られた。また、同じダイエット経験者の中でも普通体重の方が「痩せるための努力は苦しい」「食べた後で食べてしまった罪悪感がある」「もっと痩せたいという思いで頭がいっぱいである」などの項目で低体重の人より10ポイント以上高い割合を示していた。これにより、普通体重のグループは、より他者からの評価を気にし、罪悪感や、痩せ欲求を抱く苦しいダイエットを行っている傾向がみられた(図⑥)。
6. ダイエット経験者のなかで現在もダイエットを行っている回答者のうち、低体重、普通体重に共通して見られた行動は、「自宅で運動する」「毎日体重を測る」「ダイエットアカウントを見る」などであった。さらに、低体重では「毎日鏡で体型チェック」「ダイエットアカウントを見ている」「1日3食食べない/食事を抜く(欠食)」「おなかがすくまで何も食べない」など、ダイエットに対する勤勉性が普通体重の女性よりもやや高い割合である傾向が見られた(図⑦)。
7. 痩せたい欲求がある若年女性のダイエットの情報源は、低体重、普通体重ともにInstagramがトップで、次いでYouTube、TikTokと続く。BMI区分に関わらず、ビジュアル発信をメインとした媒体が上位3位を占めていることから、SNS上のコンテンツが若年女性の目指す体型の具体的なイメージに強く影響を与えている可能性が示唆された。(図⑧)。
8. 痩せたい欲求がある若年女性のうち、低体重では54.2%、普通体重では71.1%が体型に関してネガティブな発言を受けた経験を持つことが判明した。どちらも、特に母親からの発言と回答した女性が高い傾向にあり、身近な家族からの何気ない言葉が、痩せたい欲求を増加させる可能性を持つことが示された(図⑨)。
『日本の女子高生・女子大学生における痩せ行動とその影響に関する調査』 調査概要
調査期間:2023年12月16日(土)~12月17日(日)
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の16歳~23歳女性 1000名
事前聴取:身長、体重(BMI)・痩せたい意識(4段階)
■調査結果詳細
16~23歳の若年女性の約4人に1人がBMI数値18.5Kg/㎡未満の「低体重」に該当。
全国の16歳~23歳の若年女性1000名の身長および体重からBMI数値を算出したところ、BMI値が18.5 Kg/㎡未満(以下、低体重)は24.9%、BMI18.5-25.0Kg/㎡未満(以下、普通体重)が70.2%、BMI25Kg/㎡以上の「肥満」に該当する人が4.9%であることがわかりました。普通体重の人が過半数を占めているものの、4人に1人がSNS上で話題のシンデレラ体重*2に近しい「低体重」に該当しました(図1)。
*2:SNS上で話題となっている言葉で、モデルのように細く見える体重のこと。一般にBMI数値18.0 Kg/㎡で算出する。
図1 対象者のBMI割合
低体重でも「痩せたい」という欲求がある人は合計で約5割!低体重の人の約2割は自分のことを「太っている」と認識していることも判明
自分の体型に対する認識をBMI別に見ると、「自分は太っている」と回答した人が低体重では2割近く(18.8%)であったのに対し、普通体重では半数以上(53.4%)にのぼりました(図2)。さらにBMI別の痩せ欲求を見ると、「とても痩せたい」「少しだけ痩せたい」の合計割合は、低体重では49.1%であり、普通体重では88%にも上りました。どちらも「自分は太っていると思う」という自己認識よりも高い数値となっています(図3)。
図2 自身の体型に対する認識の割合
図3 痩せたい・太りたいと思う割合
低体重、普通体重のいずれも半数以上がダイエット経験あり。過剰なダイエットの影に潜む「痩せることで自信が持てる」という価値観。
低体重の約62%にダイエット経験があり、28.6%がダイエット継続中とであることがわかりました。普通体重では約86%にダイエット経験があり、そのうち51.3%が現在もダイエットを継続中であるとわかりました。BMIにかかわらず、過半数の女性がダイエットに励んだ経験があることがうかがえます(図4)。
ダイエット経験がある女性のうち、ダイエットをするきっかけは「自分に自信を持てると思ったから」が低体重で41.4%、普通体重で53.2%と最も高い割合で、痩せることが自己肯定感につながる価値観がうかがえます。またその他にも「自身で鏡を見て痩せたいと思ったから」は、低体重で36.5%、普通体重で48.3%、「痩せたら今よりきれいになれると思ったから」は低体重で31.3%、普通体重で46.3%と、いずれも上位を占めていました。このことから、若年女性がダイエットに取り組むきっかけとして、「痩せ=きれい」の価値観が背景にあることが示唆されます(図5)。
図4 ダイエット経験の割合
図5 痩せるための行動のきっかけの割合(複数回答)
6割以上の若年女性が「太ることに恐怖心」を抱えている実態が浮き彫りに!普通体重は、低体重と比べてより高い割合で罪悪感や、痩せ欲求を抱えた苦しいダイエットを行っている
ダイエット経験者の意識を見ると、低体重(155名)、普通体重(606名)のどちらも「まわりの人は痩せている人の方がかわいいと思っている」「まわりの人の体型といつも比較してしまう」が上位2位を占めており、周囲の評価や周囲との比較を気にする傾向があることが判明しました。また、低体重の半数以上(55.4%)、普通体重の7割以上(72.0%)が「痩せるための努力は苦しい」と思っている一方で、低体重、普通体重いずれの人も6割以上の人が「太ってしまうことが怖い(低体重:66.1%、普通体重:67.6%)」と感じていることも顕在化しています。
また、同じダイエット経験者の中でも、低体重と普通体重との間で、比較的差がみられる項目に着目すると、「短期間で楽に痩せられる方法を考える」「痩せるための努力は苦しい」「食べた後で食べてしまった罪悪感がある」「もっと痩せたいという思いで頭がいっぱいである」「まわりの人は私のことを太っていると思っている」などであり、いずれも普通体重の方が10%以上高い割合でした。このことから、普通体重の方がより他者からの評価を気にし、罪悪感や、痩せ欲求を抱えた苦しいダイエットを行っている傾向がうかがえます(図6)。
図6 ダイエット行動の意識(動機)の割合(複数回答)
またダイエット経験者の中で今もダイエットを継続している若年女性が実際にどのような行動をとっているのかを見ると、低体重(71名)、普通体重(360名)の人ともに「自宅で運動する」「毎日体重を測る」「ダイエットアカウントを見ている」などの行動が共通して高く出ていました。さらに低体重は普通体重と比べて、「毎日鏡で体型をチェック(45.2%)」「ダイエットアカウント見る(37.3%)」「1日3食食べない/食事を抜く(欠食)(32.5%)」「おなかがすくまで何も食べない(26.5%)」「自分が食べる食物のカロリー量を計算する(23.2%)」などの項目の割合が若干高い傾向にあり、ダイエットに対する勤勉性が特徴として見られました(図7)。
図7 ダイエットの内容に関する割合(複数回答)
ビジュアル発信をメインとしたSNSの影響が上位を占めていることが明らかに。
痩せたい欲求がある若年女性のダイエットの情報源は、低体重、普通体重ともにInstagramが1位で(低体重54.5%、普通体重:61.9%)、次いでYouTube(低体重:51.0%、普通体重:52.1%)、TikTok(低体重:40.3%、普通体重:37.7%)とビジュアル発信をメインとしたSNSが上位を占めました。低体重、普通体重に関わらず、痩せたい欲求がある若年女性が「健康」「痩せ」「ダイエット」に関する情報を入手する先はSNSが中心に置かれていることがわかります。SNS上で投稿される画像や動画の中には、体型が細く見えるフィルター加工が施されているものも存在します。痩せたい要求がある女性にとって、SNSで展開される視覚的なコンテンツが、理想とする体型の具体的なイメージに起因している可能性が示唆されます(図8)。
図8 ダイエットの情報源(複数回答)
身近な家族からの何気ない言葉が痩せたい欲求につながる可能性も。体型についてネガティブな発言を受けた経験は、低体重、普通体重ともに半数超え。
痩せたい欲求がある若年女性のうち、低体重(122名)では54.2%、普通体重(617名)では71.1%と、半数以上の割合で体型に関してネガティブな発言を受けた経験を持つことが判明しました。ネガティブな発言を受けたことがある若年女性の中では、低体重、普通体重どちらにおいても、特に母親からの発言で嫌な思いをしたことがあると回答した人が最も多く(低体重:34.6%、普通体重:48.6%)、次いで父親、祖父母、きょうだいなど身近な家族からの何気ない言葉が影響を与えていることがわかりました(図9)。
パーソナルハラスメント(見た目や性格など個人的な特徴に対して行われる不適切発言や行為)という考えが日本国内にも浸透する一方で、身近な存在であるために発せられる家族からの気兼ねない言葉によって若年女性が気に留め、痩せたい欲求の増加につながる可能性も考えられます。
図9体型についてネガティブな発言を受けた経験(複数回答)
「マイウェルボディ協議会」代表幹事 コメント
日本では男性の肥満が増えて来ており、脳卒中や糖尿病など様々な病気の原因となっています。しかし、これとは反対に20代の痩せた女性の割合は20~25%と先進国の中で最も高くなり、月経の異常や、骨粗鬆症、糖尿病など様々な疾患のリスクとなることが新たな問題になってきています。
私たちは、このような肥満や痩せをもたらす原因の1つは社会にあると考えています。例えば、痩せた女性が増えている原因の1つは、各媒体などを介して「痩せたい気持ちを過剰に作り出してしまう社会」かもしれず、社会全体で考えるべき課題とも言えるでしょう。
私たちはこの課題に対して皆さんと共に、ひとりひとりが自分らしく、心地よくあり続けられる健康な身体、ウェルボディ、を育める社会を目指して、活動を進めたいと考えています。
田村 好史先生 マイウェルボディ協議会 代表幹事
順天堂大学国際教養学部 教授 順天堂大学大学院医学研究科 スポーツ医学・スポートロジー/代謝内分泌内科学 教授
[研究分野・活動]糖尿病学・代謝学・運動生理学・運動疫学などスポーツと医学による予防医学(スポートロジー)を展開
すべての女性が、自分らしく生き生きと健康的な生活を送れる社会の実現を目指しています。女性の健康課題は、身体だけでなく心の健康や幸福度にも深く関わります。
現代社会では、SNSなどを通じた偏った情報が健康観に影響を与えていることが課題となっています。私たちは、健康に対する正しい知識とリテラシーを持ち、社会の中で生じている誤認識を改めることが重要です。
この新しい協議会の立ち上げにあたり、特に重要なのは若い世代、高校生や大学生の気づきの場の提供です。身体と心の健康を育むことの大切さを理解することから始めます。将来的にこの取り組みを全ての人々に広げていくことを目指しています。
私たちの活動を通じて、健康で自分らしい生き方を選択できる社会の実現に向けて、皆さんと共に歩んでいきたいと思います。
室伏 由佳先生 マイウェルボディ協議会 副代表幹事
順天堂大学スポーツ健康科学部/大学院スポーツ健康科学研究科 先任准教授、株式会社attainment 代表取締役
[研究分野]女性の健康課題、アンチ・ドーピング(スポーツ医学)、スポーツ心理学
[スポーツ活動]2004年アテネオリンピック陸上競技 女子ハンマー投 出場
人生100年時代に、健康への関心が高まるなかで、過度な情報社会において
自分らしく健康な身体を保つことが困難になっていることも、注目すべき課題の一つです。
身体的にも精神的にも、そして社会的にも良好な状態が継続すること。それがウェルビーイングなら、
その基盤であるひとりひとりの身体の健康がまず、何よりも重要だと私たちは考えます。
私たちマイウェルボディ協議会が目指すのは、ひとりひとりが自分らしく、
心地よくあり続けられる健康な身体=“ウェルボディ”を自らの意志で選択できる社会。
それは個人だけではなく、社会全体で取り組まなくては成しえない挑戦なのです。
すべての人にウェルボディを。この目標をともに実現していくパートナーを募集しています。
企業、学校、自治体、NPO、様々なステークホルダーのみなさんが集まるからこそ
できる取り組みを、一緒に実現してまいります。
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