フュージョンエネルギー発電実証プロジェクト「FAST」始動
トカマク型のフュージョンエネルギー炉で、日本から最速で発電実証を目指す
カーボンニュートラル社会でのエネルギー源に向けた新たな一歩として、フュージェンエネルギー発電の実証プロジェクト FAST(Fusion by Advanced Superconducting Tokamak)が始動することをお知らせします。
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FASTはフュージョン炉内で実際に重水素(Deuterium)と三重水素(トリチウム:Tritium)による核融合反応(D-T)による燃焼プラズマの生成・維持を行うとともに、エネルギー変換、燃料システムを一体化したフュージョンエネルギー発電システムを実証するプロジェクトです。プラズマの閉じ込め方式には、データベース構築が最も確立し、コストと技術のリスク管理が可能なトカマク型を採用しています。2030年代のフュージョンエネルギー発電実証を実現するため、いまだ残る技術課題を解決する重要な通過点となるべく、設計は炉工学の進展に寄与するエネルギー出力とプラズマ持続時間を考慮して進めます。
本プロジェクトは京都フュージョニアリングを中心に、国内外の最先端の大学や研究機関に所属する研究者や、国内産業パートナー、国際連携パートナーと共同で推進していきます。これにより現在までの世界の核融合科学技術を基盤にしながら、最先端の炉工学技術へと統合することで技術課題を解決するとともに、研究開発から実用化への技術ギャップを埋め、産業化の基盤構築を目指します。
【FASTの背景と目的】
FASTの主要な目的は、フュージョンエネルギーの社会実装に必要な技術課題を解決し、それを統合環境下で運用し、実証することです。これまでのフュージョンエネルギー研究開発では、短時間のプラズマ性能検証に成功していますが、発生エネルギーの外部出力としての利用、またその燃料を増殖するシステム、さらにはそれらを統合したエネルギー技術の確立にはいまだ多くの課題が残っています。これら課題に対する個別技術の開発は進められていますが、実際の燃焼プラズマ装置、特に核融合反応で生成された中性子を用いた実証事例はなく、それら個別技術を統合し安全なエネルギーシステムを構築するには、現状と社会実装の技術レベルにまだ大きな隔たりがあります。
FASTはこれらの技術課題の解決と技術ギャップを埋めるべく、原型炉を含む世界の様々な商業化を目指す商業炉に向けて技術開発の場を新たに提供するものです。日本がこれまで培ってきた核融合研究とモノづくり技術を基盤に、安全でクリーンな次世代エネルギー産業の確立、サプライチェーンの構築に向けて、最速で必要不可欠、かつ効率的に技術課題を解決し、世界のフュージョンエネルギー開発に大きく貢献することを目指します。
【世界のフュージョンエネルギー動向と、FASTの位置づけ 】
フュージョンエネルギーの産業化に向けて、米国や英国、中国などの国々がすでに独自のプログラムを進行させています。米国ではエネルギー省支援の下で民間スタートアップがその開発をリードしています。英国では公的機関である英国原子力公社(UKAEA)の Spherical Tokamak for Energy Production(STEP)プロジェクトが、また中国でも核融合の要素技術を獲得するための大規模試験施設群「CRAFT」やITERに先立ってD-T運転を目指すトカマク型核融合実験炉「BEST」等のプロジェクトが進行しています。
日本政府も「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を掲げ、産業化に向けた開発計画の大幅な前倒しと、世界に先駆けた 2030 年代の発電実証の達成を目指しています。FASTは、この新たな国家目標を達成するための民間主導プロジェクトであり、日本を中心としたチーム体制を構築し、フュージョンエネルギー発電技術を実証するための装置の建設を目指します。
【FASTで実証可能な技術課題】
2030年代にフュージョンエネルギーによる発電技術を実証するために、FASTを通じて以下の技術的課題を解決します:
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D-T燃焼の実証 - フュージョンエネルギーの中核技術であるトリチウムを使用した燃焼プラズマの生成と持続、制御。
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エネルギー取り出しと利用 – 核融合反応により発生するエネルギーの取り出しと変換(発電等)と利用。
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トリチウム生成と燃料サイクルの実証 – 核融合反応の燃料となるトリチウムを増殖し、抽出、利用する技術の実証。
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システムインテグレーション –フュージョンエネルギーシステムを統合し、安全で持続的に運転するプラント技術の開発と実証。
【FASTの技術概要】
FASTは、燃焼プラズマとエネルギー変換、燃料システムを一体化したフュージョンエネルギー発電技術システムです。実現すれば世界初となる計画です。コンパクトな装置サイズと比較的効率的なコストながら、工学的進展に寄与するエネルギー出力と持続時間で核融合燃焼プラズマを維持、制御します。また、発生するエネルギーを高温で安全に取り出し、電力等の産業利用可能な形に変換する技術を実証します。加えて、燃料であるトリチウムをシステム内で生成・利用する燃料サイクルを実証し、運転保守や廃棄物処理を含めて持続可能な産業システムとしての技術体系を構築します。
プラズマの閉じ込め方式にはITERやJT-60SAを筆頭に最も信頼性とデータベース構築の進んだトカマク型を採用し、そのなかでもコスト効率が高く短い建設期間が期待できる低アスペクト比トカマク配位を選択。D-T核融合反応で5万〜10万キロワットの出力、1000秒の放電時間を目指します。マグネットには高温超伝導(HTS)コイルを採用し、高温ブランケットを介して発電だけでなく熱や中性子の多目的利用技術を試験し、プロジェクト期間中で合計1000時間のフルパワー運転を計画しています。
これらの基礎設計をもとに今後詳細設計を進め、商業的なフュージョンエネルギー発電の早期実現を目指します。
【産学連携によるプロジェクト推進と今後の展開】
FASTは、京都フュージョニアリングをプロジェクトリーダーとして、国内外の主要大学や研究機関との協力の下に推進していきます。今後は、まず以下記載のプラズマ研究者と炉工学研究者、専門家による概念設計チームを組織し、2024年内すぐに設計活動を開始します。
また、FASTは並行して京都フュージョニアリングの株主である三井物産、三井不動産、三菱商事、丸紅、フジクラや、プラントにおける建物の安全解析に実績のある鹿島建設 、また古河電工も含む商社、不動産会社、メーカー、ゼネコン等のJ-Fusion参加企業を中心とした産業パートナーと協力し、プラント設計・安全解析やサイト公募、立地準備等の取り組みを順次加速させていきます。
2025年度内の概念設計完了を目指し、詳細設計へと移行するタイミングで技術、資金、政策等を含めた内外環境を精査し、実行の是非を含む計画の実効性の判断を別途行う予定です。
今後も設計作業を行う研究者や技術者の参加、立地準備、関連法規制対応を推進するため、J-Fusion参加企業とも連携をしながら産業パートナーや国際パートナーを広く募集していきます。
協力研究者一覧:
東京大学 江尻晶教授
東北大学 飛田健次教授
東北大学 波多野雄治教授
東京大学 小野靖教授
東京科学大学 筒井広明准教授
名古屋大学 藤田隆明教授
京都大学 田中仁教授
九州大学 花田和明教授
京都フュージョニアリング社 小西哲之CEO
Tokamak Energy社 高瀬雄一教授
Prinston Plasma Physics Laboratories 小野雅之博士
General Atomics社 Brian Grierson博士
Canadian Nuclear Laboratories Sam Suppiah博士
Fusion Fuel Cycles社 Ian Castillo博士
今後の具体的な進捗や成果は、ウェブサイトや学会等での発表を通じて、積極的に広く発信していきます。
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