体を成す からだをなす - FRAC Grand Large 収蔵作品セレクション展

Faire Corps / Selection from the collection of the FRAC Grand Large

エルメス財団

©Nefeli Papadimouli- Collection FRAC Grand Large — Hauts-de-France

エルメス財団は、ダンケルク(フランス)にあるフランスの現代美術地域コレクションFRAC Grand Large(フラック・グラン・ラルジュ)が所蔵する作品とともに、グループ展「体を成す からだをなす」を開催いたします。銀座メゾンエルメスル・フォーラムでは、現代社会とアートの課題への取り組みとして、近年、他機関とのより一層の協働を通じたエコシステムを構想する試みを続けており、本企画は、そのひとつのかたちとして生まれました。

FRAC Grand Large は、前身であるFRAC Nord ― Pas de Calais(フラック・ノール=パ・ド・カレ)がリールに設立された1982年から、1996年にダンケルクへの移転を経た現在までに、750人のアーティストやデザイナーによる2000点を超える公共コレクションを形成してきました。これらは、1960年代以降のフランスおよび国際的な現代美術とデザインのさまざまな潮流を紹介するもので、FRAC Grand Largeは、美術館やアートセンターと連携し、国境を越えたアートネットワークを構築してきたほか、これらを地域内の共有資産として学校や病院とともに展覧会を行うなど、地域のハブとなる活動も推進しています。

同コレクションは、現代美術に特有なメディア横断型の作品(絵画、彫刻、映像、インスタレーション、パフォーマンス)のほか、デザイン分野の作品を特徴としますが、これらには、アートや社会の中に潜むヒエラルキーやジェンダーといった今日的な問題が映し出されています。

さらに、表現メディウムの変容や境界に加え、ベルギー、そして海を挟んだ英国とも近いダンケルクが歴史的に向き合ってきた境界も、現代の国際社会が直面する覇権争いなどの地政学的緊張やその流動性を示唆するものです。

「体を成す からだをなす」は、フランス語の「Faire Corps:一体となる、調和する」に基づいた展覧会で、FRAC Grand Largeのディレクター、ケレン・デトンと共に、〈社会的身体〉をテーマに、ヨーロッパ(フランス、イギリス、ベルギー、イタリア、ギリシャ、ルーマニア)、アメリカ、日本出身の13人のアーティストによる、1973年から2025年までの作品を紹介します。

「アートとは、人生をアートよりも興味深いものにするものだ」とは、フルクサスのアーティスト、ロベール・フィリウの言葉ですが、ここには、生活とアートの両義的な関係が示されているようです。本展では、アートによってもたらされる日常や秩序の可変性に着眼しつつ、個人あるいは集団的に機能する社会的な身体を浮き彫りにする作品を考察してゆきます。

身体と密接に結びついた芸術形式であるパフォーマンスとして、ヘレン・チャドウィックのジェンダーを問う《In the kitchen》や、アンドレ・カデレの《丸い木の棒》など1970年代を代表的する写真から始まり、アナ・トーフのヴィデオ《サイドショー》や、ネフェリ・パパディムーリのコスチュームとヴィデオ作品《森になる》などを紹介します。また、脆弱な身体を象徴的に扱うジェシー・ダーリングやポール・マヘケ、外国語と母国語の狭間を問うタレク・ラクリッシ、そして技術と知の共有を媒介にした創作実践から作品を制作するアーティスト・コレクティヴのアバケ/オバケや大阪在住の笹原晃平の作品も展示し、多様な視点や行為が交差する場を形成します。また、ダンケルクで短い生涯を終えたアーティスト、クリスティーヌ・デュクニットのドローイングは、描くことで痕跡が消滅するような実験的な態度で存在の境界を問いかけています。

身体と密接に結びついた芸術形式であるパフォーマンスとして、ヘレン・チャドウィックのジェンダーを問う《In the kitchen》や、アンドレ・カデレの《丸い木の棒》など1970年代を代表的する写真から始まり、アナ・トーフのヴィデオ《サイドショー》や、ネフェリ・パパディムーリのコスチュームとヴィデオ作品《森になる》などを紹介します。また、脆弱な身体を象徴的に扱うジェシー・ダーリングやポール・マヘケ、外国語と母国語の狭間を問うタレク・ラクリッシ、そして技術と知の共有を媒介にした創作実践から作品を制作するアーティスト・コレクティヴのアバケ/オバケや大阪在住の笹原晃平の作品も展示し、多様な視点や行為が交差する場を形成します。また、ダンケルクで短い生涯を終えたアーティスト、クリスティーヌ・デュクニットのドローイングは、描くことで痕跡が消滅するような実験的な態度で存在の境界を問いかけています。


ARTISTS

ÅBÄKE | The Handshake | 2014 | Collaboration with Kazutaka Furukomi and Rakkan Ohata | 木、漆、金箔| ©ÅBÄKE-Collection Frac

アバケ/オバケ Åbäke

2000年、ロンドン(イギリス)で結成。アバケ/オバケは、アート、パフォーマンス、グラフィック・デザインの分野で活動するアーティスト、出版社、作家、教育者、デザイナーからなるコレクティブ。文脈や芸術のメカニズムについて考察しながら、物語を伝えるオブジェやテキストを制作している。グラフィックが文化やコミュニケーションをどう形成するのかという問いから、デザインの社会的側面を探求する分野横断的かつ参加型のプロジェクトを行う。

André Cadere | Exhibition with Galerie des Locataires, Avenue des Gobelins, Paris, April 3-8, 1973 | バラ板紙にシルバープリント|Photo : Emmanuel WATTE ©Courtesy Succession André Cadere et Galerie Hervé Bize - Collection FRAC Grand Large ―Hauts-de-France

アンドレ・カデレ André Cadere

1934年、ワルシャワ(ポーランド)生まれ。ルーマニアで育ち、1967年よりパリで制作活動を行う。カデレは代表的な作品である《Barres de bois rond(丸い木の棒)》(1970–78)を、招待されていない展覧会のオープニングや公共空間に持ち込むアクションを通して、芸術に通底する論理の再構築を観客に促しながら、既成の芸術空間や制度を批判する急進的な芸術の形式を提示した。1978年没。

Helen Chadwick | In the Kitchen | 1977 |アーカイヴからの12枚のシルバープリント|43×33×2cm (framed) ©Helen Chadwick – Collection FRAC Grand Large ―Hauts-de-France

ヘレン・チャドウィック Helen Chadwick

1953年、ロンドン生まれ。「エレガントでありながら型にはまらないフォルムで、ステレオタイプな身体認識に挑戦する」ことで知られる。チャドウィックの作品は、洗練された手法を用いつつも、型にはまらない方法で、女性の役割、アイデンティティ、表現を重要なテーマとして取り上げている。ターナー賞に女性で初めてノミネート(1987)。テート・コレクション(ロンドン)、ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)、ニューヨーク近代美術館などに作品が収蔵されている。1996年没。

Jesse Darling | Epistemologies (collapsed cabinet) | 2018 | 鉄骨構造物1個、松葉杖1本、プレキシガラス板1枚、鳥23羽、発泡グリーンチップ60個、スチール、松葉杖、プレキシガラス、人工の鳥、発泡グリーンチップ| 125 x 110 x 110 cm © Jesse Darling - Collection FRAC Grand Large - Hauts-de-France

ジェシー・ダーリング Jesse Darling

1981年、オックスフォード(英国)生まれ。自身の経験に加え、正史とそれに対抗する歴史の複数性にも着目し、身体が持つ固有の脆弱性、そして生物の避けられない死が文明や構造体にどのように反映されるかを探求する。架空の人物、神話上のシンボルなど、ダーリングの作品は人工物を再文脈化する。傷つきながらも解放された形は、同時に、その脆さ、そしてケアと癒しの必要性を露わにしている。ターナー賞の絵画部門を受賞(2023)。日本では、ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」(2020)に出展。

Christine Deknuydt | L‘effet miroir |制作年不明 | Drawing | 12,9 x 17,4 cm | Photo: Ludovic Linard | ©Arlette Deknuydt - Collection Frac Grand Large ― Hauts-de-France

クリスティーヌ・ドゥクニット Christine Deknuydt

1967年、ダンケルク(フランス)生まれ。ドゥクニットの作品には、家具などの日常的なもの、動物、風景、宇宙的な考察といったモチーフが、いくつかのテーマに沿って繰り返し描かれている。またユーモアを帯びた短い詩的なテキストが、具象的な要素に添えられ、それらがキャプションやタイトルの役割を果たす。さらに、錬金術的な素材の扱い方やテキストをクロスオーバーさせる、自身が「ハイブリッド化」と呼ぶ手法で生み出された多義的で曖昧な形態が作品の全体に詩情を与えている。2000年没。

Jessica Diamond | Me consteallation | from the series Tributes to Kusama | 1992-1993 |壁にラテックス塗料、サイズ可変 © Jessica Diamond - Collection FRAC Grand Large - Hauts-de-France

ジェシカ・ダイアモンド Jessica Diamond

1957年、ニューヨーク(米国)生まれ。1980年代半ば、グラフィティのスタイルを彷彿とさせる黒いペイントでスローガンや絵を壁に直接描き、権力、セックス、ビジネスに関する独自の視点を表現。現代消費社会の物質主義を拒絶する姿勢を示した。1991年に草間彌生の作品に影響され、「草間へのトリビュート」と題した一連の作品を制作(1992–97)。言葉と視覚的な手がかりの語彙を通じて、草間の主要なアイデアとモチーフを再解釈した。日本では個展「エロス・(レイン):その2」(オオタファインアーツ、東京、1999)を開催。

Pauline Esparon|L’écoucheur ottoman|2020|粗麻糸、スプリング、リネンフェルト|53 cm 直径:58 cm ©Pauline Esparon - Collection FRAC Grand Large Large ―Hauts-de-France

ポーリーヌ・エスパロン Pauline Esparon

1993年、エヴルー(フランス)生まれ。エスパロンは直感的な思考プロセスを通して、素材の固有の特性を探求することで、最終的な形を決定する独自のデザインアプローチを確立している。一般的な技術に工夫を凝らすことで、標準化された素材の秘められた可能性を引き出し、新たな用途へと生まれ変わらせる。また、エスパロンは、産業廃棄物にも価値を創出し、既存の産業、地元の工芸品にも新たな展望ヴィジョンをもたらしている。ル・モビリエ・ナショナル(パリ)、CNAP(パリ)などに収蔵。

Tarek Lakhrissi | Hard to love | 2017 | Video 4 分 47 秒© Adagp, Paris - Collection FRAC Grand LargeーHauts-de-Franc

タレク・ラクリッシ Tarak Lakhrissi

1992年、シャテルロー(フランス)生まれ。ラクリッシは、文学の素養を持つアーティストであり、詩人でもある。インスタレーション、パフォーマンス、映像、文章、彫刻の分野で活動し、言語の変容や魔法、奇妙さ、暗号、そして愛の物語にまつわる政治的・社会的問題に関心を寄せる。ラクリッシの深遠な言語表現は、行為遂行性に根ざし、詩的でエロティック、そしてノスタルジックなクィアの未来について考察している。シドニー・ビエンナーレ(2020)、「Anticorps」(パレ・ド・トーキョー、パリ、2020)に参加。

Paul Maheke | The Mauve Hour IV | 2021 | 透明アクリルにUVプリント| 46 x 70 cm ©Paul Maheke -Collection FRAC Grand Large ーHauts-de-France

ポール・マへケ Paul Maheke

1985年、ブリーヴ゠ラ゠ガイヤルド(フランス)生まれ。マヘケは、ドローイング、ヴィデオ、パフォーマンスなどを通じて、周縁化された身体、物語、そして歴史が、いかにして可視化/不可視化されるのかを探求する。アイデンティティ・ポリティクスへの抵抗、権力や支配的なシステムを転換する試みとして、幽霊、精霊など、人間以外の存在を作品に登場させながら、身体を再発明されるべきアーカイブ、独自の地図を持つ領域として捉え直し、集団的な想像力や、他者との関係を定義するアーキタイプがどのように構築されるかを探求する。近年の個展として、「To Be Blindly Hopeful」(モスティン、スランディドノ、英国、2024)。

Bruno Munari | Seeking comfort in an uncomfortable chair | 2012 | オフセット印刷| Photo: FRAC Grand Large © Bruno Munari. Courtesy Corraini Edizioni, Maurizio Corraini s.r.l., Collection FRAC Grand Large ーHauts-de-France

ブルーノ・ムナーリ Bruno Munari

1907年、ミラノ(イタリア)生まれ。イタリアの前衛美術活動「未来派」に共鳴し、造形作品の発表を始める。またその傍ら、1930年代より、グラフィックデザイナー、アートディレクターとして本の編集や装丁を手がけ、戦後は、ダネーゼ社などのためのプロダクトデザインも多く手がけた。1954年、55年、77年にイタリアのデザイン賞「コンパッソ・ドーロ」を受賞。1940年代より制作を始めた子どもの想像力を育てる実験的な絵本によって、絵本作家としても世界に知られるようになる。1974年に国際アンデルセン賞を受賞。1998年没。

Nefeli Papadimouli | Kind of Us (Chapeau à porter à huit) | 2019-2020 | 人工皮革、鉄、厚紙、塗料、木材、石膏、粘着テープ| 190 x 190 cm | Photo: Emmanuel WATTEAU © Adagp, Paris, Nefeli papadimouli- Collection FRAC Grand Large - Hauts-de-France

ネフェリ・パパディムーリ Nefeli Papadimouli

1988年、アテネ(ギリシャ)生まれ。公共空間における参加型アクションから彫刻、映像と幅広いメディアを用いて作品を制作し、現在はインスタレーションとパフォーマンスが活動の中心となっている。前衛芸術の伝統に着目しながらも、パパディムーリの作品は芸術活動のカテゴリー間の境界を曖昧にし、「中間」というメディアの融合として現出する。第17回リヨン・ビエンナーレ(2024~25)、アジアン・アート・ビエンナーレ(台中、2024)に出展。ピエール・カルダン賞(2023)など、数々の賞を受賞。

Kohei Sasahara | Sunny | 2016 | バーナム、忘れ物の傘250本、テント(高さ2m50cm × 一辺3m)サイズ可変 Aurélien Mole© Kohei Sasahara – Collection Frac Grand Large ーHauts-de-France

笹原晃平 Kohei Sasahara

1984年、東京生まれ。周辺環境への取材とその場の関係性の構築から出発し、インスタレーション作品を発表。一貫して「人間の生活」を探求する笹原の表現メディアや方法論は多岐にわたり、美術のみならず人類学や建築学などの総合的な分野への接続を試みている。近年の主な企画として「社会実践ポストポン」(せんだいメディアテーク、宮城、2023~)など。

Ana Torfs | Sideshows | 2019 | Video39分( 無音、ループ) | Photo: Ana torfs © Adagp, Paris,- Collection FRAC Grand Large ーHauts-de-France

アナ・トーフ Ana Torfs

1963年、モルツェル(ベルギー)生まれ。ヴィデオ、版画、スライド投影、フィルム、サウンド、写真、シルクスクリーン、タペストリーなど様々なメディアを用いて、知覚、記憶、表象、イメージの構築に関する問題を探求している。日本では、京都国立近代美術館(2013)、東京国立近代美術館(2014)を巡回した「映画をめぐる美術——マルセル・ブロータースから始める」に出品。


Faire Corps / Selection from the collection of the FRAC Grande Large

体を成す からだをなす– FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展

2025年7月19日(土) ~ 10月12 日(日)

アバケ/オバケ
アンドレ・カデレ

ヘレン・チャドウィック

ジェシー・ダーリング

クリスティーヌ・デュクニット

ジェシカ・ダイアモンド

ポーリ―ヌ・エスパロン

タレク・ラクリッシ

ポール・マへケ

ブルーノ・ムナーリ

ネフェリ・パパディムーリ

笹原晃平

アナ・トーフ

コ・キュレーター:

ケレン・デトン(FRAC Grand Large ディレクター)

説田礼子(ル・フォーラム キュレーター)

開館時間:11:00–19:00(入場は18:30まで)

入場料:無料

休館日:水曜日

会場:銀座メゾンエルメス ル・フォーラム8・9階(中央区銀座5-4-1 TEL 03-3569-3300)

主催:エルメス財団、FRAC Grand Large ーHauts-de-France

後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

※ギャラリーは基本、銀座店の営業に準じております。ただし、開館日と開館時間についての最新の情報はウェブサイトをご確認ください。

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会社概要

URL
https://www.hermes.com/jp/ja/content/maison-ginza/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
24, rue du Faubourg Saint-Honoré 75008 Paris - France
電話番号
-
代表者名
Olivier Fournier
上場
未上場
資本金
-
設立
-