名市大発「光技術研究拠点」発足で森田明理教授が講演 『革新的な光技術の基盤技術開発・応用へ』
~光医学・光生物学・化学分野で国内外トップクラスの拠点を目指す~
名古屋市立大学(名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1、学長:浅井清文)は1月17日、プレスセミナー「名市大発『光技術研究拠点』、医薬工融合で多分野応用へ 『光』が切り拓く医療の未来 ~難治性皮膚疾患やがんなどへの新治療法確立 認知症・うつ病の治療も視野に~」を開催しました。
名古屋市立大学大学院医学研究科 加齢・環境皮膚科学分野の森田明理教授が「未来医療の鍵を握る光技術:新たな治療法と応用範囲の拡大」と題し講演。このほど新たに設立した「光技術研究拠点」(※1)において、光の波長特性を活かした難治性皮膚疾患の治療技術開発や光を自由自在に扱う技術の開発などをテーマに研究を推進し、「光医学・光生物学・化学分野で国内外トップクラスの拠点を目指す」と意気込みを語りました。革新的な光技術を開発・応用するとともに若手研究者の育成も進めます。
●森田明理教授のコメント
紫外光から可視光・赤外線まですべての光を応用し、光の波長特性を最大限活用し、皮膚疾患、免疫制御、組織修復など幅広い医療領域において、新しい治療技術を開発していきたい。医学・薬学・工学は名古屋市立大学の優位な学問領域であり、本拠点のようなグループは他に類をみない。医学だけにとどまらず、光に関わるありとあらゆる生命現象を研究・利用し、革新的な光技術の基盤を整備し、国際的な研究拠点にしたい。
○光技術研究拠点発足
名古屋市立大学なごや先端研究開発センター(※2)が先端的で国際性の高い世界トップレベルの研究拠点形成を進める「卓越研究グループ支援事業」(※3)に採択された2グループのうちの1つとして昨年11月、発足しました。
「難治性疾患やがん治療に新しい技術を導入し、免疫制御のメカニズムを解明し、新治療アプローチの確立」を最終目標としています。
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「光の波長特性を生かした難治性疾患への基盤的技術開発」
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「糖、腫瘍ホーミングペプチド連結クロリンe6による次世代光線力学によるがん免疫に及ぼす効果の検討」
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「光線による免疫制御の基礎的解析」
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「光を自由自在に扱う最先端フォトニック結晶技術開発」
という4つの研究テーマを据え、基礎となる探索研究から技術基盤開発、システム構築、応用・社会実装までを一貫して進めています。
さらには植物の成長制御の応用など、光を応用するすべての研究者に参画を呼び掛けるとともに、拠点においては年10回の領域横断的な研究会の開催、ラボミーティングへの相互参加、抄読会の実施などを行います。また、大学院生をはじめ、多くの若手研究者の参画・育成にも努めています。森田教授は「本拠点のようなグループは他に類をみない。名古屋市立大学の優位な学問分野である医学・薬学・工学を中心に、多様な分野での『光』の応用を目指す」
○「革新的な光技術の基盤を整備し、国際的な研究拠点へ」
森田教授は研究テーマ「光の波長特性を生かした難治性疾患への基盤的技術開発」の中心を担っています。名古屋市立大学は1975年、日本で初めて薬剤ソラレンと長波長の紫外線(UVA)を組み合わせた治療法PUVAを開始。皮膚疾患の治療をリードしてきました。乾癬や尋常性白斑などの治療機器を開発し、2008年には、日本で初のエキシマ光源を用いた308nmセラビーム®、2011年には、澁谷工業株式会社と共同で世界初の平面発光タイプのターゲット型ナローバンドUVB治療器(TARNAB)を開発、2021年にはウシオ電機株式会社とともに深紫外LEDを用いた紫外線治療器セラビーム®UVA1、2022年には「セラビーム® UV308 mini LED」、他多数を開発しました。
今後は在宅光線療法が可能な機器開発のほか、皮膚がん向けの光線療法機器開発や「フォトフォレーシス(体外循環式光化学療法)」と呼ばれる血液の白血球に光をあてることで制御性T細胞(Treg)を誘導する治療法が可能な機器開発などを目指しています。
一方で、森田教授はこれまでの臨床経験から「紫外線は皮膚の免疫の恒常性を維持し、ビタミンDをつくるだけでなく、私たちを活動的にする力を持っていると考えている」とし「波長特性を研究、活用することで、高齢者医療を支えることにもつながればうれしい」と話し、拠点での研究に力を入れていく考えを示しました。また、過剰繁殖する外来植物ホテイアオイの繁殖抑制など理学、工学など「光に関わるありとあらゆる生命現象を研究・利用し、革新的な光技術の基盤を整備し、国際的な研究拠点にしたい」と話しました。
○その他の研究テーマと見通し
「糖、腫瘍ホーミングペプチド連結クロリンe6による次世代光線力学によるがん免疫に及ぼす効果の検討」
名古屋市立大学大学院医学研究科片岡洋望教授(消化器・代謝内科学)、同大薬学研究科青山峰芳教授(病態解析学)を中心に実施。超高齢社会を迎えた日本において、より低侵襲で、抗腫瘍効果の高い新たな光線力学療法の開発が期待されています。腫瘍血管に親和性のあるペプチドと糖鎖を結合し、腫瘍選択性と抗腫瘍効果を高めた光感受性薬剤の開発を目指しています。
「光線による免疫制御の基礎的解析」
同大医学研究科山崎小百合教授(免疫学)を中心として進んでいます。紫外線照射した皮膚で樹形細胞と相互に作用し、増加した制御性T細胞(Treg)は、アンフィレグリン(AREG)とプロエンケファリン(PENK)を産出し、傷の修復機能やその促進を担います。免疫応答を抑制する機能があり、自己免疫疾患、炎症性、アレルギー疾患などを引き起こす過剰な免疫応答を抑制するための臨床応用の実現が期待され、実現に向けての基礎的な解析を行います。
「光を自由自在に扱う最先端フォトニック結晶技術開発」
同大学薬学研究科の山中淳平教授(コロイド・高分子物性学)を中心に実施。マイクロメートルサイズのコロイド粒子が、ダイヤモンド格子状に配列した構造は、「光の閉じ込め」が可能な「フォトニック結晶」として働くことが知られています。これまでの作製技術を基に、構造の乱れが少ない作製条件の探索、光学特性の評価を行い、最先端のフォトニック結晶技術の開発に挑みます。
この結晶で管状構造の内壁を覆う導波路を作製することにより、光特性の改善や光線治療への貢献が期待されます。
○森田明理(もりた・あきみち)教授 略歴
1989年 名古屋市立大学医学部医学科卒業
1990年 名古屋市立大学大学院医学研究科(博士課程・愛知県がんセンター研究所免疫部)
1994年 名古屋市立大学医学部助手
1995-1997年 独デュッセルドルフ大学皮膚科(独フンボルト財団奨学研究員)
1997-1998年 米テキサス大学サウスウエスターンメディカルセンター皮膚科
1998年 名古屋市立大学医学部講師
2001年 名古屋市立大学医学部助教授
2003年〜 名古屋市立大学大学院医学研究科 教授
2015年1月〜 名古屋市立大学病院 副院長
2021年4月〜 名古屋市立大学 学長補佐、名古屋市立大学病院 病院長代行
○参照
※1 光技術研究拠点HP(https://ncu-light.jp/)
※2 なごや先端研究開発センター
「国際的な研究拠点の形成」、「多様な臨床研究の活性化」、「世界レベルの研究者の育成」、「行政・地域課題研究の促進」を柱とし、地域から地球規模に至る社会課題を解決し、よりよい社会の構築に寄与することを目的に2023年12月に開設。名古屋市立大学の自己財源50億円に加え、名古屋市からの共同研究費等、民間企業・関係機関・市民の皆さまからのご寄附により研究資金100億円を目指す「なごや共創研究基金」を新設した。
※3 卓越研究グループ支援事業
多様な研究を活性化させ、国際的な研究拠点の形成と世界レベルの研究者の育成、地域社会へのさらなる貢献や持続可能な研究サイクルの確立を目指す「なごや共創研究基金」が原資。3年に渡って、インパクトの高い国際共著論文数を増加させ、科学技術の進展、社会課題の解決やイノベーション創出に貢献するための研究費などを支援する。
研究グループ代表者 |
研究課題名 |
医学研究科 脳神経科学研究所 神経発達・再生医学分野 教授 澤本 和延 |
脳神経科学の将来を担う若手研究者の育成と共同研究支援による研究力強化促進プロジェクト |
医学研究科 加齢・環境皮膚科学分野 教授 森田 明理 |
光が切り拓く新たな研究開発拠点形成 |
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